特集 2018年3月21日

企画の達人に、ザクザク企画を出せるコツを聞いた

これも今回のフィールドワークの一環です
これも今回のフィールドワークの一環です
最近、ネタに詰まっている気がする。記事のネタ、商品の企画。たまにいいアイデアも出たりするが、「女心と秋の空と私のネタ出し」ってくらい起伏があって不安定なのである。

ここはひとつ、先達にアイデアの出し方を教わるなど、してみたほうがいいんじゃないだろうか。というわけで実際に街に出て、アイデアが出るその瞬間に立ち会いつつ、自分も鍛え直してみたいと思う。アイデア武者修行だ!
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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「欲しい」って、なんだろう

その先達とは、高橋晋平氏。皆さんもご存知、あの「∞(むげん)プチプチ」や「∞(むげん)エダマメ」など、爆発的ヒット商品の開発に携わった奇才である。

私はひょんなことから高橋氏とお知り合いになり、昨年、共同でカードゲーム(「民芸スタジアム」というステキなゲームです)を開発するに至った仲だ。

3年前にバンダイから独立し、その後初の著書となる「一生仕事で困らない企画のメモ技(テク)」(あさ出版)をこのほど刊行された。日頃から、氏の頭の中はいったいどうなっているんだろうと思っていたので、これはいい機会。そのテクの一部を披露してもらい、あまつさえ私のスランプ脱出をはかろうと思ったのである。
高橋氏と乙幡氏と、手には著書。場所は渋谷。
高橋氏と乙幡氏と、手には著書。場所は渋谷。
本著には「企画をどんどん生み出せる」「1時間で100のアイデアが出せる」という超パワーな御ワードが散見されて、いやがおうにもオラ、ワクワクしてきたが、さて実際どんな風にそれを見せてもらおうか。
事前に本を読んできたのですが、「新しい、変わっている、面白そうだというだけで企画を考えてはいけない、自分が欲しいかどうかだけ考えろ」とあって、ガガーンとなりまして。ここにまず付箋を貼りました私。まさに私が「新しい、変わっている、面白そうだというだけで企画を考え」がちなんですよ。
その「欲しい」という気持ちを見つけるのが第一歩なんです。
「欲しい」か~。自分の欲しいもの、って何だろう?
そこを、フィールドワークで一緒に見つけに行きましょう。欲しいと思った物事をどんどんメモしていく感じで。
ということで、連れ立って「欲求」を探す取材をすることとした。意識の高いウィンドウショッピングみたいなものである。行く先は、消費のメッカのひとつ、渋谷だ。
これからどう進むか全然読めない「欲しい」を見つける旅、スタート。
これからどう進むか全然読めない「欲しい」を見つける旅、スタート。
欲しいものを見つける、って普段やってるはずなんですが、いざこうやって考えてみると、私って物欲ないんですよね・・・服くらいしか。これって、企画考える仕事には致命的な気がする。
僕も、本当は「家族が無事健康に暮らせる毎日」さえあればいいのかも。でも「~したい」っていう気持ちは何かしら持っているわけで、ネタ探しはその気持ちにフォーカスしていけば見つかるはずですよ。
寿司屋のメニュー垂れ幕の前でおもむろに立ち止まる。
寿司屋のメニュー垂れ幕の前でおもむろに立ち止まる。
・・・。
・・・これ美味しそう、って思う寿司の写真って何でしょうね。ちなみに私は「シャリが小さいと美味しそう」って思います。
(貝の軍艦巻きを指差し)僕はこのツメ(=たれ)に弱いです。シズル感があるからかな。あと、勢揃いする写真とかワクワクします。
ツメと、勢揃い寿司が欲求をくすぐる。
ツメと、勢揃い寿司が欲求をくすぐる。
でも、全部好きなものばかりだと、魅力が減るんですよ。どうでもいいネタが入っていると、とたんに光り輝く。
音楽のアルバム作りなども、前に似たような話を聞いたことがあります。全部いい曲にすると、いい曲がいい曲に聞こえないからワザと「そんなでもない」曲を挟むって。
ベスト盤には惹かれるんだけど、そうではない通常のアルバムのほうが自分のお気に入りになってたりしますね
自分が掘り出したって気分になれると、いいのかな。
ここで高橋氏、すかさず自分のメモアプリにメモ。こうしてどんどん素地のネタを貯めに貯めていくのだ。
なるほど、と思ったらスマホにメモ!
なるほど、と思ったらスマホにメモ!
ゲーセンの前にさしかかった。ガチャガチャコーナー、プリクラなど並んでいる。まさに物だらけ。ここは立ち入ってみよう。
ギミックがやはり気になるんですよ、この光るのとか(丸くて光る動物マスコットを指差し)どうなってんだ、とか。
さすが、∞プチプチの生みの親。
このスクイーズ系(プニプニもちもちした手触りを楽しむ)マスコットの柔らかさも、これ手にしたらどんな感じなんだろうとか、確かめるために買いたくなりますね。想像の範疇のは惹かれないかな。もうダマされてもいいから、手にとってみたい
結局みんな、ファンタジーにお金を払ってるんですね。
・・・(あるガチャに目を止め)この寿司のスクイーズ系マスコット、めちゃくちゃハズレな可能性が・・・そういうのつかまされたのも武勇伝として語りたい、って欲望はあるな。買ってみますか!
そういうこともあるのね!
すごく鮮度の悪そうなアジが出て来た。
すごく鮮度の悪そうなアジが出て来た。
・・・すげえ!想像を越えた!想像を絶する気持ち悪さ!
しかもなんか手触りが、ぺッタペッタする。
小さい子が家にいるんで持って帰りたくない、でもこれ“あたり”だわ!
ぜひ家人に見せたいのでください!なんか欲しいのか欲しくないのかわからないけど興奮する!
大笑い。これもひとつの幸せなマーケットの形か。
大笑い。これもひとつの幸せなマーケットの形か。
やがて、店内のプリクラに目をつけてしまう我々。
プリクラ!自分もだけど、乙幡さんにもやらせたいという欲求を感じました。ので入りましょう!
久々すぎる・・・。しかも今時の「盛れる」やつは初めてだ。興奮して来たな。
手順が書いてあっても上ずってしまい、制限時間にあたふたする30代と40代。
手順が書いてあっても上ずってしまい、制限時間にあたふたする30代と40代。
詳細は省くが、出力までにいろいろな場所に移動させられ加工を促される最新の装置に取材陣は大興奮。周囲の学生も引いていたのではないだろうか。
・・・加工済みの自撮りをUPする気持ち、わからんでもないな・・・
・・・加工済みの自撮りをUPする気持ち、わからんでもないな・・・

手探りの「欲しい」を探す旅は続く

まだ決定的な自分の「欲しい」がよくわからない。そんな中、有名雑貨店に入る。若い頃は頻繁に来ていた店なので、ラインナップも客層も若い。そんな場所でも、我々はまだ欲求を喚起されるだろうか。
小さい体重計か・・・そういえば欲しいな!体重計ってけっこう邪魔じゃないですか。これくらい小さければ欲しいかも。あれ、体重表示部ってどこだ?(サンプルに乗れるとのことで乗ってみると)乗ったら出てきた!
本体の中からツイーッとスライドして出て来た!
本体の中からツイーッとスライドして出て来た!
(一同、ものすごく驚く)
体重測りたい欲ないのに みたらこれ欲しくなっちゃって。欲しくないのに買っちゃう。世の中はそれで成り立ってるよな・・・(なぜか感慨深げに)
身内じゃない人とこういうとこに来ると、発見が多いですね。あ、こんなのもある(人形型のブラシを手に取る)
・・・こういうのは面白いと思うけど、「自分が」欲しくなかったら僕はメモしないようにしてます。余計な情報は入れない。変な方向にブレてしまいますから。
うーん、なるほど!私、なんでもかんでもメモしてて、確かに後から見返して、よくわからないことになってたかも。
店内を巡ると、今大人気の、スマホ充電コードの付け根部分を断線させないためのマスコット(「ケーブルバイト」)の棚がそびえていた。
この、種類の多さ!マニアックな動物のラインナップ!今までいらなかったのに、欲しい!
いやー、あの部分が壊れやすいのは確かなんだけど、そこにうまく動物を組み合わせて、すごい商品ですよね。
私は生来ボンヤリもんだから、ケーブルが壊れたらガムテ巻いたりしてやり過ごしちゃうかも。
人間としてはそうありたいんですけどね。細かいことは気にせず、不便なままでもいいじゃないかと思うんだけど。企画業としてはそれはNGですからね。
ですよね・・・
このとき実はプリクラショックで、放心状態を引きずっていた。
このとき実はプリクラショックで、放心状態を引きずっていた。
そういえば高橋さんは新入社員時代、仕事で膨大な数のネタを出してこられたんですよね。失敗や成功を繰り返して身につけたやり方、説得力があると思いました。
欲しいか欲しくないかで考える前は、バズるとか新しいとか、そういう基準で考えていたんですよ。
私、今がそうです。
欲しくもないのに仕事を引き受けるのはありえない。例えば女性の化粧品の話が来たとしても、身内に勧められるものを考えるとかするわけですね。お金を払ってでも自分が買いたいか、など「自分ごと」にしていくようにしたんです。
面白ければ誰かが買うだろう、って思って企画しちゃう。そうなると、売れる根拠を無理して探すことになってしまう。多々経験あります。
でもこうやって歩いていても、欲しい何かがなかなか見つからない・・・難航してます。
例えば、看板とかにも欲求のヒントがありますよ。あそこに楽器店の看板がある。僕は死ぬ前に一度バンドをやってみたいという欲求があります。
それならたくさんある!VJかDJになりたい!音楽一切聴かないけど!あと落語やってみたい!
音楽聴かないのに、DJ?!
10年前からDJの夢はあった(「カッコだけでもDJになってみたかった」より)
10年前からDJの夢はあった(「カッコだけでもDJになってみたかった」より)
自分の欲求がようやく見えてきたところで、こんな時計を見つけ、また盛り上がる。
本をめくることで時を刻む、シンプルながら凝った映像の時計。
本をめくることで時を刻む、シンプルながら凝った映像の時計。
めくる時計!本って、めくることに“萌え”ポイントありますよね。ずっと見ちゃうな、これ。切れ目が見たい!時間変わる時に3本手が出て来るんですね。全部17になった瞬間を見たいですね。
わざわざ待って、連写でGET。
わざわざ待って、連写でGET。
寿命はこうしているうちにも減ってるんですよ・・・待ってても意味ないのになぜ待っちゃうんだろう。でもその価値はある。ゾロ目を待つってあるよな・・・(メモ)
ここで、制限時間いっぱいとなった。街をそぞろ歩いてはしゃいだだけになってやしないか不安だが、自分の欲求を見つけられているだろうか。カフェに移動して振り返ってみたい。

今日の「欲しい」をまとめます

欲望を喚起されたものとは。
欲望を喚起されたものとは。
今日見た中で「欲しい」と思った事物を振り返って、なぜ欲しいのか、どうなったらもっと欲しいかとか、まとめてみましょう。
【プリクラ】
物の洪水で最初は気後れしましたが、プリクラの興奮で何かがふっ切れました。
逆プリクラってありですか?かっこいい人もやさぐれた感じに、とか。またはあんなに盛る時間があるならもっと完璧に、僕ならがっちり肉を盛るとか、体型イケメンに盛るとかできないか。
操作で一悶着。
操作で一悶着。
それと、インターフェイスがちょっとわかりにくいんで、おっさんモードつけて欲しい。
「らくらくフォン」みたいな。
らくらくプリクラ(笑) あ、これ回文みたいになるかも!らくぷりくら、みたいに。これ企画を持ち込めるかも?!だって我々がやってこんなに楽しいんだから
【寿司】
この直後、垂れ幕の向こうから人が出て来てものすごくびっくりした。
この直後、垂れ幕の向こうから人が出て来てものすごくびっくりした。
寿司に戻りますが、アルバム理論ありましたね。全部が良いと逆に魅力が減るという。
僕、「お守り」に寿司理論つかえないかなと。超ロクでもない願いのお守りもあったほうが逆に欲しくなるような。“足の爪切り忘れない”とかすごく狭い願い。膨大な種類のお守りあったら売れるのではと。
水を買った直後に、水をもらいませんようにとか。
なにそれ。
イベントとかで登壇するとき、買った直後に控え室に用意されてたりしがちなんですが、それを避けられる。「水もらわず」みたいなお守り(笑)
イベント出演経験者限定ですな。
これはけっこう売れるか?これが売れないとしても、これじゃないまともなのが売れていくか。
両思いになれますように、とかまともなのが。
まあ普通、そっちが売れますよね。同じ値段出すなら。
高橋メモ「水もらわず」のお守り例。なんだそれは。
高橋メモ「水もらわず」のお守り例。なんだそれは。
【映像時計】
さっきの時計。「めくること」に萌えがあるかもですね。
本ってやっぱり魅力ありますよね。パラ見するときとか、偶然の出会いがある。
残りのページ数が減ってく感じもわかるのでそれもいい。本じゃないものを本にする、ってありかな。これがもし海苔だったら、ふりかけだったらとか。味が違うガムとか。本型のふりかけ集とか、お土産にいい。
シート状食べ物の本!それめちゃくちゃいいですね。私、薄い食べ物が大好きなんですよ。何年も前からそれで宴会をやる夢があります。
作ったおばあちゃんの初恋の話とかページに書いてあったり。たたみいわしのページはDHAたっぷりだから、「読まなくても頭がよくなる本」だ!
魚シートをあぶって、ちびちび飲むとか。本をめくりながらっていう妙な宴会になるな。今度それやりましょう!
飲む話で盛り上がる。
飲む話で盛り上がる。
本方式、財布とかでも成立するかな。無駄使いしないために宮沢賢治の詩とか書いてある財布。
破滅に向かう作品とかね。
「人間失格財布」
「恥の多い生涯を送って来ました」って札入れの内側に書いてある。

ってこれ、普通に企画会議ですね(笑)
まあ、「欲しい」ところから始めるっていうトレーニングですかね。こうして検討していくと、最終的には欲しくなくなることもあるけど、欲しいかどうかチェックしながら練っていければいいんです。今日はこんな感じですかね、僕の企画術。
ネタ出しの段階では、まずは自分の欲求と向き合うってことですね。少しづつでも、やっていけそうな気がして来ました。自分の欲求ネタ、持ち帰ってさらに検討してみます!

欲を見つめた、今日1日の成果リスト

さて私の欲求ポイントですが、書き出すとこのようになった(今まで言及してないもの含む)。
・プリクラ(違う自分になる)
・キャンプ用品(おままごと的感覚から)
・DJかVJになりたい、落語をやってみたい(人前で技を見せたい、なりきりたい)
・ミニマルな部屋(片付けのスッキリ感)
・本(めくる快感)
・薄い食べ物(噛むことの快感、携帯具合)
うーん、これが私の欲求の正体か。服くらいしかない、なんて大嘘だった。

ここから、ちょっと記事ネタ商品ネタ問わず、自由に考えてみた。何にもとらわれないように・・・グルグルグルグル・・・
・おままごとサイズのキャンプ用品(めったにキャンプにいけないので、ひっそりベランダでやるための。あと、普通サイズのしっかりしたものが小さめになるだけで愛おしい)

・文豪や政治家など昔風に撮れるプリクラ、昔の女優風プリクラ(昔のポートレイトって妙に美しいので、そういう方向もアリか)
!
・ゴーストDJサービス(ゴーストライター的な。自分はブース前に立ってアジるだけ。実際に回すのはゴーストDJ)
!
・カード式おつまみ(いつでもサッと取り出せて、収納しやすい)

・部屋片付けゲーム(ごちゃっとしたものを収納しまくる快感のみを追う)

・映画プリクラ(エイリアンなら、宇宙船内のような装置に入って、主人公になって名場面を撮れる)

・・・
どうでしょう。
自分の中だけでネタ探しするより、ずっと自由に考えられる気がする。思ってもいない方向に発想を持っていける気もしてきた。

とりあえずは「薄い本(つまみ)の会」を実現させる方向で、動くことにします。

とにかく、自分の中の欲求に気づくこと。そこから出たアイデアは、少なくとも自分は「欲しい」わけで、「誰が欲しがるかわからないアイデア」ではないからその点で不安はなくなる。自分と似た嗜好の人は世の中に必ずいるのである。

【お知らせ】

その後も「とにかく100個ネタを作る」など膨大なコツがやさしく書かれている本なので、ご興味持たれたら買って実践してみることをおすすめします。高橋さん、ありがとうございました!これからザクザク企画作ります!

一生仕事で困らない企画のメモ技(テク) あさ出版

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