特集 2016年4月19日

東京にある川の上流端をめぐる

大人になってでかい顔してる奴の子供時代を見てしまった感じ
大人になってでかい顔してる奴の子供時代を見てしまった感じ
川がはじまる場所を見てみたい。

川の始点というと、高い山で雪から融けたひとしずくが流れ出し斜面を下る...、というような景色を思い浮かべるけれど、そんなところまでは行きたくない。

そこで、東京都内、それもできるだけ街中で見られる川の始点がないか探してみた。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:線路に書いてあるETCとは?

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石神井川の上流端

東京を流れる川というと多摩川や荒川が思い浮かぶけど、たとえば多摩川は山梨県にある標高2000m近い山の山頂近く、荒川は埼玉県、山梨県、長野県の県境にまたがる甲武信ヶ岳の標高2200m付近に源流があるらしい。

見てみたい。でも、そんなところまで行ける気がしない。

それなら支流はどうだ。たとえば北区で隅田川(荒川水系)に合流する石神井川は、上流に向かうと板橋区、練馬区、西東京市を流れて、上流端は小平市内にあるらしい。小平市なら家から30分で行ける!

地図をたどって、石神井川の水色の線が途切れるところにやってきた。
ここで川が途切れている
場所としては小金井公園の北側。公園から坂を下ると小さな橋が架かっていて、その傍に石神井川の上流端を示す看板が建っていた。
こんな住宅街の中に上流端
こんな住宅街の中に上流端
今回はこの看板をめぐります
今回はこの看板をめぐります
細い川の中のさらに細い溝の中をほんの少しの水が流れる
細い川の中のさらに細い溝の中をほんの少しの水が流れる
下流ではそこそこの水量が流れている石神井川も、上流端ではごく微量の水が細い溝の中を流れているだけだった。
あの細い溝がこんなに立派な川になる(豊島園付近)
あの細い溝がこんなに立派な川になる(豊島園付近)
上流端とはいえ、川がここから始まっているわけではなく、後ろを振り返ると上流に向かって暗渠らしき道が続いていた。おそらく、一級河川として国が管理するのがこの看板から下流で、ここより上流は一級河川ではないけれど水の流れは続いているようだ。暗渠をたどってみたものの、すぐに大学の敷地内に入ってしまい追跡できなかった。しかし「法律上の」とはいえ川の上流端が見られたので満足である。
上流端のさらに上流へも暗渠らしい道が続いていた
上流端のさらに上流へも暗渠らしい道が続いていた
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野川の上流端

続いて向かったのは、都内を流れる多摩川の支流の中でも比較的距離の長い野川の上流端。ちょうど二子玉川の駅の真下で多摩川と合流している野川は、上流に向かってほぼ北西に伸び、国分寺駅の近くで中央線をくぐった場所にある日立製作所中央研究所敷地内の湧き水から流れ出ているという。

敷地内は年2日間だけ公開されるらしいのだけど、タイミングを逃して入れず。仕方がないので、池から流れ出た川が中央線を越えた場所に行ってみることにした。
線路の北側の池あたりが源流らしい
こんな賑やかな駅の近くに上流端があるのか
こんな賑やかな駅の近くに上流端があるのか
国分寺駅で降りて野川の方向に歩いていくと、この上流端めぐりにとって縁起の良いものを見つけた。歩道の脇に、湧き水から流れ出す人工の水路が作られているのだ。これはもしや野川をモチーフにしているのでは、思わずそんな妄想をしてしまう場所とタイミングだった。
ここが源流の湧き水
ここが源流の湧き水
この場所に「上流端」の看板建てたい
この場所に「上流端」の看板建てたい
その後、住宅地の中を歩いて行くと道が急な下りの階段になった。おそらく、これは野川の谷に降りる崖なのだろう。いまは家が林立しているけど、この地形のまま周囲が森だと想像すると、かなり源流っぽい雰囲気である。
平地から突然急な階段に
平地から突然急な階段に
谷底に降りると、そこには小さな川が流れていた。これが生まれたばかりの野川らしい。民家の裏手を流れる細い水路に大きな鯉が悠々と泳いでいて長閑な雰囲気だった。
暗渠にされてもおかしくなさそうな小さな流れ
暗渠にされてもおかしくなさそうな小さな流れ
大きな鯉がうようよ
大きな鯉がうようよ
住宅街の細い道に入り込んで、野川が中央線の線路をくぐるトンネルが見える場所まで来た。

中央線より上流はたぶん私有地なので、もし上流端の看板があるとすればこの辺かも、と思っていたら本当に建っていた!これを見つけたときはなんだかドキドキした。
トンネルの中から流れてくる野川
トンネルの中から流れてくる野川
トンネルの中はよく見るとレンガだった。実は歴史ある構造物なのだろうか
トンネルの中はよく見るとレンガだった。実は歴史ある構造物なのだろうか
トンネルの脇に建っている上流端看板
トンネルの脇に建っている上流端看板
多摩川の中でも比較的規模の大きな支流である野川でさえ、上流端はドブ川のようなうら寂しい雰囲気だった。何というか、社会人になってぶいぶい言わせている人の素朴だった子供時代の写真を見てしまったような、複雑な感情が去来した。
青年期の野川。あのトンネルから出てきた頃の素朴さはもうない
青年期の野川。あのトンネルから出てきた頃の素朴さはもうない
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仙川と入間川の上流端

野川にはいくつかの支流がある。その中で暗渠化されていない仙川と入間川の上流端を見に行った。
ラーメン二郎のすぐ下が仙川の上流端
京王線の駅名になっていたり、中流部あたりでは比較的オシャレなイメージのある仙川も、上流部は水の枯れた細い水路がくねくねしていて、ほとんど季節外れの用水路といった風情である。
ふつうの都市部の川に見えるけど
ふつうの都市部の川に見えるけど
上の写真から数キロ遡るとこんな状態
上の写真から数キロ遡るとこんな状態
水のない水路を見るとハイドライドを思い出す
水のない水路を見るとハイドライドを思い出す
駅名になるほどの川だけど、その上流端は大きな通りの脇に目立たずひっそりとあった。
大きな通り沿いだけど誰も気づいてなさそう
大きな通り沿いだけど誰も気づいてなさそう
水の流れていない浅い溝があるだけ
水の流れていない浅い溝があるだけ
上流には管が続いていた
上流には管が続いていた
まったく水の流れていない細くて浅いコンクリートの水路。仙川の上流端は住宅街の中にあって、誰にもその存在を気にされていないような印象だった。きっとこの上流端の看板が目に入っても、こことあの京王線の駅が結びつく人はいないのではないか。

下流ではオシャレで明るく振る舞う仙川も、地元にいた頃は暗く冴えない少年だったのだ。
もうこの駅名見てもあの水のない上流端をイメージしてしまう
もうこの駅名見てもあの水のない上流端をイメージしてしまう
野川のもうひとつの支流、入間川は延長6kmほどの、いつ暗渠になってもおかしくなさそうな小さな川だ。地図を見ると、京王線のつつじヶ丘駅近くで甲州街道につき当るようにして青い線が消えている。
駅から近くて行きやすい上流端
最寄り駅から歩いて数分、甲州街道の側道に小さな橋が架かっていた。その橋の上から川を見ると、そこに上流端の看板が建っていた。
ものすごく小さな橋
ものすごく小さな橋
下流までずっとこのくらいの太さなので印象が変わらない
下流までずっとこのくらいの太さなので印象が変わらない
入間川は上流端から合流地点までずっとこのくらいの幅で続いている。大学や社会人になったからと言ってみんながみんなデビューするわけではない、という事実は冴えない若者を勇気づける存在と言えるだろう(僕は何の記事を書いてるんだっけ)。
甲州街道を越えた先も暗渠として続いていた
甲州街道を越えた先も暗渠として続いていた
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鶴見川の上流端が東京にあった

川の上流端を調べていたら、意外なことを知った。横浜市内を抜けて横浜港に流れ出る鶴見川と、その支流である恩田川の上流端が東京都内にあるというのだ。

というわけで、まずは恩田川の上流端に行ってみた。
横浜と町田のニュータウンの中を流れる恩田川
横浜と町田のニュータウンの中を流れる恩田川
恩田川の上流端は町田の市街地の北のはずれ、丘陵地帯から流れ出した小さな川がいくつか合流した付近である。具体的には、合流地点の少し下流で鶴川街道をくぐった場所。上流端というにはあまりにも開けた場所でいまいちピンとこない。
上流端らしい要素が何もない
このトンネルを抜けた場所が上流端
このトンネルを抜けた場所が上流端
上流端ってこんなカジュアルにあったんですね
上流端ってこんなカジュアルにあったんですね
上流端からいきなりふつうの都市河川
上流端からいきなりふつうの都市河川
その上流は細くて曲がりはじめる
その上流は細くて曲がりはじめる
鶴見川の上流端も町田市内。しかしこちらはニュータウンのさらに先、農村地帯と丘陵地帯の境目といったあたりだった。河口付近は立派な鶴見川も、川幅が2~3mの小河川となっていた。
ここと横浜港が直結しているとは
この看板が東京にあることに違和感がある
この看板が東京にあることに違和感がある
鶴見川のスタート地点
鶴見川のスタート地点
上流側は急激に野性味が増す
上流側は急激に野性味が増す
正直、この小さな水路が鶴見川と言われても信じられないだろう。つまり、どんな上流端でも、その後の地形と水量によっては大河川になる可能性を秘めている、ということだと思う(何も言ってない)。

達成感は小さいけどある

「法律上の」川の上流端めぐり、険しい道のりもなくお手軽な割に、小さな達成感を得られるのは意外だった。みなさんも最寄りの川の上流端を訪ねて、ぜひ人生のヒントにしてみてください。
暗渠や川跡や水路が全部載っている地図があるといいなと思った
暗渠や川跡や水路が全部載っている地図があるといいなと思った

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ダムに興味ない人もぜひ見てみてください!
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