ふりかけだけで飯をいく日
定食だとしたらご飯と一緒におかずがあるだろう。みそ汁もある。おかずでご飯を食べればいい。
そもそも、ふりかけでご飯を食べること自体に少し罪悪感がある。
そんなにどん欲に味を求めて良いものか、みたいな感覚だ。
今回、ふりかけをしっかりかけたらおいしかった。味よ! と思った。味はここにあった。
この味を純粋にかみしめるためにも今後はおかずも汁もいらねえ、ふりかけだけで飯をいく日を作ってもいいかもしれない
ふりかけをもっと味わいたくなった。
調味料は毒だといわれ育った。
塩味は極力に少なく、素材の味を楽しむことが美しいという世界を生きた。
大人になりしょっぱいものの美味さと健康とのかねあいを学び、わたしと塩は邂逅のときをむかえる。
いまではポテトチップスは飲むように食う。塩に祝福されている。
しかしいまだに、見るたびにはっとするものがあるのだ。ふりかけのパッケージだ。
ふりかけのパッケージを見ると、よほどかけたな! といつも目が開く。
食品パッケージがトゥーマッチであるのは当然のことだ。
食品を美味しく美しく見せることが肝だし、商売としてはたくさん使ってくれた方がそりゃあ、いいだろう。
薄味の家で育ったのでついドキドキしてしまうんだと思う。
そんなドキドキと向き合いたい。今日はこれくらい遠慮なくご飯にふりかけをかけてみたいと思うのだ。そういう日があっていいだろう、人生だ。
どれくらいリッチな味なのか、パッケージ通りの国のふりかけご飯を確かめてみたい。
と、その前にそもそもふりかけの適量がどれくらいなのか見ておきたい。おそらく私のいつものふりかけご飯は極端にふりかけが少ないはずだ。
ふりかけといっても種類によって味の濃さは違うだろう。塩味の強いふりかけなら少量でいいだろうし、そうでなかったら多めにかけることになる(すごく当たり前のことを真顔で言ってますね)。
あとはご飯の量との兼ね合いもある。料理本などだと一膳を150g~180gくらいとすることが多いようだ。
で、一般的な塩分量のふりかけの個包装のものを見ると一袋2.5g~2.3gが多い。
2.5g~2.3gのふりかけを150g~180g程度のご飯にかけるくらいがメーカーの想定量ということだろう。
けっこうかかってるじゃん! という印象だ。
味もさすがにちょうどいい。というか、おとなのふりかけ、久しぶりに食べたがとてもおいしいものですね……。
ご飯の盛り方をもっと山っぽくすべきだったなど反省はあるが、パッケージに近づけるにはもうちょっとふりかけてもよさそうだ。
見本となるパッケージ、まずはこちらからいってみよう。
お茶碗に、高さが出るようにご飯を170g盛ってふりかけをかけていく。
パッケージを見ると白いご飯がすけて見えない。スプーンでならす。
おおむね6gをかけたところで、パッケージくらいみっしりふりかけられたのではという具合になった。
同じようにお茶碗にご飯を盛って今度はいつもの自分の感覚でふりかけると2g。
……!
3倍だ……!
パッケージ通りの方を食べてみると、ちょっとまてこのふりかけおいしいな……。
のり、ごまの風味そしてかつおの存在感。甘みがあって良い佃煮を食べているようだ。味がずっと続く感じがあった。
ふりかけご飯というよりも、混ぜご飯みたい。なるほど……こういうことだったのか。
続いて、のりたまもパッケージと同じくらいまでみっしりかけていこう。
さきほどと同じようにならしながら、パッケージを手本にして密度を上げてかけていく。
思ったのは、かけ終わらないな! ということだ。
普段だったら、シャッシャとふたふりする程度だろうか。
しかしパッケージくらいの量をかけようとするとシャッシャシャッシャシャッシャシャッシャシャッシャシャッシャシャッシャシャッシャ……くらい要る。
もしや永遠にふりかけ終わらないのではと思う頃やっと量が足りた。
ふりかけをふる作業に永久(とわ)を感じることになるとはな。
量は同じくらいかけられたと思うが様相はだいぶ違う。
あの のりたま ほどのふりかけだ。
パッケージ写真も最前線のフードコーディネーターの方がピンセットできれいに配置して撮影しているのではないか。
さすがにデザイン面をまねしようとするとそこまではむつかしい。
食べてみると、甘い! うまい! 普段いかにふりかけではなくご飯を食べていたかがわかる。
今日は、これは、完全にふりかけを食べているぞ。
調味料は毒だといわれ育ったと冒頭書いたが、そんな私の実家にものりたまはあった。畏れながらおいしがっていた覚えがある。
パッケージの量は、あの頃の自分には考えられない量だ。
これが味か、という体験だった。
定食だとしたらご飯と一緒におかずがあるだろう。みそ汁もある。おかずでご飯を食べればいい。
そもそも、ふりかけでご飯を食べること自体に少し罪悪感がある。
そんなにどん欲に味を求めて良いものか、みたいな感覚だ。
今回、ふりかけをしっかりかけたらおいしかった。味よ! と思った。味はここにあった。
この味を純粋にかみしめるためにも今後はおかずも汁もいらねえ、ふりかけだけで飯をいく日を作ってもいいかもしれない
ふりかけをもっと味わいたくなった。
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