実際に集まった曲は上の画像を見てほしい。ラインアップを見ると人によって「作業に向かなそうな曲」の概念がバラバラであることに驚かされる(募集時は“作業に適しなさそうな曲”だった)。ご協力ありがとうございました!
なお、リストには「作業に適しなさそうな曲」だけではなく、「作業に向いているらしいけどどうだろう?」という趣旨の曲も入っている。この中から5曲ほど選んで実際に作業して検証してみる。
「呼び込み君」の音楽(No.4)
「呼び込み君」とはライター井上マサキさんが以前取材もしていた、スーパーなどで「ポポ~ポポポポ~♪」という軽快な音楽で呼び込みをする機械だ。初っ端から作業用音楽にするビジョンが全く思い浮かばない曲選曲である。とってもありがたい。
「呼び込み君」(曲名は「NO.4」)は近所のスーパーや「ドン・キホーテ」で聞く音楽という感じで、自分にとっては身近なBGMである。しかし、家の中で聴く経験は皆無だ。この呼び込み君BGM、試しにYoutubeで検索してみたら「Remix」や「耐久」などユーザーによってさまざまなアレンジが加えられていた。愛されている……!
果たして呼び込み君BGMでは作業は進むのだろうか……?
曲を再生すると、思わず笑いが出てしまった。私は今、家で「呼び込み君」BGMを聴いている……! キーボードを打ちながらも、思考は40%くらい近所のスーパーのことを考えている。
近所のスーパーでは精肉売り場付近に「呼び込み君」が置いてあるので、肉を品定めしている時の気持ちがひたすら繰り返される。豚バラ肉買っておこうかな……卵は冷蔵庫にあったっけか……。
そんな感じで、最初の方は思考を近所のスーパーに持ってかれていたが、集中し始めるとこれが意外にも全く気にならない。むしろ一定のリズムとメロディーが短い間隔で繰り返されるこの曲は集中しやすい音楽じゃないかと思う。当初の予想は全く外れて、とても作業が捗った。
聴きはじめの最初は思考を邪魔されるが、一回集中してしまうと全く気にならない。むしろ作業しやすいぐらいだった。
……ただ、一旦集中が切れるとBGMが気になってしょうがなくなったことを伝えておく。
ラジオ体操第一
むすすさん
曲:ラジオ体操第一
理由:デスクワークしていても思わず身体が動いてしまいそうだし、その衝動を抑える方に気が向いてしまいそうだから。
夏休みの朝の定番、ラジオ体操第一……! 「ラジオ体操」だけど自分はラジオで聞いたことがなかったのだが、ラジオではNHKラジオ第一放送と第二放送で聞くことができのだそうだ(初めて知った)。
曲のイントロが流れると、「うわあ」と思った。「蛍の光」を作業用BGMにした時も同じような感想だった。人は、意外なシチュエーションで曲を聴くと「うわあ」と思うのかもしれない。
曲を聴いていると自分が、身体をねじる体操のちょっと高くなるところと、身体を回すところのメロディが好きだということに気づかされた。……そうだったのか。落ち着いて聴いているからか、“ラジオ体操第一の曲の中で、自分が好きなポイント”が見つかってしまった。今まで知らなかった自分だ……。
あとなんとなく前々職で備品の買い出しに行ったスーパーマーケットのことを数年ぶりに思い出し、なんでだろうと思ったのだが思い出した。就業前にラジオ体操をする職場だったんだ。記憶と音というものはめちゃくちゃ深く紐づけられていることに驚いた。
意外だった。もっと小学校の夏休みとかを思い出して郷愁的な気持ちになるのかと思ったら、意外にも最近のことばかり思い出される。それほど大人になっても身近なBGMだったんですね。
作業を妨げられるほどではなく作業もしやすかったが、その間いろんなことを思い出して考えていた。
天国と地獄
高橋さん
曲:天国と地獄
理由:意味もなく焦って疲れるのか案外慣れるのか知りたい
天国と地獄……運動会でお馴染みのBGMですね。個人的にはリレーの競技のイメージが強い。かといって卒業して結構経っているし、学校にも縁がないので言うてもそこまで感情を揺さぶられることはないんじゃないかな~と思っていましたが。
曲を流してすぐ出た感想が「やべええええええ」だった。この曲、めちゃくちゃ焦る。常にキーボードを打ち続けてないと間に合わないんじゃないか。今、まさにそんな気持ちでキーボードを叩いている。運動会で使われている曲って、ちゃんとやる気が出るような曲が選ばれているんだなあ……。
集中したら音楽が気にならなくなったが、ふと意識を曲に戻したときに疲れを感じた。無意識に焦っているため長時間の集中にはあまり向かないかも。短時間に集中したい作業におすすめです!
「やらなきゃ!」という気持ちでやる気は一番出る曲。夏休み最終日や試験勉強前日にいかがでしょうか。作業は進むけど焦るからミスには注意かも。
クリスマス・イブ(山下達郎)
hataoさん
曲:クリスマスイブ(山下達郎)
理由:その時期に聴けば、クリスマス→年末に向かってなんとなくのワクワク感と追い込まれ感で作業が進みそうですが、今のような全然関係ない暑い時期でも錯覚できるのか試してみたいです。
この曲セレクト、いい意味で狂気だな~と思いました。コメントでおっしゃっているように、クリスマスシーズンに聞いたらワクワク感や年末の追い込まれ感でなんとなく仕事が進みそうな気がする「クリスマス・イブ」。だが今は6月だ。
初夏にクリスマス・イブを作業用BGMにするとどんな気持ちになるのか興味があります。ではこちらで作業してみます。
イントロが流れると、体感温度が若干涼しくなったような気がした。そして次に感じる感情は……切なさだ~~~~ッッ。小さい頃からシーズンのたびに聴いている曲なので、クリスマスの時期に感じるワクワク感、年末が近づく切なさが蘇る。
あとは、私は「クリスマス・イブ」はラジオで聴くイメージがあったため、職場でラジオを聴きながら作業をしているような気持ちになった。「クリスマス・イブ」、作業が捗る……!
オフィスでラジオを聴きながら作業をしている気分になり、個人的に作業が進むBGMだった。あとはこの曲に切ない思い出があるわけではないけど、切ない気持ちになる。
「小さな旅」
伊藤健史さん
曲:小さな旅~光と風の四季~
理由:生きることが旅のようなものであるならば、作業もまた旅なのではないか。ローカル線に乗り、山あいの村で機織りの音に耳を傾けるように取り組むと、エクセルもパワポも民藝品のように尊い想いのこもった仕事になるのではないでしょうか。
当サイトライターの伊藤さんからも頂いた。「小さな旅」……あの郷愁を揺さぶられる「小さな旅」じゃないか!
小さな旅はNHK系で昭和58年から放送されている紀行番組で、現在も日曜午前8時から放送している。私には番組をしっかり見た記憶はないのだが、心にはしっかりとあのメロディが染みついている。日本人には遺伝子レベルですりこまれているんじゃないだろうか。こちらは特に思い出のあるBGMではないはずだが、定期的に聴きたくなる。ではこちらで作業をしてみる。
曲を再生すると「おお……」と声が漏れた。何故かこちらの曲を聴いていつも思い浮かぶのは日本のどこかにありそうな漁村の風景。実際に番組で見たのか、それとも曲からのイメージなのかはわからない。どこなんだろう……記憶の中のあの漁村に行きたい。せ、切ない……良い曲だ……。
ノリノリな曲ではないけど、曲に合わせてゆっくり体を横に揺らしてしまう。というのも、そうしてないと曲の持つ郷愁や切なさに感情を持ってかれすぎてしまいそうで……。いい曲だけど、書く文章がもれなく切なくなりそう。あと旅に行きたい。あまり観光客がいないようなところに行きたい。旅に行きたい…………。
この曲は冬の終わりのイメージが個人的にあるためか、体感的に涼しげで6月の暑さが気にならなかった。作業に集中はしやすい曲だった。けど、作業が捗るかというと微妙なところ。感情を切ない方向にめちゃくちゃ引っ張られる。あと旅に行きたくなってそのことばかり考えてしまう。
作業にむかなそうなBGMで新しい自分に出会えた
予想に反して、ふたを開けてみると割とどれも作業がしやすいBGMばかりであった。むしろいつもよりも捗ったかも? そして、音楽には記憶が深く紐づけられていることに改めて驚いた。
私は今回試した曲それぞれが役割が違うと思っていて、例えば作業に入るまでの億劫な状態~作業開始で「天国と地獄」を流してやる気を上げ、集中し始めたら「呼び込み君の音楽(No.4)」で集中をキープ。作業が長くなったら休憩で途中にラジオ体操第一を流して体操し(作業しないんかい)、疲れてきたら「小さな旅~光と風の四季~」や「クリスマス・イブ」で癒されつつ作業、みたいな使い方したら効率がいいかもしれないと思った。
今回の結果はかなり個人的な感想に寄ったものになったので、人それぞれやってみると異なる結果になって面白いのでは。
いつもの作業用BGMに飽きたら、普段は聴かない音楽で作業してみると新しい自分に出会えるかもしれない。