特集 2024年6月26日

人影のない巨大ダンジョン、新宿の地下を歩き尽くす

人影のない巨大ダンジョン、新宿の地下を歩き尽くす

6月なのにもう夏日だし、休日はどこも人でいっぱいだ。

休みの日くらい、涼しくて人の少ないところに行きたい。

ならば新宿の地下だ。

新宿の地下を歩くというアクティビティを提案したい。

面白いの?と言われそうだが、これが非常に面白いのである。

平成元年生まれ。令和から原始まで、古いものと新しいものが好き。

前の記事:小田原、海の見えるミカン狩りが最高だった

> 個人サイト 畳の夢

丸1日、新宿の地下だけで過ごす

新宿の地下といえば、サブナードやルミネエストなどのにぎやかな地下街が思い浮かぶだろう。

IMG20240504162504.jpeg
レトロなビア&カフェ、ベルクのあるルミネエスト・フードポケット

だがそれはほんの一部。

新宿の地下は、「地下街」だけでなく「地下歩道」やビルの「地下階」がアリの巣のように広がっているのだ。

IMG_5745.jpeg
上が東、下が西。オレンジの部分がすべて地下だ(都の案内板より、色を強調)

上端の新宿三丁目駅から、下端の中央公園の連絡通路まで、だいたい1.5kmほど。

新宿駅を中心として、地下鉄4路線4駅(都庁前駅、西新宿駅、新宿西口駅、新宿三丁目駅)に地下道からアクセスできる。

また、それらはビルの地下階とも絶妙につながったりつながらなかったりしており、まさにダンジョンの様相を呈しているのである。

これをぜんぶ歩きたいのだ。

丸1日かけて、地上に出ることなく。

 

いったん広告です

人影見えない、日曜午後の新宿地下

IMG20240616133715.jpeg
大江戸線・都庁前駅の巨大空間。国民保護法により弾道ミサイルからの緊急一時避難施設に指定されている

西新宿はオフィス街なので、休日になるとビックリするほど人の流れが減る。

IMG20240616134946.jpeg
都庁前駅から別の地下道へ。人がいないと気兼ねなく写真を撮れる
IMG20240616143539.jpeg
丸ノ内線西新宿駅につながる地下道、タイムズ・アベニュー

あれ、自分しかいない…という瞬間が何度もくるのだ。

ここですこしながーい画像を載せたい。

IMG_5844.jpeg
いないぞ、人

ドヤと並べてしまうくらいに、人がいない。

それだけ?と言われれば、それだけだ。

でも、ここは新宿なのだ。

人がいないだけでワクワクしてこないか。

IMG20240616144635.jpeg
地下食堂街も人がいないほどに風情ある

それに、地下道というと同じ景色が延々と続いてそうなイメージだが、実際は違う。

けっこうバラエティ豊かだ。

閉鎖された空間であるため、自分がどこにいるのかわからなくなる「地下の迷路性」という問題を解消しようと、壁面や天井のデザインに涙ぐましい努力の跡が垣間見える。

地下は地下なりに、なんとか人間の目を楽しませてくれようとしているのだ。

IMG20240616145132.jpeg
ビルからビルへ、地下道から別の地下道へと移動するたびに、空間のモードが変わっていく。シックでかっこいい!
IMG20240616161205.jpeg
また、1人歩いていると空間の裂け目みたいな階段があったりしてゾクゾクする。楽しいぞ…!

 

いったん広告です

想像以上にダイナミック!一筋縄ではいかない地下ダンジョン

これらの地下道が効率的につながっているのかというと、そうでもない。

地図を見てもらうとわかるが、謎につながっていない部分も多い。

この日は端から端まで行って戻ってを繰り返していたら、地下だけで15km以上歩くことになった。

IMG_5745.jpeg
青い線は現在工事中または計画中の区間。惜しいところで切れている

ここで地上に出なきゃいけないのか…という行き止まりがあったかと思えば、緑の線のように、ビルの地下をハシゴすると別の地下道へと抜けられたりする。

攻略してる感じが楽しい。

IMG20240616135154.jpeg
先へ先へと進んでいきたくなる

それに、地下といっても全然平板じゃないのだ。

4本の地下鉄が立体的に交差しているし、大江戸線なんて地下30mを通っている。

だからこそ、上がったり下がったり階段や傾斜がダイナミックで飽きないのだ。

IMG20240616135040.jpeg
大江戸線付近の地下道。よく作ったなと思う
IMG20240616135051.jpeg
地下のさらに地下へと潜っていく。電気がなければまったくの闇なのだ考えると背筋がひんやりする
IMG_5902.jpeg
階段/エスカレーターファンには最高の場所だと思う

また、西新宿の超高層ビル群は、60年代まで淀橋(よどばし)浄水場だったところを再開発して作られている。

水の底と水の上、街自体が立体交差しているのだ。

IMG20240616132241.jpeg
現在再開発中の新宿駅西口地下広場は空が広いけど地下だ
IMG20240616060555.jpeg
今は亡きスバルビルの新宿の目を横目に地下道を進んでいくと…
IMG_5970.jpeg
フラットなまま地上に出る。ここが先ほどの地図の赤◯の部分だ
IMG20240616160905.jpeg
地下と地下が地上をまたいでつながっている…!
IMG20240616160959.jpeg
奥に進むと京王プラザホテルの1階、プラザナードだ。ホテル的には1階なのだが、都の地図では地下と表示されており混乱する

地上なのに地下、地下なのに地上。

その曖昧さが面白い。

IMG20240616174021.jpeg
ワンデーストリートという地下道は、そのまま都庁の1階部分につながってる

気付いたら地下から地上にワープしているみたいで楽しいのだ。

IMG20240616163042.jpeg
ワンデーストリートには、天井にビルの共同溝(水道や電気などのライフラインが通っている穴)がせり出している部分もある。力技!

 

いったん広告です

ときおり顔を出す地上にときめく

IMG20240616144919.jpeg
地下から見上げる損保ジャパンのパンタロンビル

1日地下で過ごしていると、ときおり見える青空が感動的だ。

IMG20240616135712.jpeg
どこまでもグレーな地下空間を歩き…
IMG20240616135908.jpeg
脇から上へ抜けるエスカレーターを上ると…
IMG20240616142714.jpeg
空だ…!と妙に感動してしまう

少し前まで、火災時の排煙対策として「サンクンガーデン(地上への吹き抜け空間)」を作らなければいけない時代があったそうだ。

地下の息抜きとして、けっこう凝ったつくりをしている場所もあって楽しい。

IMG20240616153936.jpeg
モード学園コクーンタワーのSFチックな吹き抜け
IMG20240616143438.jpeg
アイランドタワーのアトリウムも壮観だ

地下に長いこといると、無意識的に地上を求めて、風の流れに敏感になる。

風の流れの先に青空があったりするとまた嬉しい。

先に何があるのか見通せない、ということが地下にロマンを呼び込んでいるのである。

IMG20240616060512.jpeg
見通せない道の魅力!

人生とは地下道だ…なんてポエムのひとつも言いたくなるものですな。

 

⏩ 公衆電話がかわいい

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ