丸1日、新宿の地下だけで過ごす
新宿の地下といえば、サブナードやルミネエストなどのにぎやかな地下街が思い浮かぶだろう。
だがそれはほんの一部。
新宿の地下は、「地下街」だけでなく「地下歩道」やビルの「地下階」がアリの巣のように広がっているのだ。
上端の新宿三丁目駅から、下端の中央公園の連絡通路まで、だいたい1.5kmほど。
新宿駅を中心として、地下鉄4路線4駅(都庁前駅、西新宿駅、新宿西口駅、新宿三丁目駅)に地下道からアクセスできる。
また、それらはビルの地下階とも絶妙につながったりつながらなかったりしており、まさにダンジョンの様相を呈しているのである。
これをぜんぶ歩きたいのだ。
丸1日かけて、地上に出ることなく。
人影見えない、日曜午後の新宿地下
西新宿はオフィス街なので、休日になるとビックリするほど人の流れが減る。
あれ、自分しかいない…という瞬間が何度もくるのだ。
ここですこしながーい画像を載せたい。
ドヤと並べてしまうくらいに、人がいない。
それだけ?と言われれば、それだけだ。
でも、ここは新宿なのだ。
人がいないだけでワクワクしてこないか。
それに、地下道というと同じ景色が延々と続いてそうなイメージだが、実際は違う。
けっこうバラエティ豊かだ。
閉鎖された空間であるため、自分がどこにいるのかわからなくなる「地下の迷路性」という問題を解消しようと、壁面や天井のデザインに涙ぐましい努力の跡が垣間見える。
地下は地下なりに、なんとか人間の目を楽しませてくれようとしているのだ。
想像以上にダイナミック!一筋縄ではいかない地下ダンジョン
これらの地下道が効率的につながっているのかというと、そうでもない。
地図を見てもらうとわかるが、謎につながっていない部分も多い。
この日は端から端まで行って戻ってを繰り返していたら、地下だけで15km以上歩くことになった。
ここで地上に出なきゃいけないのか…という行き止まりがあったかと思えば、緑の線のように、ビルの地下をハシゴすると別の地下道へと抜けられたりする。
攻略してる感じが楽しい。
それに、地下といっても全然平板じゃないのだ。
4本の地下鉄が立体的に交差しているし、大江戸線なんて地下30mを通っている。
だからこそ、上がったり下がったり階段や傾斜がダイナミックで飽きないのだ。
また、西新宿の超高層ビル群は、60年代まで淀橋(よどばし)浄水場だったところを再開発して作られている。
水の底と水の上、街自体が立体交差しているのだ。
地上なのに地下、地下なのに地上。
その曖昧さが面白い。
気付いたら地下から地上にワープしているみたいで楽しいのだ。
ときおり顔を出す地上にときめく
1日地下で過ごしていると、ときおり見える青空が感動的だ。
少し前まで、火災時の排煙対策として「サンクンガーデン(地上への吹き抜け空間)」を作らなければいけない時代があったそうだ。
地下の息抜きとして、けっこう凝ったつくりをしている場所もあって楽しい。
地下に長いこといると、無意識的に地上を求めて、風の流れに敏感になる。
風の流れの先に青空があったりするとまた嬉しい。
先に何があるのか見通せない、ということが地下にロマンを呼び込んでいるのである。
人生とは地下道だ…なんてポエムのひとつも言いたくなるものですな。