「欲しい」って、なんだろう
その先達とは、高橋晋平氏。皆さんもご存知、あの「∞(むげん)プチプチ」や「∞(むげん)エダマメ」など、爆発的ヒット商品の開発に携わった奇才である。
私はひょんなことから高橋氏とお知り合いになり、昨年、共同でカードゲーム(「民芸スタジアム」というステキなゲームです)を開発するに至った仲だ。
3年前にバンダイから独立し、その後初の著書となる「一生仕事で困らない企画のメモ技(テク)」(あさ出版)をこのほど刊行された。日頃から、氏の頭の中はいったいどうなっているんだろうと思っていたので、これはいい機会。そのテクの一部を披露してもらい、あまつさえ私のスランプ脱出をはかろうと思ったのである。
高橋氏と乙幡氏と、手には著書。場所は渋谷。
本著には「企画をどんどん生み出せる」「1時間で100のアイデアが出せる」という超パワーな御ワードが散見されて、いやがおうにもオラ、ワクワクしてきたが、さて実際どんな風にそれを見せてもらおうか。
ということで、連れ立って「欲求」を探す取材をすることとした。意識の高いウィンドウショッピングみたいなものである。行く先は、消費のメッカのひとつ、渋谷だ。
これからどう進むか全然読めない「欲しい」を見つける旅、スタート。
寿司屋のメニュー垂れ幕の前でおもむろに立ち止まる。
ツメと、勢揃い寿司が欲求をくすぐる。
ここで高橋氏、すかさず自分のメモアプリにメモ。こうしてどんどん素地のネタを貯めに貯めていくのだ。
なるほど、と思ったらスマホにメモ!
ゲーセンの前にさしかかった。ガチャガチャコーナー、プリクラなど並んでいる。まさに物だらけ。ここは立ち入ってみよう。
すごく鮮度の悪そうなアジが出て来た。
大笑い。これもひとつの幸せなマーケットの形か。
手順が書いてあっても上ずってしまい、制限時間にあたふたする30代と40代。
詳細は省くが、出力までにいろいろな場所に移動させられ加工を促される最新の装置に取材陣は大興奮。周囲の学生も引いていたのではないだろうか。
・・・加工済みの自撮りをUPする気持ち、わからんでもないな・・・
手探りの「欲しい」を探す旅は続く
まだ決定的な自分の「欲しい」がよくわからない。そんな中、有名雑貨店に入る。若い頃は頻繁に来ていた店なので、ラインナップも客層も若い。そんな場所でも、我々はまだ欲求を喚起されるだろうか。
本体の中からツイーッとスライドして出て来た!
店内を巡ると、今大人気の、スマホ充電コードの付け根部分を断線させないためのマスコット(「ケーブルバイト」)の棚がそびえていた。
私は生来ボンヤリもんだから、ケーブルが壊れたらガムテ巻いたりしてやり過ごしちゃうかも。
このとき実はプリクラショックで、放心状態を引きずっていた。
でもこうやって歩いていても、欲しい何かがなかなか見つからない・・・難航してます。
自分の欲求がようやく見えてきたところで、こんな時計を見つけ、また盛り上がる。
本をめくることで時を刻む、シンプルながら凝った映像の時計。
わざわざ待って、連写でGET。
ここで、制限時間いっぱいとなった。街をそぞろ歩いてはしゃいだだけになってやしないか不安だが、自分の欲求を見つけられているだろうか。カフェに移動して振り返ってみたい。
今日の「欲しい」をまとめます
欲望を喚起されたものとは。
操作で一悶着。
この直後、垂れ幕の向こうから人が出て来てものすごくびっくりした。
高橋メモ「水もらわず」のお守り例。なんだそれは。
飲む話で盛り上がる。
欲を見つめた、今日1日の成果リスト
さて私の欲求ポイントですが、書き出すとこのようになった(今まで言及してないもの含む)。
・プリクラ(違う自分になる)
・キャンプ用品(おままごと的感覚から)
・DJかVJになりたい、落語をやってみたい(人前で技を見せたい、なりきりたい)
・ミニマルな部屋(片付けのスッキリ感)
・本(めくる快感)
・薄い食べ物(噛むことの快感、携帯具合)
うーん、これが私の欲求の正体か。服くらいしかない、なんて大嘘だった。
ここから、ちょっと記事ネタ商品ネタ問わず、自由に考えてみた。何にもとらわれないように・・・グルグルグルグル・・・
・おままごとサイズのキャンプ用品(めったにキャンプにいけないので、ひっそりベランダでやるための。あと、普通サイズのしっかりしたものが小さめになるだけで愛おしい)
・文豪や政治家など昔風に撮れるプリクラ、昔の女優風プリクラ(昔のポートレイトって妙に美しいので、そういう方向もアリか)
・ゴーストDJサービス(ゴーストライター的な。自分はブース前に立ってアジるだけ。実際に回すのはゴーストDJ)
・カード式おつまみ(いつでもサッと取り出せて、収納しやすい)
・部屋片付けゲーム(ごちゃっとしたものを収納しまくる快感のみを追う)
・映画プリクラ(エイリアンなら、宇宙船内のような装置に入って、主人公になって名場面を撮れる)
・・・
どうでしょう。
自分の中だけでネタ探しするより、ずっと自由に考えられる気がする。思ってもいない方向に発想を持っていける気もしてきた。
とりあえずは「薄い本(つまみ)の会」を実現させる方向で、動くことにします。
とにかく、自分の中の欲求に気づくこと。そこから出たアイデアは、少なくとも自分は「欲しい」わけで、「誰が欲しがるかわからないアイデア」ではないからその点で不安はなくなる。自分と似た嗜好の人は世の中に必ずいるのである。
【お知らせ】
その後も「とにかく100個ネタを作る」など膨大なコツがやさしく書かれている本なので、ご興味持たれたら買って実践してみることをおすすめします。高橋さん、ありがとうございました!これからザクザク企画作ります!
一生仕事で困らない企画のメモ技(テク) あさ出版