特集 2019年2月17日

バナナで釘を打って日曜大工(デジタルリマスター版)

しもやけになった。

バナナで釘うちたい。
そう、むかし見たあの CM だ。

氷点下の世界ではバナナで釘が打てます。

カンカン打ちたい。打つだけじゃなくて、それで家でも作ってしまいたい。バナナで作ったおうち。お菓子の家みたいじゃないか。ヘンゼルとグレーテルも来るぜ

まずは寒さのハイシーズンの北海道に出発だ。

2005年8月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:集まった1300枚!カメラロールの肥やしとしか言いようのない写真が

> 個人サイト webやぎの目

 

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女満別空港
まずは空港でチャレンジ。
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北海道陸別町(昼)
日本一寒い町、陸別町で
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北海道陸別町(夜)
バナナをしばらく凍らせてみて
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北海道陸別町(朝)
バナナをひとばん外に放置して
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ありがとう。バナナ
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女満別空港 (-6.5℃)

ギャラリーがいるが 

羽田から1時間30分。飛行機に釘を持ち込んでも何もいわれず、北海道の東部の女満別空港についた。屋上の送迎デッキでさっそくバナナで釘を打ってみよう。

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雪が30センチぐらい積もっている

送迎デッキは寒いため、見送りの人たちは飛行機が飛ぶまでのあいだ、待合室にじっとしている。待合室にいる人の視線が気になる。

大森で買ってきたバナナで釘の背を打ってみる。

せーの

ぐさっ

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せーの、ぐさっ

バナナに釘が刺さっている。

残念、しかし………

釘は木材に刺さるべきなのだ。バナナにささってどうする。ギャラリーのため息が聞こえる(そら耳)。たしかにバナナは東京にあるときと同じ柔らかさなのでこれでは釘は打てないだろう。

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あーあ

マイナス6.5度でこの柔らかさということはいったい何度だったら釘が打てるのだろうか。

釘を抜いたバナナをかじりながら思った。

バナナが硬くなっている。バナナは瞬間に凍るのではなく、じっくり凍るようだ。時間をかけて凍らせればいけるかもしれない。

光明が見えてきた。さあ、もっとさむいところにいこう。

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だめだったか………

わかったこと

バナナで釘はうてなかった
じっくり凍らせればこのぐらいの温度でもいけるかもしれない
バナナの皮を捨ててはいけない(転ぶから)
 

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陸別町 (-7℃)

バナナを冷やしてから使う

女満別空港から3時間。バスと電車を乗り継ぎ、日本でいちばん寒いまち、陸別にやってきた。

かばんからバナナを取り出す。あ、荷物の下になっていたため黒くなっている。硬くなるどころか痛んでブヨブヨだ。あああ。

しかし凍らせれば関係ない。さっきの教訓を生かし、バナナをいきなり使わずにまずは駅前の雪にバナナを突き刺して、しばらく待つ。

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5分ほどバナナを冷やします

お、硬くなっている。これならいけるかもしれない。(なんかこのあたりエロティックですね)

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期待させる硬さになりました。せーの。

せーの。

ぼすっ。

やっぱりバナナに釘がめり込んでしまった。

またも失敗。だけど!

しかしよく見てみると木材に凹みがついている。

釘が刺さりかけた後がある。ナイスファイト!バナナ。
いいところまでいった。釘は刺さらなかったが一矢を報いることができた。

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惜しくも!
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でも、へこみが残りました。やったー!

夜になってもっと冷えれば釘が刺さるのも夢ではない。
陸別の夜を待つことにしよう。

決意も新たにきょう2本目のバナナを食べた。バナナは皮をむくとぶよぶよだった。

食べ終えて、バナナの皮を片手にうろうろしていたら撮影係の住さんが「かなりやばい感じなので、なにか袋に入れてください」とアドバイスしてくれた。すいません。

わかったこと

木材に凹みを作ることはできた
もう少しバナナを凍らせてみよう
バナナの皮を捨ててはいけない(転ぶから)

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陸別町 夜 (-10℃)

3時間冷やしたバナナ登場

陸別町で開催されているしばれフェスティバルに参加した。その会場でバナナ実験は続く。

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着込んで誰だかわからなくなってます。

夜9時。バナナは雪にさして3時間冷やした。ガチガチだ。これなら釘、いけるんじゃないか。高鳴る期待を胸に釘を打つ。

ぼすっ、ぼすっ。

いままでのように簡単にバナナに釘が刺さらない。バナナと釘が実力拮抗している。いままでのバナナと違う。

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さっきと同じぐらいのへこみはつきました

ぼすっ

やっぱり釘がバナナにささってしまった。うーん、おしい。目の前で優勝を逃した気分。あともうすこしだったのに。もう少し凍らせておけば………。バナナで釘うちにタラとレバは禁物だ。

手が痛い。素手で凍ったバナナを握っていたので手が冷たい。

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手が冷たい、というか、痛い。

天文台に連れて行かれる

素手の痛みで雪の上をころがっていたら、通りかかりのおばさんに話しかけられた。バナナで釘を打っていることを説明すると

「だめよ雪の中じゃ。もっと風の当たるところにおかないと。」
「雪の中はあったかいから」
そうなんすか。知らなかった。
「あそこなんかいいんじゃない?」

おばさんは祭り会場の滑り台受付テーブルを指す。
あんなところにバナナおいて大丈夫なんだろうか。まあいいや。とりあえずテーブルにバナナを乗せる。
人の机の上にバナナを乗せる。微妙な嫌がらせのようになった。

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机の上にバナナを置いて帰る

なぜかそのあとおばさんに天文台に連れて行かれて土星と木星と見せられる。
土星までの距離は何千光年。バナナで釘を打って遠くの星を見る。ミクロとマクロが入り混じる夜。

わかったこと

3時間、雪で冷やしただけではまだだめだ
雪のなかはあたたかいらしい
陸別は星がきれいだ
陸別の人は世話好きだ

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陸別町 早朝 (-10℃)

できた!できた!

夜が明けた。寒くて頬がちりちりする。体が痛い。

きのうのテーブルのバナナは見たことない色になっていた。あの CM のバナナはこんな色だったっけ?

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凍結バナナ。くすんだ色。

しかしバナナはすばらしい硬さを見せている。僕も武者ぶるいをかくせない(寒いだけ)。

これならいける。鳥小屋を作るための板をとりだす。ここ、北の大地にバナナで作った家を小鳥たちに残すのだ。南国の果物で作った家を。今月のデイリーポータルの月間テーマは「愛」だ。

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気合を入れて素手でたたく(しもやけになった)

ではさっそく

がん、がん

ささった!

釘が打てた!

テレビといっしょ!

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釘にシャーベット状のバナナがついている

鳥小屋はならず

勢いづいてさらに釘を打つ。

がん、がん

釘がささってゆかない。

がん、がん

あれ?

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バナナも無傷ではありませんでした

バナナに釘がめり込んでしまった。刺さったと喜んだのもつかの間、板が思いのほか硬いのか。もしかして板も寒さで硬くなっているのだろうか。

釘は刺さるか小屋を組み立てるほどではない。釘にシャーベット状になったバナナがついている。

わかったこと

バナナで釘は打てる
でも、日曜大工をするほどではない
バナナは凍るとへんな色になる

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まとめ 

バナナで釘を打っていると、たくさんのひとに声をかけられた。

「あ、バナナためしてるんですね」
「どうですか?釘うてます?」

みんなあの CM が気になっているのだ。

そんなモヤモヤは朝に解ける雪のようにすっきり消えた。バナナで釘は刺さる。やればできる。

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釘が打てたバナナはなかも凍ってました

この達成感はなんだろう。これからどんなに理不尽な目にあってもがんばっていけそうです!とか言ってしまいそうだ。ありがとう寒波。ここまできてよかった。

僕が家を建てるならば、釘を1本も使わずにたてたお寺のように、かなづちを1本も使わずにバナナだけで建ててみたい(間違った宮大工)。

そんなどうかした想いを胸に陸別を後にした。

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念願なかってすっきりした青空

 

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