これがビタ止めCMだ!
「そんなCMある?」という方のために、まずは具体例を。特にCMの最後に注目して欲しい。
アンメルツを持つキンキの2人の手が、ビタっと止まっているのが分かるだろう。これが「ビタ止めCM」だ。
人間、喋る時は口だけでなく全身も微かに動く。それなのに、ビタ止めCMでは商品とそれを持つ腕や手だけが完全に止まっている。ここに若干の気持ち悪さと妙な面白さが生まれる。
このようなCMが作られるようになった背景はなんだろう。「せっかく広告打つんだから我が社の商品を1mmも動かさず、はっきり見えるようにして!」というクライアント側の要望? あるいはCM制作者側のクライアントに対する過剰な忖度?
いずれにせよ、いまや商品の僅かな揺れも許されないほどCMの世界は厳しくなっている。何の準備もせず、高いハードルを前にしてからオロオロしているようでは遅い。ビジネスの世界で生き残るために、私も読者の皆さんも早々にビタ止めの技術を習得しておこう。
信頼できるプロジェクトチーム発足
こんな時に協力を仰ぐのは当然、この方達。
今回は『デイリルツ』という商品のCMを作っていく。クライアント(林製薬)側からは「勿論、ビタ止めでね」とキツく言われている(全部妄想ですよ)。
「じゃあ石井さん、早速やってみて下さい」と皆に言われたが、被写体は圧倒的にフォトジェニックな安藤さんにお願いし、私はディレクターに徹する。
まずはデイリルツを持って、普通に商品を宣伝してもらう。
我々の顔は曇った。「駄目だ。滅茶苦茶商品が動いてる。これでは契約を解消されても仕方ない」。早々にディレクターの腕の見せ所が来た。私が事前に考えてきた3パターンの手法を皆に提案し、順に検証していく。
手法①『二人羽織法』
まず考えたのは「商品名を叫ぶ人と商品を持つ人を分ける」という手法。
前後左右、林さんが突き出す腕の位置の正解を探っていく。
多少商品は動いているが、かなり良い線いってる。どうせなら商品とパッケージの両手持ちにも挑戦だ。
あらゆる体勢を取らされていた林さん。いつの間にか肩で息をしていた。
よし。この手法の検証、終わり! クリエイティブの現場は撤退する勇気も必要だ。