かつての国民食
先日、4年ぶりくらいに海外に行ってきました。行先はオランダ。
今回は仕事の用事とはいえ、隙間時間に街歩きするだけの余裕はある。市内観光とまではいかないまでも、なにか美味しいものくらい食べておきたいなと下調べしてみたら、にしんの塩漬けというのがヒットしました。新鮮なにしんの頭と内臓を外して、塩水に一晩くらい漬けてほんのりと発酵させたものらしいです。
北海に面したオランダ、かつては漁業が盛んで、水揚げ量の多かったにしんが国民食だった時代もあったという。じゃあ今はどうなのかというと、青魚ってそもそも好き嫌いがはっきりする食べ物だし、塩漬けといってもほぼ生魚なのでまあ敬遠する人は多いよねーと、オランダ人の中ではまあそういう扱いらしいです。
さて店頭では、お店の人にオランダ語でにしんを意味する「ハーリング」と告げると、「プレートorサンドイッチ」と返ってくる。にしんを皿(プレート)に乗っけただけのやつと、切り身をパンに挟んでサンドイッチにしたのが選べるシステムです。
気持ちのいい早業で、30秒ほどでポンと手渡してくれます。これで一皿3.9ユーロ(630円)。
お店の近くに広場があり、ベンチでいただく。
青魚のうまさが全開
さて、にしんの味。これについてはまず断っておかないといけないんですが、元々おれは青魚が好きなのです。しめ鯖、ままかり、オイルサーディン、北海道のにしん寿司、みんな大好物。そこのところを踏まえて聞いていただきますが、なにこれめーっちゃうまい!!
塩漬けの発酵食品といいながら、にしんの身自体はあまり塩味や酸味を感じません。あっさり軽めに締めた、しめ鯖のような。その代わり、主張が強いのは脂のうまみ。てりてりに輝く身は、見た目の通り、舌にのせた瞬間に脂肪の幸福感を届けてくれる。
微発酵の効果なのだろうか。歯ごたえはふつうの刺身よりもずいぶんしっかりしている。正直にいうと、身だけをぶりんぶりんと噛み締めているとほのかな生臭さを感じる瞬間もあるのだけど、一緒に食べる玉ねぎの辛味とピクルスの爽やかさが絶妙にいい仕事をしてくれます。三位一体。どれを欠いても成立しない、計算尽くされたうまさだなと思う。