結局、「マグロのオブジェとの記念撮影を1日で6か所達成」という大記録も打ち立ててしまった。
こうなると「人間は何故、マグロの実物大オブジェを作りたがるのか?」という新たな疑問が湧いてくる。
調べてみると背比べは和歌山の黒潮市場などにもあるようだし、実物大オブジェは居酒屋さんなどを探せば都内だけでももっとあるはず。このテーマ、まだまだ掘り下げ甲斐がありそうだ。
これは、ある男が「マグロとの背比べ」と真剣に向き合った1日の記録である。
築地市場、豊洲市場、葛西臨海水族園。いずれも魚にまつわるスポットを巡って分かった「マグロと背比べをすることの意味」とは?
※最後に年末年始の買い出しに役立つ、築地&豊洲市場情報もあります!
月面探索。100mを9秒台で走る。人類はこれまでありとあらゆる挑戦をし、結果を残してきた。これほど科学が発達し、あらゆる情報が手に入れられる時代に、私にも「人類初」のチャンスはあるのか?真剣に考えてみる。
あった。「1日で3回マグロと背比べする」だ。都内在住である私の生活圏内に、何故か「マグロと背比べコーナー」が幾つかある。
確かにマグロは人気だ。チヤホヤされてる。だからって複数の(具体的には3か所)背比べスポットが用意されてるのは謎だが、1日で全部回れば見えてくる景色があるかもしれない。何より、それを成功させた人類はまだいないはずだ。
なぜ「人類初」にこだわるかって?そこに理由なんていらない。やった人がいないことは、誰かがいずれやる。そうやって人類は、ナマコも食べた。
最初の目的地は築地場外市場にある、「築地魚河岸」という施設。
写真右の階段を上ると、魚河岸食堂に併設されたテラス席に出る。
ここに1匹目がいる。さっそく背比べをしてみよう。
なるほど。吊るされたマグロの横に立つと人間のちっぽけさと同時に、それを克服してきた歴史も感じられる。魚に蛇に熊。巨大な生物を捕獲した人間が横に立って撮影したくなるのは、この2つの感覚を味わう為なのか?
せっかくなのでもっと積極的に撮影を楽しもう。
早朝なので人は殆どいないが、撮影を頼んだ妻が明らかに嫌な顔をし始めた。彼女の協力が得られなければ目的の達成はない、という危ないツナ渡り。もう次の目的地に向かおう。
お次は豊洲市場。基本的に飲食店以外に一般の方が立ち入れる場所はあまりないが、誰でも入れる水産仲卸売場棟3階に2匹目がいる。
こいつはデカい。1匹目と違って、ここは完全なる背比べスタイル。自分がスプーンおばさんに思えてくる。
それでも人間の力を見せつけるべく、大間のマグロ漁師を模してみた。わだば、人類初の男になる。ビニール製の前掛けや長靴も用意したかったが、それは次回への教訓としておこう。
それにしても、こんなに目立つスポットなのにみんな素通りしていく。
…と思っていたら。熱心に撮影している我々の様子を見て、外国からの観光客が続々と撮影し始めた!みんな、トロットロの笑顔を浮かべてるぞ。背比べ欲は国をも超えるのか!
皆さんが人類初の偉業達成を見届けようとしてるところに申し訳ないが、最後に築地と豊洲のお役立ち情報がある、ともう一度お伝えしておく。いや、別に何も弱気にはなっていないぞ。
残るは葛西臨海水族園。入口のチケット売り場横に設置されてる3匹目を目指して…あれ?
いつの間にか場所が移動されてた。不意を突かれたが、早速撮影。
遂にやった!人類未踏の地に到達だ。しかし、月面着陸で言えば星条旗と宇宙飛行士が写っているあの写真のような、象徴的な1枚が欲しい。よし、あの人を呼び出そう。
こうして私は「マグロとの背比べを1日で3か所達成」という、人類史上初の記録を打ち立てた。それぞれのスポットで見た光景が脳裏によみがえる。
築地では人間のちっぽけさと自然の克服を感じた。豊洲では外国の方々の笑顔を見た。そして、葛西臨海水族園では子供とそれを見守る大人達の楽しそうな姿を見た。
そうして思い出したのだ。私自身、子供が大きくなるたびにマグロと背比べをさせて、その成長を喜んでいたことを。
なぜこんなにマグロとの背比べスポットがあるのか?その答えは、私の中に既にあったのである。
「だってマグロ、デカいんだもん」
「今日はありがとね。帰ろう」
妻にお礼を言うとホッとした顔を見せたが、元々この背比べスポットがあったチケット売り場の様子が気になる。すぐそこだから一応チェックしておこう。
なんとマグロのオブジェと写真撮影できるブースができていた。これはやるしかない!
撮影自体は無料で写真入りの小さなカードをもらえたが、思わず追加料金を払って写真立てと写真データまで購入してしまった。
喜ぶ私に、妻がとんでもないことを言い出した。
「オブジェもありだったら、さっき豊洲にも結構あったよね」
えええええええ!気付かなかった!早く言ってよ!
「豊洲戻るぞ!」
帰宅するという前言を鉄火い、いや撤回しだした私を見て、妻は(しまった)という顔をしているが、聞いてしまったら確認しないわけにいかない。
結局、「マグロのオブジェとの記念撮影を1日で6か所達成」という大記録も打ち立ててしまった。
こうなると「人間は何故、マグロの実物大オブジェを作りたがるのか?」という新たな疑問が湧いてくる。
調べてみると背比べは和歌山の黒潮市場などにもあるようだし、実物大オブジェは居酒屋さんなどを探せば都内だけでももっとあるはず。このテーマ、まだまだ掘り下げ甲斐がありそうだ。
飲食が本業である私は、20年以上築地と豊洲に仕入れに通っている。せっかくなので最後に、おすすめのお店や商品をご紹介しよう。お寿司や魚は多くの情報があると思うので、それ以外をチョイスしてみた。年末年始の買い出しなどの参考にして欲しい。
〈築地場外おすすめ情報〉
① 鳥藤とりそばスタンドさんの「朝のとりそば」
②長生庵さんの朝定食
③ 田村商店さんの「殻付きアーモンド」
〈豊洲市場おすすめ情報〉
豊洲市場は一般の方が入れる場所は限られているし、コロナの感染状況などによりルールや営業時間等も変わる可能性がある。事前によく調べておきましょう。
① 中栄の合いがけカレー
② センリ軒の卵入りシチュー
③ 山本海苔の「キティちゃん海苔」と「一藻百味」シリーズ
④ 屋上庭園
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