羊羹には3種類ある
羊羹には種類があり、大きくは蒸し羊羹、水羊羹、煉羊羹の3種類に分けることができる。種類によって賞味期限は異なる。
水羊羹:寒天を使う柔らかい羊羹・賞味期限が短い。缶入りにすることで長くなった
煉羊羹:練ったあと水分を飛ばす・もともと賞味期限が長い
ここ数年、歴史を知ってから食べるとさらに美味しいと気がついて、勉強してから食べるようにしている。これらの羊羹が登場する歴史を知るとおもしろいので簡単に説明したい。
羊羹の歴史
羊羹の歴史1)紀元前7世紀 最初は甘くなかった羊羹
羊羹のルーツは中国にある。春秋時代の紀元前607年に羊羹を兵士たちに振舞った記録が残っている。その羊羹は今のものとは異なり、羊の肉が入った汁物だった。だから羊羹なのだ。
その羊羹が日本に入ってきたのは鎌倉時代から室町時代にかけて。中国に留学していた禅僧が点心として日本に伝えた。点心とは食間に食べる軽食のこと。ただし禅僧は肉食が禁じられていたので、小豆や小麦粉などの植物性の素材を使ったものにアレンジされた。この頃は精進料理だったわけだ。
羊羹の歴史2)16世紀 砂糖を使った蒸し羊羹登場
1500年代半ばになると砂糖を使う「蒸し羊羹」が生まれる。砂糖の国産化の機運が高まるのは18世紀、8代目将軍徳川吉宗の頃なので、1500年代の砂糖は輸入品であり高級品だった。1542年に行われた茶会の菓子として羊羹が出されている。これが菓子として羊羹の初出となる。
最初の蒸し羊羹は蒸して形を作ったけれど、1500年代末からは蒸すだけになる。さらに1700年代になると柔らかい蒸し羊羹が誕生する。これは霊元天皇が羊羹を硬い、と言ったから誕生したものだ。
羊羹の歴史3)18世紀 寒天を使った水羊羹、煉羊羹が登場
やがて寒天を使い作られる柔らかい羊羹「水羊羹」が誕生する。1700年代半ばのことで、寒天を用いた最初の羊羹となる。
水羊羹で寒天を使った、というのが羊羹における大きな出来事だった。現代で羊羹と言われて思い浮かべるであろう「煉羊羹」の誕生につながる。煉羊羹は小豆と砂糖を寒天で煉り固めたもの。水羊羹との違いは火にかけて煉って水気を飛ばすことだ。
羊羹の歴史4)19世紀 日持ちする煉羊羹が大流行
煉羊羹は蒸し羊羹や水羊羹と比べて日持ちする。江戸で誕生した説が有力だけれど、同時期に九州でも煉羊羹を作るお店を確認できる。1841年の資料にはどこも煉羊羹ばかり作っているとある。それほど人気だったのだ。
1849年の「諸国名物一覧」は「流行」と「古風」に分けた番付なのだけれど、流行には「煉羊羹」があり、古風に「蒸し羊羹」が存在する。長らく羊羹と言えば蒸し羊羹だったけれど、煉羊羹が一斉を風靡したことが伺える。
羊羹の歴史5)20世紀 水羊羹と蒸し羊羹も日持ちするように改良
ただ今の羊羹を思い浮かべればわかるけれど、蒸し羊羹や水羊羹がなくなったわけではない。それぞれにブレイクスルーが起きている。水羊羹は1938年に新宿中村屋が缶詰化する特許を取得している。
1966年には賞味期限が2日だった栗蒸し羊羹を真空包装して日持ちする方法を「米屋」が実現している。米屋は1970年にミニ羊羹の元祖と言われる「ヨネパック」も開発している。