世界一危険な動物、蚊
夢のようなイカダの旅だったが、蚊の大群と電車のストレスで一気に現実に引き戻された。それでも来年もイカダに乗りにきたいと思った。
イカダのキャンプも楽しそうだが、私のようなひ弱な都会っ子にはデイレンタルがちょうどいいかもしれない。

先月、ベルリン郊外の湖でイカダに乗ってきた。
イカダというとトム・ソーヤーの丸太のイカダを思い浮かべるが、ドイツ式のイカダは屋根もついてるし、泊まることだってできるのだ。
そんなものをイカダと呼んでいいものか分からないが、とりあえず乗ってきた。
ベルリンの夏の風物詩といえば、湖水浴である。
ベルリンや近郊のブランデンブルク州には数えきれないほどの湖がある。海よりも手頃に遊びに行けるため、天気の良い週末などは湖に人が殺到する。
Auch in Brandenburg sieht es mit der Qualität der Seen ganz gut aus. Aber: Nicht empfohlen wird das Baden bei Werder, Caputh und Ferch https://t.co/DzLUIlOVaj pic.twitter.com/Ex12sYbszJ
— rbb|24 (@rbb24) July 22, 2018
2018年のブランデンブルク州の公共水浴場の水質を示す地図。ベルリンとブランデンブルクには合わせて3000以上の湖があるらしく、ドイツ国内で最も湖の多い地域だそうだ。
湖によってはビーチのように整備されている場所もあるが、自分で適当な場所を見つけて泳ぐ、自由なスタイルが主流だ。
泳ぐだけでは物足りない人は、カヤックやボートなどのレンタルサービスも利用できる。そんな中でも我が家でマイブームなのが、イカダのレンタルだ。
イカダと言うと思い浮かべるのが、トム・ソーヤーの冒険に出てくるような丸太のものや、浮きに板をくくりつけたシンプルなものだ。
だがドイツで言うイカダ「Floß(フロース)」は、イカダの浮き台部分に小屋が乗っかったようなスタイルが多い。イカダと言うよりも小舟と言った方が正しいかもしれない。
去年はイカダに乗るチャンスを逃したので、久しぶりにイカダを1日レンタルしてきた。
イカダのレンタルは、ボートのレンタルと同じように所々にあり、主に5月から9月にかけて利用する人が多い。
特に7月や8月の週末は予約が何週間も先に埋まっていることがあるので、事前にインターネットで予約すると安心だ。
当日の天気は晴れ時々曇り、最高気温は27度ほど。最高のイカダ日和である。今回は夫と私と、友人シャーロッテとヤコブの4人でブランデンブルクへ向かった。
よろよろしながら、どうにかレンタル屋さんに到着。2006年から手作りのイカダを7隻貸し出している小さな店だった。
予定より到着が遅くなってしまったので、桟橋に残っていたのは私たちのイカダだけだった。
レンタルイカダに乗るには16歳以上であればボート免許もいらないそう。こんなに安易に借りれちゃっていいのか。
ウェブサイトには簡易トイレがついていると書いてあったが、トイレが見当たらない。聞くと、トイレセットの収納場所を見せてくれた。
便座のついたイスを組み立て、生分解性のバッグに用を足し、岸に上がってスコップで穴を掘り、袋ごと埋めるそうだ。
それをトイレと呼んでいいものか怪しいが、想定内なので誰も動揺しない。小の方は説明がなかったが、湖でするのが暗黙の了解になっているようだった。
そんな感じで10分ほど説明を受け、いざ出発である。
湖に出てまずおどろいたのが、6月末の日曜日だというのにひとっこ一人いないことである。
見渡す限り誰もいない湖。時速10キロほどなので、酔うこともない。
たまにイカダやボートが通り過ぎていくこともあるが、ほぼ貸し切り状態である。本来は右側通行とかルールが色々あるのかもしれないが、ここではあまり関係なさそうだ。
そよ風に当たりながら湖を見渡すと、気分はトム・ソーヤーである。ここはミシシッピ川から遥か遠い、旧東ドイツのブランデンブルクだけど。
出発したはいいがお腹が空いたので、すぐに錨を下ろしてお昼にすることに。イカダの屋根には登ることもできるので、屋根の上でピクニックをした。
特にすることもないので、あとは返却時間までのんびり過ごすだけである。
今回はデイレンタルだったが、一泊140ユーロ(約1万8000円)ほどで宿泊することもできる。つまり水の上でキャンプするような感じである。
小屋の中の通路部分に付属の板をはめ込むことで、3〜4人が寝れるぐらいのスペースが出来上がる。その上に持参したマットや寝袋を敷いて寝ることができるのだ。
数日あればイカダで遠出をしたり、早朝に泳いだり料理をしたり、楽しいと思う。トイレやシャワーはないけれど、そんなことは気にしないキャンプ好きにはたまらないのであろう。
8時間も暇すぎやしないかとも心配したが、泳いだり昼寝をしたりで十分楽しむことができた。
イカダの返却も無事に終わり安心していたが、大変なのは実はこれからだった。
帰りは砂道を避けようと言っていたにもかかわらず、なぜか間違えてまた森の中を通ってしまったのがことの始まりだった。
朝はまだよかったものの、夕暮れ時の森は蚊の溜まり場と化していた。
しかも、砂地でうまく進めない。もたもたしている間に、蚊の大群に襲われる。しかも、Tシャツ短パンと無防備な状態。蚊たちにとっては格好の餌食である。
必死に蚊の大群を追い払いながら自転車を漕いでいたので、帰りの写真はない。
次回は長袖長ズボンを持ってこよう。あと、森の中を通るのはやめよう、と誓った。
どうにか駅までたどり着いたのもつかの間、次の難題が待ち構えていた。帰りの電車だ。
週末の夜のベルリン方面行きの電車は、私たちのようにブランデンブルクから帰るベルリン民で混むのである。
電車の時間が近づくとともに、自転車を持った人たちがどこからともなくぞくぞくと現れた。そのうち、ホームには自転車が8台になった。嫌な予感がする。
この駅だけで8台も自転車があるのであれば、ほかの駅でも自転車を持ち込む乗客が同じくらいいるはずだ。果たして電車に自転車を乗せるスペースはあるのだろうか。悩んでいるうちに電車が来た。
自転車用の車両の窓を覗くと、電車の中にはすでに無数の自転車が乗っていた。「ここはもう限界だよ」と中の人が言う。これはまずい。
このままベルリンまで自転車で帰るか……と一瞬考えたが、ベルリンまでおよそ70キロ。帰れない距離ではないが、ブランデンブルクの夜道は暗いし、蚊にも襲われる。
急いで隣の車両に向かうも、こちらも満杯。だがこの電車を逃したら次の電車は2時間後。選択肢はない。
なんとか強引に中に入れてもらい、4人とも無事に乗車できた。
自転車収納エリアは本来は何台用なのかは知らないが、明らかにキャパシティを超えていた。
さらに私たちが乗ることで通路を完全にふさいでしまったが、運よくベルリンまで乗り降りする人はいなかった。
帰りの電車で思った。来年はレンタカーで行こう。
夢のようなイカダの旅だったが、蚊の大群と電車のストレスで一気に現実に引き戻された。それでも来年もイカダに乗りにきたいと思った。
イカダのキャンプも楽しそうだが、私のようなひ弱な都会っ子にはデイレンタルがちょうどいいかもしれない。
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