特集 2018年2月1日

似た顔をプロが描くとどこで特徴をだすのか?→プロの技術はすごかった

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僕は友人に「大学に5000人はいる顔」と言われたことがある。『眼鏡』『前髪横流し』『痩せ型』という汎用タイプは大学にたくさんいるらしく、「量産型のザクよりも多い」と指摘された。

そのタイプは確かに僕も多いと思っていて街を歩いても「自分に似ている人がいるな…」と思うことが多々ある。今回はそんな痩せ型メガネ族の人を集めて、プロに似顔絵を描いてもらったら一体どこを特徴にして違いをだすのか、実際に描いてもらうことにした。

描いてもらってわかったのは、プロの技術力を目の当たりにすると語彙が溶けて「すごーい!君は絵が得意なフレンズなんだね!」としか感想が言えなくなるということだ。
大学中退→ニート→ママチャリ日本一周→webプログラマという経歴で、趣味でブログをやっていたら「おもしろ記事大賞」で賞をいただき、デイリーポータルZで記事を書かせてもらえるようになりました。嫌いな食べ物はプラスチック。

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似顔絵の世界チャンピオンに絵を描いてもらう

今回はデイリーポータルZの編集部から石川さんと藤原さんについて来てもらった。編集部が誇る歴戦の眼鏡だ。

冒頭で言ったように「眼鏡」「痩せ型」「前髪たらし」というインドアタイプが3人揃った。3本の矢は簡単に折れないが、3本の眼鏡だとヤンキーにワンパンでやられそうだ。この3人でゲームセンターには絶対に行かない方がいいだろう。

最初はこの同じ部類にいる3人の似顔絵を描いてもらって、顔のどこに特徴を出すのか見ていきたいと思う。あとでもっと難問も用意してあるのだが、まずは小手調べだ。
今回は原宿にあるカリカチュア・ジャパンというお店で似顔絵を描いてもらう
今回は原宿にあるカリカチュア・ジャパンというお店で似顔絵を描いてもらう
店内には様々な似顔絵が展示されていて、思わず見入ってしまう
店内には様々な似顔絵が展示されていて、思わず見入ってしまう
結婚式や卒業、会社を辞めるときのお祝いなど様座な用途で使われているようだ
結婚式や卒業、会社を辞めるときのお祝いなど様座な用途で使われているようだ
めちゃくちゃ似ている…!
めちゃくちゃ似ている…!
カリカチュア・ジャパンは東京だけでなく、大阪や京都、九州にまで全国展開している似顔絵を専門としているお店だ。

『カリカチュア』とは直訳すると『戯画』『漫画』『風刺画』という意味があり、人物画をわざと誇張して書く手法だ。日本で似顔絵と言えばその人に似せて描くのが基本だが、アメリカやヨーロッパではカリカチュアの方が主流のスタイルだそうだ。
今回僕らの似顔絵を描いてくれる本間さん
今回僕らの似顔絵を描いてくれる本間さん
しかもなんと今回は、カリカチュアの世界大会でも優勝経験がある実力者の本間さんに描いてもらえることになった。

つまり『カリカチュアという手法』と『世界チャンピオン』という両方の条件が揃った、「似ているタイプの人を描く場合は特徴をどう出すのか?」という疑問を解決するためにはピッタリなお店なのである。
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なお今回は眼鏡で特徴を出されるのを避けるため、同じ黒縁眼鏡をかけてそれぞれイラストを描いてもらうことにした。3人が合体すると1本の最強の黒縁眼鏡になるというドラゴンボールのフュージョン的な図ではない。

似顔絵を描くコツは「人の顔を見すぎない」

早速描いてもらい始めたのだけれど、これが予想以上に緊張する。どんな顔をしていいのかわからない。
早速描いてもらい始めたのだけれど、これが予想以上に緊張する。どんな顔をしていいのかわからない。
石川さんはずっとはにかんでいた。
石川さんはずっとはにかんでいた。
藤原さんは一切微動だにしなかった。アイアンハート藤原。
藤原さんは一切微動だにしなかった。アイアンハート藤原。
席に座って一人ずつ絵を描いてもらったのだけれど、初めて似顔絵を描いてもらうので緊張した。本間さんの視線も感じるし、どういう顔をしていたら良いのかわからないのだ。それにプラスして「自分が描かれている」と考えると、むず痒い妙な感覚になるのだ。

あとどうでもいいことだが、写真を見返すとファンシーな赤いイスがなんとも似合わない3人だな…。
じっくり描く人を観察するのかと思いきや、本間さんは作業にすぐとりかかっていた
じっくり描く人を観察するのかと思いきや、本間さんは作業にすぐとりかかっていた
目を疑ったのはそのスピードだ。一瞬僕らを見ただけですぐに下書きを描き始めた。1分くらいで下書きはすぐに仕上げていく。どんどんと輪郭が浮かび上がってきて驚いた。

なんでそんなに早く描けるのか本間さんに聞いてみると、

本間さん「お店に入って来た瞬間にだいたいお顔を見させていただいて、どんな絵にするか頭の中ですぐにイメージしています。お顔を見て描くというより、自分のイメージしたものを紙にそのまま描いていますね」

ということだった。美術系の学校で習うデッサンの技法とはまったく違うらしく、『見たものをそのまま描く』というわけではないとのことだ。あと『顔』のことを『お顔』と言っているところに、プロのホスピタリティを感じた。
写真だとわかりづらいが、下書きの時点でかなり似ているのだ。
写真だとわかりづらいが、下書きの時点でかなり似ているのだ。
だんだんと同僚の似ている絵が浮かび上がってきて、石川さんも思わず声を出して笑っていた。
だんだんと同僚の似ている絵が浮かび上がってきて、石川さんも思わず声を出して笑っていた。
本間さんに似ている絵を描くコツを聴いてみると、「あんまりお顔を見すぎないようにすることですね」という答えが返ってきたので驚いた。

本間さん「あまりお顔を見すぎると、逆に特徴のない絵になってしまうんですよ」

人の顔を見すぎてしまうとただの模写になってしまい、誰を描いても似ている絵になってしまうらしい。なので、最初に見たときの印象を大事にして、それをそのまま頭に残しておくのだ。相当な想像力と洞察力がないと出来ない芸当だ。
似顔絵に使用されているのは『アートスティック』という道具。色鉛筆の芯だけのようなものらしい。日本では販売されていないので、アメリカから取り寄せているとのこと。
似顔絵に使用されているのは『アートスティック』という道具。色鉛筆の芯だけのようなものらしい。日本では販売されていないので、アメリカから取り寄せているとのこと。
芸能人はキャラが出ているので描きやすいと言っていたが、どれも本当によく似ている
芸能人はキャラが出ているので描きやすいと言っていたが、どれも本当によく似ている
似顔絵の中でも描きやすいのは特に芸人とスポーツ選らしい。芸人はキャラが出ているので絵のイメージが湧きやすく、スポーツ選手は顔の骨格や筋肉が運動によって発達しているのでに特徴がでやすいとのことだ。なるほど、運動している人が若く見えるというのは、筋肉の発達なのかもしれないなと思った。

逆に整っている顔は特徴をだしにくく描きづらいとのことで、本間さん的には「広末涼子さんが一番難しい」とのことだ。たしかに「広末涼子の顔がどんなか説明して」と言われるとパッと言葉に出てこないかもしれない。顔のバランスが最高なのだ。広末涼子 is God.
本間さんは常に僕らと話しながら作業していたが、集中力が途切れて手が止まることは一切なかった
本間さんは常に僕らと話しながら作業していたが、集中力が途切れて手が止まることは一切なかった
本間さんはもともと絵の学校ではなくデザイン系の学校に通っており、カリカチュア・ジャパンに入社してから似顔絵を学び始めた。そしてそこから勉強を重ねて世界チャンピオンまでたどり着いたというから驚きだ。

しゃべりながらやるのはお客さんのリラックスした顔を引き出すためだが、やはり最初の頃は絵に集中してしまい上手くできなかったらしい。絵を描くだけでも相当集中力がいるのに名人芸だよなぁ…!


本間さんに色々と聞いているうちに絵はあっという間に完成していた。だいたい1人あたり10分ほどしかかかっていない。早すぎる!!

それぞれの似顔絵が完成

まずは僕から。
まずは僕から。
めちゃくちゃ似ている…!!!!!
めちゃくちゃ似ている…!!!!!
似すぎていて、見た瞬間にお店の天井を突き抜けるくらい大声で笑った。
似すぎていて、見た瞬間にお店の天井を突き抜けるくらい大声で笑った。
次は石川さん
次は石川さん
似すぎだ…!!!
似すぎだ…!!!
石川さん自身も「自分だ…!」と言いながらずっと笑っていた
石川さん自身も「自分だ…!」と言いながらずっと笑っていた
最後は藤原さん
最後は藤原さん
藤原さんだ!!!!
藤原さんだ!!!!
似顔絵のプロに描いてもらったから当たり前なのだけれど、見た瞬間に似すぎて笑ってしまった。「似すぎて気持ち悪い」というセリフを思わず漏らしてしまうくらいだ。目の大きさや位置、口元の感じ、髪型、顔の長さ…などなど見ればみるほど特徴を捉えている。

誰の絵を見ても笑いが止まらない。人はなぜ似ているものを見ると笑ってしまうのだろうか? お店に来たお客さんも絵を見せるとほとんどの人が爆笑するらしい。

ただ、藤原さんだけは絵を見たときの反応が違っておもしろかった。
「……」
「……」
「お母さんに似ていますね」
「お母さんに似ていますね」

それぞれの特徴を聞いてみる

並べるとまったく違うことがわかる
並べるとまったく違うことがわかる
似顔絵のプロに描いてもらっているのだから、似ているというのは前提なのだろうけど、まさかここまで似ているとは思わかなかった。そして「似ているタイプはどこで特徴をだすのか?」という疑問を解決にしに来たのだが、絵を見るとそれは明白であった。

念のために、本間さんにそれぞれどこに特徴を出したのかも聞いてみた。ちなみに顔的には僕が一番描きやすいらしい。
■megaya
・顔のタイプは「細長」
・目と目の距離が近い
・鼻筋が特徴的
■石川
・顔のタイプは「三角」
・笑ったときが特徴的だったので笑顔にした
・目尻が下がる感じをだした
・唇が薄い
■藤原
・顔のタイプは「四角」
・仕草などもカチッとしている雰囲気だったので堅めの絵にした
・唇の端が下がっているのも印象的
・顔の形がわかるように真正面を向いている絵にした
絵にしてもらうと「あ、石川さんってこういう顔だ!」「藤原さんってこういう特徴があるのか…」ということに改めて気づくが多い。普段からあまり人の顔のパーツを意識して見てないのだろう。というか「石川さんって唇薄いんだな…」とか考えながらいつも会話していたら怖いけどね。
「どう特徴を捉えるのか?」と疑問に思っていたのだが、それぞれ特徴しか出ていない
「どう特徴を捉えるのか?」と疑問に思っていたのだが、それぞれ特徴しか出ていない
やはりプロは恐ろしい技術を持っている。ただただ似せているだけでなく、「仕草や表情なども観察してお顔のイメージを決めています」と本間さんが言うように、絵にその人の雰囲気が出ているのだ。

やはり、『眼鏡』『痩せ型』『前髪たらし』という共通点だけでは、似顔絵にかなりの違いが出ることがわかった。

しかし、これだけで終わりではない。

もっと似ている人間は描きわけることができるのだろうか?本間さんにさらに難しい絵を描いてもらうことにした。

激似の兄弟を描きわけてもらう

ということで今度は僕の激似の兄弟を描き分けてもらうことにした。これは難易度が高いはずだ。
ということで今度は僕の激似の兄弟を描き分けてもらうことにした。これは難易度が高いはずだ。
さすがの本間さんも「服装などを似せてきている部分もあるのでちょっと難しいですね…」と困惑していた
さすがの本間さんも「服装などを似せてきている部分もあるのでちょっと難しいですね…」と困惑していた
やはり先ほどより一気に難易度があがったようだ。僕と兄は特に似ていて、洋服屋などのお店に二人で行くと「あれ?双子ですか?」と店員に言われることがあるくらいだ。たまにめんどくさくなって「そうです」と答えることもあるほどなのだ。

何よりも低解像度の参考資料をカラープリントして持っていったので(元データを消してしまったのだ)、かなり画質も悪い。本間さんにとっては悪条件が揃い踏みだ。しかし、すぐに「やってみます」と作業に取り掛かった。
例のごとくスルスルと下書きを描いていく
例のごとくスルスルと下書きを描いていく
普段も画像から描くことはあるのだが、やはり実物がいないのである程度は想像して描かないといけないらしい。写真からだとわからない部分も、雰囲気から読み取って絵にしていくのだ。ほぼエスパーに近い能力だ。
後ろで作業を見ていてずっとニヤニヤしてしまう。身内を描いてもらうのはまた違った楽しさがあった。
後ろで作業を見ていてずっとニヤニヤしてしまう。身内を描いてもらうのはまた違った楽しさがあった。
「難しいですね」と口にしながらも、どんどんと兄弟の絵が出来あがっていく。
「難しいですね」と口にしながらも、どんどんと兄弟の絵が出来あがっていく。
お客さんによっては思い出として、毎年1年に1回描きに来る人もいるらしい。たしかに写真とはまた違った記録の残し方だ。兄弟で1年に1回くらいのペースで描いてもらいたい。それで7年くらい連続で描いてもらったら記事にしたい。

そんな思いを馳せていると、あっという間に絵が完成した。本当に早い。『似ている兄弟』+『荒い画質』という高難易度の状態で一体どんな絵が出来上がったのか…!!
完成品を見せてもらったときにやはりニヤニヤが止まらなかった。
完成品を見せてもらったときにやはりニヤニヤが止まらなかった。
こちらが元の画像
こちらが元の画像
こちらが完成イラスト
こちらが完成イラスト
それぞれにハッキリと特徴がイラストに表れているのがわかると思う。僕が意識したこともないようなところすら個性が出ている。

これは僕しかわからないことがだが、兄の口元なんかは本人に激似なのだ。兄の顔のパーツをじっくりと見ることがなかったので、イラストを見て「こういう口元なのか!!」と再発見をすることが出来た。むしろ僕より兄を知っている本間さんに少し嫉妬したくらいだ。
僕は兄弟が狂おしく好きなので、イラストの完成度の高さに感動して一生家宝にしようと思った。
僕は兄弟が狂おしく好きなので、イラストの完成度の高さに感動して一生家宝にしようと思った。
兄と僕の特徴分けはかなり難しいと思っていたのだが、本間さんは画像を見てすぐに把握したようだ。
■兄の特徴
・僕より目がぱっちりしている
・口元に特徴がある
・鼻から下が僕より長い
・兄が一番細い
弟は顔のタイプがまったく違うので描きやすかったとのこと。そして、肩の上がり下がりでもそれぞれの雰囲気を表しており、それぞれの特徴がより如実に絵に表現されている。

これがプロの技術と観察眼…

よくあの荒い画像からここまで違いを描き分けられたものだ。ぐうの音も出ないとはこのことだ。
改めて最後に見てもやっぱり似ている。
改めて最後に見てもやっぱり似ている。

兄弟の写真はかなり難しいんじゃないかと思ったけど、時間もかけずにさらさらと描いて、一瞬で特徴を捉えていた。

普段意識していない部分が強調して描かれるので「周りから見ると自分っていこう感じなんだ」というのが客観的に見れるという点もおもしろい。
絵は本当に気に入ったのでTシャツにしました。
絵は本当に気に入ったのでTシャツにしました。
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