特集 2018年5月24日

同窓会で昔話を禁止するとどうなるか

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高校時代の友人と2年に1度、なんとなく集まる機会がある。毎回昔話に花が咲くのだが、その帰り道にふと思う。「これ前回もまったく同じような話をしたのではないか」と。

同窓会なのであたりまえなのだが、2年ごとに同じイベントをループしている気がしてちょっと怖くなる時があるのだ。

ということで今回はあえて「昔話」を禁止してみる同窓会をやってみた。
1990年沖縄生まれ。営業日のお昼休みに(ほぼ)毎日更新する「今日の休憩」というブログを運営しています。

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今回のルール

早速だが今回の「昔話禁止同窓会」のルールを説明したい。
(1)2017年より過去の話を禁止する

(2)流行っていたもの、ニュースなどの話も禁止
要は「1年以内の話」と「未来の話」のみOKということだ。

さらに
(3)途中で昔話をしそうになったらカードに我慢した話題を書き、
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思い出BOXに入れる
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(4)1時間経ったら、BOXにたまったカードを1枚ずつ解放していき「あの時実は言いたかった話」の感想会をする
という 前半:未来編 後半:過去編 という2部作の同窓会である。果たして盛り上がるのか。

同級生を居酒屋に呼び出す

検証は高校時代クラスメイトだった3人にお願いした。
高校1年のクラスが同じだった砂川さん(左)、松村さん(中央)、平良さん(右)。
高校1年のクラスが同じだった砂川さん(左)、松村さん(中央)、平良さん(右)。
「久しぶり~」「元気だった?」と集まってくる。すでに誰かがもう「あの頃の担任のモノマネ」とかしそうな雰囲気だ。

今回はぐっとこらえてもらい、ルールを伝える。「同窓会って意外と近況ばっかりしゃべるよね」「緊張するけど、まあ大丈夫だろう」と余裕の表情だ。

前半(現在・未来編)開始

では同窓会スタートです。
まずは松村さん(新婚)の「最近生まれた子どもがまじでかわいい」というお話。
まずは松村さん(新婚)の「最近生まれた子どもがまじでかわいい」というお話。
100点満点すぎるTHE・現在の話題に「あ、これ余裕だぞ」と確信する一同。しかし
なんだか話を聞いている砂川さんがぼんやりしはじめた。しばらくして手元を見ると
なんだか話を聞いている砂川さんがぼんやりしはじめた。しばらくして手元を見ると
すぐに「昔話」カードになにか書いている。
すぐに「昔話」カードになにか書いている。
「2017年に産まれたわが子の話してたのになんで?」「さすがに早すぎないか」「どういう過去をいま思い出したんだ」と笑いが止まらなくなる2人。
「2017年に産まれたわが子の話してたのになんで?」「さすがに早すぎないか」「どういう過去をいま思い出したんだ」と笑いが止まらなくなる2人。
とかいう流れで松村さんも何か過去のことを思い出して書き込んでいる。
とかいう流れで松村さんも何か過去のことを思い出して書き込んでいる。
他人が何を書いているかわからない。ただこちらは近況を話しているだけなのに、さっとメモされると「私何か変なこと言った!?」と少し疑心暗鬼にもなる。
店員が持ってきた「出し巻きたまご」を見た瞬間書き込む平良さん。「たまごで思い出したの?」「なにを?」と時間が経つにつれて謎が増えていく。
店員が持ってきた「出し巻きたまご」を見た瞬間書き込む平良さん。「たまごで思い出したの?」「なにを?」と時間が経つにつれて謎が増えていく。
また「1年以内か未来の話」という制約があるからか、会話の入りがだんだん不自然になってきた。

「東京オリンピックといえば~」という落語の枕のような入りや、「そういえばみんな定時は何時から何時?」と質問したり、絶妙に浅い会話が続く。
とか人のことばっか言ってる私もめちゃくちゃカードを書いた。
とか人のことばっか言ってる私もめちゃくちゃカードを書いた。
ほいほい投函されていく思い出BOX。
ほいほい投函されていく思い出BOX。

そして昔話大解放タイムへ

会話が止まることはあったものの、話題は意外と尽きることがなく、すぐに1時間半がたった。

みな仕事、結婚、育児、それぞれでがんばっていることが思ったより理解できた。

過去の話をしていたら脱線していたかもしれない、現在の話に集中することができた結果だろう。なんだか清々しい!!!

ただ、昔話カードが29枚もBOXに入れられた。それぞれどんな話を我慢したのか、ランダムにめくり、答え合わせをしていく。
カードをシャッフルして
カードをシャッフルして
ヤマを作って1枚ずつめくっていきます。さて一枚目です。
ヤマを作って1枚ずつめくっていきます。さて一枚目です。
「この用紙 英単語帳を思い出す」
「この用紙 英単語帳を思い出す」
「わが子の話をしている時に、ふとカードをみて英単語帳を思い出した(松村さん)」。
一切話に出てこなかった「英単語帳」がいきなりでてきたおどろきと、1時間前、子どもの話の時にこっそり書いていたアレかと気づき笑ってしまう。
一切話に出てこなかった「英単語帳」がいきなりでてきたおどろきと、1時間前、子どもの話の時にこっそり書いていたアレかと気づき笑ってしまう。
松村さんはその時、派生で英語の授業(特徴的な先生だった)まで思い出したというが、話すのをぐっとこらえたという。

あの時、英単語帳の話に切り替わり、昔の英語の授業の話に切り替わっていたら……その後の子どもにまつわる話が聞けなかったかもしれない。1時間前の会話の分岐点がはっきりわかる。
つぎにめくったカード。平良さんが書いた「松村さんの職業ってなんだっけ…? かりゆしウェアを着るお仕事? 大学って地元だったっけ…」の文字。
つぎにめくったカード。平良さんが書いた「松村さんの職業ってなんだっけ…? かりゆしウェアを着るお仕事? 大学って地元だったっけ…」の文字。
「かりゆしウェア」とは松村さんがこの日来ていた沖縄系企業で許されているビジネスカジュアル服のことです。「なぜ東京にいるのにこの服…?」と思ったらしい。
「かりゆしウェア」とは松村さんがこの日来ていた沖縄系企業で許されているビジネスカジュアル服のことです。「なぜ東京にいるのにこの服…?」と思ったらしい。
「久しぶりすぎてそこからだったのか」「そんな状態で会話してたのか」という事実に気がつき笑ってしまう砂川さん。
「久しぶりすぎてそこからだったのか」「そんな状態で会話してたのか」という事実に気がつき笑ってしまう砂川さん。
実はこの二人、まともに話すのが8年ぶりぐらいだったという。なのにいきなり過去の話を禁止されたのだ。「近況はわかったけど経緯がわからなさすぎてつらかった」とのこと。
実はこの二人、まともに話すのが8年ぶりぐらいだったという。なのにいきなり過去の話を禁止されたのだ。「近況はわかったけど経緯がわからなさすぎてつらかった」とのこと。
思い出せば思い出すほど、この二人ぎこちない会話をしていた気がして面白い。ほぼ初対面ぐらいの会話の浅さだった。だんだん申し訳なくなってきた。

「そういえば卵を見てなにか書いていた」と平良さんの行動をみんなが思い出す。めくっていくと、その時のカードが出てきた。
「えりか(砂川)のお弁当、いつも玉子焼き入ってたね!」
「えりか(砂川)のお弁当、いつも玉子焼き入ってたね!」
「そんなこと思い出していたのか」と照れてしまった砂川さん。
「そんなこと思い出していたのか」と照れてしまった砂川さん。
高校時代、平良さんと砂川さんは毎日二人でお弁当を食べていたことをわたしたちは知っている。そのことを「卵をみてふと思い出した」と平良さんは言った。
全員の「懐かしダム」決壊の瞬間である。
全員の「懐かしダム」決壊の瞬間である。
「こんな居酒屋の卵で思い出したんだ」とじわじわくる。
「こんな居酒屋の卵で思い出したんだ」とじわじわくる。
本当は昔話をしたいのに我慢していた分と、さっきの会話中に実はこうおもっていたという伏線回収のような快感がおしよせてくる。ああ懐かしいああ懐かしいという感じでだいぶわけがわからなくなってきた。
「そういえば嫁って何中だっけ」など、途中で聞きたかったちいさい質問もざくざくでてくる。このカードをきっかけにどんどん話してもりあがる。
「そういえば嫁って何中だっけ」など、途中で聞きたかったちいさい質問もざくざくでてくる。このカードをきっかけにどんどん話してもりあがる。
また、同窓会が終わった後に感じていた「また同じ話してしまった…」という感情、あの不快感がほとんどない。普通の会話から思いついた話題を紙に書いて、あとから見返すというステップがあることで「いつも話すお決まりの話」になりにくかった。

勢いがましていき、昔話に花が咲くどころか大爆発ぐらい盛り上がる。初めての体験だ。

どうやら新しい同窓会の形式をうみだしてしまった……そのぐらいおもしろかった。

カードも最後の1枚になった。名残惜しくめくってみると
「高校卒業から10年か…」
「高校卒業から10年か…」
仕込みのような終わりにふさわしいカードを見て、心のなにかがちぎれた松村さん。「俺たちは過去からできてるんだ」「むかしがいまの俺を作っている」とふだん言わないことを言い出した。少しこわかった。
仕込みのような終わりにふさわしいカードを見て、心のなにかがちぎれた松村さん。「俺たちは過去からできてるんだ」「むかしがいまの俺を作っている」とふだん言わないことを言い出した。少しこわかった。
これにて「昔話禁止同窓会(ただし後半解放)」は終了である。

「昔の話」も工夫次第だった

今回、過去の話を禁止することであらためてわかったメリットは
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・前半、近況や未来に制限すると話すことが増え、新たな一面を知れる

・後半、昔話をためてランダムにめくるという行為が、だらだら話すよりおもしろい

・「あの時こう考えてたんだ」と伏線回収的な快感が続いてたのしい

・同じメンバーで集まるとよくおこる「また同じ話してるな‥」という手グセのような会話が減り、満足感が高い
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である。特に後半は、ずっと驚きの連続だった。ぜひみなさんもやってみてください。
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