ダサ懐かしい
実家に住む姉に志茂田景樹似のコタツの写真を送ってもらった時、カラフルすぎて全国に公開するのが恥ずかしいと思った。
「うちのコタツ、色味がダサいね。」と送ると「それは私もずっと思ってる。」と返ってきた。だよね。
数日後、私たちの意見を汲んだ母がコタツを模様替えしたらしく、写真が送られてきた。
でもいい。コタツはダサ懐かしいものなのだ。このダサさであり続けてほしい。
2年ぶりに実家に帰った。
地元は寒さの厳しい雪国で、今年は特に大雪だった。
着いて早々、寒すぎてわけがわからなくなった。
ザクザクと雪の上を歩いて家に帰り、2年ぶりの余韻に浸る間もなくコタツにすっぽりおさまった。
もう出たくない。絶対に出ない。私を出させたら大したもんだと思う。
あぁ、このままコタツを着てしまいたい。
そうだ!コタツのように内側に暖かい空気がたまるコートを作ればいいんだ。
あったかくて落ち着く、コタツをそのまま羽織れるコート。それいい!作ろう!
コタツコートを作るということで、参考に実家の愛しきコタツの写真を送ってもらった。
ここに載せるのが気まずいほどカラフル。だけど世の中にはダサい方がいいものがある。それがコタツだ。
雪国のコタツでまず外せないのがコタツホースだ。
コタツホースとは、ストーブからコタツの中へ空気を送り込むための銀の筒である。このホースの上でよく濡れた手袋や靴下を乾かしていた。
このコタツホースは見れば見るほど愛おしい。ん?みたいな顔をしていて愛くるしいのだ。
次に毛布だ。
我が家のコタツは毛布とキルトの布団を2枚重ねでかけていた。コートも2枚構造にして暖をとろう。
最後にコタツといえば、足に引っかかるコードだ。
祖母の家のコタツでゴロゴロしていると、よく電源のコードが足に引っかかってきた。
コタツに入って足を伸ばした位置にコードがあると、絡まってきて気になるのだ。コタツあるあるだと思うが、私だけあるあるかもしれない。
以上のこの3点を詰め込んで、暖かい空気のたまるコートを作りたい。
さっそくデザインを書いた。
内側に暖かい空気がためられるようにビッグシルエットで作る。
外側はキルト、裏側は毛布の2枚構造にしてコードに似た紐を裾からたらす。
そしてコタツホースを袖につないで暖かい空気を送るのだ。
よし、作ろう!
さっそく使えそうな生地を買ってきた。
赤い布の丸い刺繍も味があっていい。
まずは型紙を書こう。
手持ちのアウターから型をとり、線を整える。とにかくどでかいコートを作るために、型紙を大きめに修正。
これを裁断して、
身頃だけ縫い合わせてサイズ確認。
なんだかめでたい感じになった。まぁ、めでたいに越したことないからいいか。大きさもいい感じ。
次に袖をつけて、
前立てとファスナーを仮縫いする。
さらに前立て部分に裏地をつけて、
お腹で結ぶヒモと一緒に、ファスナーと前立てを一気に縫う。
これでキルトの外側ができた!
今のところ、神主の服が出来上がってる。
次に襟をつけて、
ハイネックにした部分にかわいいスナップボタンをつける。
ここでようやく毛布の裁断だ。
ジャグジャグ切っていたら毛羽が散らばって、部屋が大変なことになっていた。
この毛羽を掃除機で吸うのが楽しかった。でも掃除機と同じくらい私も空気中の毛羽を吸っていたから、咳したら毛玉が出てくるんじゃないかと思う。
裁断を進めていると、袖を裁断する布が足りないことに気づいた。
この向きじゃないと毛の流れが揃わないのだ。
服を作る時に1番恐ろしいのは、布が足りないと気づいた時。
家でお好み焼きを焼いたのに、お好みソースがないと気づいた時の絶望感と一緒。もう食べたくなくなるくらい絶望する。好きゆえに、譲れないから。
5秒くらい焦ったけど、型紙を分ければ大丈夫だった!
布が足りると分かったので、先にポケットを作り、
こんな感じでつけてみる。
最後に裏地をつけていく。
まずは袖だ。袖口に毛布をつけると共に、袖の裏地もつけていく。
袖口がついたら、そこに袖の裏地もつなげていく。
伸ばすとこんな感じ、
袖ができたら全体の裏地をつける。
裾、前立て、袖、襟の順に縫って閉じていき、完成!!
はんてん風コタツコートのできあがり。中華風でカッコいい!
次はコタツの相棒であるコタツホースを作ろう。
コタツが西郷隆盛ならば、コタツホースは犬だ。そのくらいの関係性だと思う。
使うのはこれ。
銀の布を筒状に縫い、レインボースプリングを入れると、
コタツホースになった!
コタツコートが完成したので、さっそくコタツになりたいと思う。
まずはコタツホースを設置しよう。
こんな枠組みを作って、装着。
電気ストーブをつけて温風を流し、座る。
コタツホースが布なので風が漏れていくかと思ったが、ちゃんと温風が流れてきた。左手にやんわりと当たる。
数分待つと、
最初は左腕だけほんのり暖かかった。途中から左半身がじんわり暖かい空気に包まれた。右側までは温風が来ない。けど寒くはない。
というか、暑い。汗かいてきた。
暑いときは足を出すのもコタツ。薄着になっても入っていたいのがコタツ。
写真を撮っていると足の指に挟まってくるコード。
着ていて気づいたけど温風を送らなくてもこのコート自体がかなり暖かい。毛布+綿付きポリエステルキルトで保温性が抜群なのだ。
いや、この部屋が暖かいのかもと思って、窓を開けて外と同じくらいの気温にしてみた。
窓際に座り、コートを着る。
これだ。コタツコートの今日の使い方はこれだ!
薄着で窓開けて着るのが正解だったのだ。
夏にクーラーをつけて毛布でゴロゴロする最高のやつと同じ気持ちよさである。
コタツコートはコタツだけでなく、もちろんコートとしても使える。家でも外でも使えて便利なのだ。
とっても寒い日は、ファスナーを全部閉じてチャイナ風に。
大きな袖口はキョンシーをイメージして作った。
前をあけると、中華風味は消えて強豪校のベンチコートになる。
オーバーサイズなのでアウターの上にも着れる。
横から見た時のフードがなんともいい感じ。
コタツコートが大きすぎるから、アウターの上にも羽織れてしまうのだ。今度雪国に帰る時は、これを着ていこう。
実家に住む姉に志茂田景樹似のコタツの写真を送ってもらった時、カラフルすぎて全国に公開するのが恥ずかしいと思った。
「うちのコタツ、色味がダサいね。」と送ると「それは私もずっと思ってる。」と返ってきた。だよね。
数日後、私たちの意見を汲んだ母がコタツを模様替えしたらしく、写真が送られてきた。
でもいい。コタツはダサ懐かしいものなのだ。このダサさであり続けてほしい。
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