特集 2021年6月20日

ガラスに人が激突しないように印が付いているだろう?(デジタルリマスター版)

コレ

細かいところばっかり見てしまう。

以前、当サイトのライターT斎藤さんと取材で電車に乗った。あとで写真を交換したところ、斎藤さんは電車の外観や車内風景を主に撮っていたのに、僕は電車の車内案内図のマークとか、座席の肩のところに付いている持ち手の造形とか、そんなのばっかり撮っていた。そういう性格なのだろう。

そんな細かい視点で今回注目したのが、ガラスに付いてるアレである。

2011年3月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。(動画インタビュー)

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ガラスからのメッセージ

ビルのエントランスにあるカラスドアやガラス壁には、たいてい小さなマークが付いている。透明のガラスに気づかずぶつかる人がいるので、これはガラスですよ、と主張するために付いているのだ。

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こういうの

そもそもなんで壁ではなくガラスになっているかというと、採光のためだったり壁の圧迫感をなくすためだったりして、つまりガラスはその存在感を感じさせないためにガラスなのだ。

ガラスの立場に立ってみれば、そんな悲しいことはない。だって「あんたはそこにいないことにするから」と言われているのだから。他者に自らの存在を認めて欲しい、そんな抑えきれない気持ちはガラスにもあるだろう。心理学用語でいうところの承認欲求というやつである。

そこで、このマークである。

このマークは、立場上大きく自己主張できない彼らが、密かに送りつづけるメッセージ。それは彼らの精一杯の存在の主張なのだ。

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「僕はここにいるよ…」

小さく丸まって「ここにいるよ…」

「このマーク」という呼び方は味気ないし、正式名称もよくわからないので、仮に「ここにいるよ…」と呼ばせてもらうことにしよう。

いろんなビルを見て回って「ここにいるよ…」を集めてきたのだが、圧倒的に多かったのが、小さい丸形の「ここにいるよ…」であった。

部屋の隅っこでヒザを抱えて丸くなり、「ここにいるよ…」と小さくつぶやくような形状である。全く根拠はないのだが、きっとお腹も減っていることだろう。「ここにいるよ……(小さくグゥ)」という感じである。

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先ほども貼った画像だが、シールタイプは低予算むけと思われる。「ここにいるよ……(小さくグゥ)」のあと、カップ麺を食べるタイプ。
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こういう金属製のやつは少し高級なのだろう。「ここにいるよ……(小さくグゥ)」のあとにイングリッシュマフィンを焼いて食べる。
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このように横からのぞき込んだとき、裏面に貼った両面テープが見えてしまうのも切なくてよい。両面テープのサイズがちょっと寸足らずなのがグッとくる。
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ガラスが分厚い場合、横からのぞき込むとこんなふうに大きくずれて2枚に見える。双子の「ここにいるよ…」だ。二人でも寂しいときは寂しい。人は一人だから寂しいのではなく、寂しいと思うから寂しいのだ。
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キャプション
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ピカピカに磨かれた「ここにいるよ…」。これをのぞき込むと「ここにいるよ…」の中に自分の顔が映り、自分の中の孤独と直面することになり2秒後に発狂する
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あと0.3秒長く見ていたら危なかった

丸い「ここにいるよ…」はオーソドックスな形だけにバリエーションも多く存在し、そのメッセージは読み解きがいもある。ひとつひとつの声にじっくりと耳を傾けていくことが肝要である。

 

華やかに見えても内心は寂しい

一見華やかに見える貴族の暮らし。しかしその身分ゆえに対等に接してくれる者はおらず、大勢の召使に囲まれつつも常に心の中は寂しさでいっぱいである…。

というのは僕の勝手な想像だが、話としてはありがちなのでそれが正しい事例も世の中にはきっとあるのだろう。急に貴族とかいわれてもピンと来ない人は、貴族を大女優とか大物政治家に置き換えて適当にアレンジしてくれてもいい。

要するに、華やかに見えるからといって満ち足りているとは限らないのだ。

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「その気持ち、わかるか!?」

上の写真にセリフを組み合わせた時点でたとえ話に無理があることに気づいたが、ここまで来てしまったのでそのまま進めよう。

何が言いたいかというと、よく探すと、けっこうオシャレな(=一見華やかに見える)「ここにいるよ…」(=しかしほんとうは寂しい)があるのだ。(わかった?)

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オシャレ「ここにいるよ…」の定番は、このように線をモチーフとしたもの。オシャレとは自己主張であると仮定すると、オシャレと「ここにいるよ…」は本質的に同義である
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貴族にも位がある。身分の高い者は発言力も大きくなり、線が3本になるのである。でも身分が高くてもほんとうは寂しいのだ。
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寂しがりも王族級になるとこんなに線を並べることができる。人間社会で言えば、法律で「王様と友達にならねばならない」と定めたりするレベル。しかし法の義務を振りかざして無理やり作った友達は、果たして本当の友達といえるだろうか?
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唐突に山である。「寂しきこと、山の如し」ということだろうか。まったく意味のわからないこの「ここにいるよ…」があるビルは、何を隠そう弊社ニフティのオフィスであった
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水平に引かれたラインの上に描かれた突起物。地面と建物をモチーフとしているのだろう。どんな立派な建物に住んでいようと、誰にもその存在を認めてもらえなければ、人は寂しい。そんな思いが伝わってきて泣く
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二重扉を利用して相乗的に主張してくる「ここにいるよ…」。その展開規模といい技巧性といい、もはやさびしんぼうの域を超えている。遭難をして救助を待つときなどに使いたい「ここにいるよ…」である

やっぱり思ったとおりである。見た目は華やかでも、やっぱりみんな寂しいのだ。

みんながこんな思いをしなくてすむような社会を作りたい!それは誰もが考える共通の願いだと思うが、残念ながらこういったガラス張りのビルは比較的新しく出来たビルに圧倒的に多い。「ここにいるよ…」の叫びは今後も増幅していくばかりだ。

 

「ここにいるよ…」「ここにいるよ…」詐欺

さて、最後は告発で締めよう。いつの世にも人の良心に付け込む悪人がいる。この「ここにいるよ…」「ここにいるよ…」詐欺もそのひとつである。

ポツンと貼られた「ここにいるよ…」、気の毒に思った人がその声に耳を傾けるべくよく見てみると、あろうことかそこにあるのは別の主張である。

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銀座INZをよろしく!

そうだ、店やビルのロゴが入っている場合があるのだ。寂しがり屋をよそおって人の気を引き、商売繁盛しようなどとは大変けしからんことである!

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一見するとオシャレ「ここにいるよ…」のようだが、実はこの建物のロゴマークである。だまされるな!
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金属製のプレートを使っており、ロゴ部分はミラーになっている。高級感で買い物意欲を刺激しようというけしからん輩
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ついに文字でフルネーム書きだした。開き直りか。どんどんずうずうしくなっていく
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ロゴを描いた上でダメ押しに文字まで。しかもドア脇いっぱいのフルサイズ。この堂々とした態度は居直り強盗級

今回の取材でいろんなガラスの「ここにいるよ…」に耳を傾けてきたわけだが、こういった「ここにいるよ…」「ここにいるよ…」詐欺を見かける度にすごく悔しい気持ちになったし、胸が痛んだ。

最初に紹介した、ただの丸。あのピュアな気持ちを忘れないで欲しかった。

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この画像貼るの3回目

たとえ話に無理がないか

なんで「ここにいるよ…」とか言い出したんだろう。ガラスに承認欲求なんてあるか。すごいノリノリで書いた原稿だったが、今読み返したら僕はちょっとどうかしていた。

でもこういうチマチマした細かいものについ感情移入してしまうのは、性格だから仕方がないのだ。これからもディテールに過剰に注目していきたいです。

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二色刷のおしゃれなのもあった

 

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