いつの間にか、厳密には“生”CMではなくなっていた
TBSの『ラヴィット!』などでは、今でも変わらず生CMが流れている。さらにライオンのYouTubeチャンネルには生CMのプレイリストが用意されているので、ついボーっと見続けてしまう。
やっぱり好きだな、生CM。調べてみると、とても良い記事があった。
今や絶滅の危機? 昭和のけれん味残る“生CM”の未来とは(ORICON NEWS)
驚いた。なんとライオンは2014年にスタジオの片隅から生放送するのをやめ、収録に変更していたのだ。てっきり今でも『ラヴィット!』のセット脇でやっていると思っていた。とはいえ約1分のCMをノーカットで演じるスタイルに変わりはないそうで、ホッとした。
何故なら私が生CMに惹かれるのは、黒柳徹子や永六輔が語るテレビ黎明期の話が好きなことと関係しているからだ。すべてが生放送だからこそ生まれる、逸話や失敗談。その時代の残り香が今でも唯一、生CMからは嗅ぎ取れる。
皆で生CMを作ろう!
2月某日。都内某所の撮影スタジオ。DPZライター陣に集まってもらった。そう、みんなで作るのだ。デイリルツの生CMを。
正直、会場を手配してくれたDPZ林代表でさえ、最初は企画意図にピンと来てない様子だった。だが、セットを共に作り上げたり、台本の読み合わせをしたりするうちに、「死ぬまでに一度生CMをやってみたい!」という私の熱意はみんなに伝播していった。
工夫こそ最大の工夫
ただ、熱意だけではどうにもならないこともある。50年続くライオンの生CMのクオリティに迫るには、経験も知識も機材も圧倒的に足りない。
しかし「工夫とは、人間が考え出した最大の工夫である」と言う言葉がある通り(なかったかもしれない)、なんとか工夫で乗り越えるのだ。
工夫①セットや小道具は手作り感を残す
工夫②敢えて手持ちのパネルを使う
今は編集ソフト上で商品や説明画像を差し込めるが、敢えて手持ちパネルを用意するのも大事。台詞と同じ内容をパネルでも出して、何重にも商品の利点を訴えかけるのだ。
工夫③勿論、画像も使う
とはいえ編集ソフト上でも画像を差し込むと、より現代の生CMっぽくなる。
④生CMっぽい台本
幾らセットが良くても、肝心の物語展開や台詞が生CMっぽくなければ台無し。約1分の中に生CMを感じさせる要素が入るよう、ブラッシュアップを重ねた。
工夫⑤静けさ
最後に大事な要素。ガヤガヤとしたスタジオから生CMに切り替わると一転、「シーン」という音が聞こえそうな中で演技が始まる。この賑やかさから静寂への転換に生CMっぽさを感じるのだ。
なんでLION の朝〜昼にやってるCMってBGMないの多いんやろ。めちゃくちゃ静か
— 唐沢むぎこ (@mugiko_39) January 24, 2024
DPZライターの唐沢むぎこさんも、この点に触れていた。さすがの慧眼
その意味で今回、コンデンサーマイク(簡単に言えば周囲の小さな音でも拾ってしまうマイク)しか用意できなかったのが痛い。紙のこすれる音や足音まで拾うので、気をつけなければ。「西村さん、カンペめくる時は絶対に音出さないで!」と厳しく指示を出す私。
以上の点を踏まえ俳優陣は台詞練習、裏方組は動きや作業の確認を入念に行う。数度のリハーサルを経て、いよいよ本番である。