特集 2016年3月11日

線路に書いてあるETCとは?

ああ、ETCカード挿し忘れに注意ね...ってないないない!!
ああ、ETCカード挿し忘れに注意ね...ってないないない!!
駅で電車を持っているとき、何気なく目の前の線路に視線を落とすと、枕木に「ETC」と書いてあった。

ああ、高速道路の料金所手前にあるように、ETCカードを挿し忘れないように表記されているのだな、そうか電車の運転手さんでも挿し忘れることあるのか、というか挿し忘れたらどうなるんだろう、まさかゲートが閉まって急停車、なんて......いや、電車、ETC、関係ないよ。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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ETCだけじゃない、BCCもある

枕木に書かれたETCを見つけてから、そう言えばレールや枕木にはいろいろな文字や記号が書いてあるな、ということを思い出した。いままでまったく意識していなかったけど、あれが何なのか急に気になってきた。

そう言えばお腹が出てきたな、と気がついて急に食べ物のカロリーを気にしだしたのも最近である。ぜんぜん関係ないけど。
別の路線で控え目なETCも見つけた
別の路線で控え目なETCも見つけた
別の駅ではもう少し控え目な「ETC」を見つけた。これでは走っている電車の運転手からは見えないのではないか。ではいったい誰に向けた表記なのだろう。

ETCの表記から先に進むと、こんな表記もあった。
内緒で送られてくるメールのやつか
内緒で送られてくるメールのやつか
ETCの先にはBTCとBCCもあった。なんだろうこの微妙な類似性。

とりあえずETCが何なのか知りたい。そこで何気なくツイッターでつぶやいたところ、親切に教えてもらえたのだ。
ほしいときにもらえるマジレスはほんと嬉しい
ほしいときにもらえるマジレスはほんと嬉しい
ゴール前で待つ僕の足にピタリと合うピンポイントパスのようなマジレスで教えてくださったのは@oka_okacchiさん。なるほど電車にETCはついてないよね、でも緩和曲線の終点って何だ?と思っていたら、@oomatipalkさんが詳しく解説してくれた。

「この文字は、曲線の変更点を示しています。緩和曲線とは、直線(や曲線)からある半径の曲線に入る時に、衝撃や動揺を和らげるため、その間に挟まれる曲線半径やカント(遠心力に抵抗するための傾き)を緩やかに変化させる曲線のことです」

なるほど!ここから曲率が変わりますよ、ということを表していたのだ。というか、考えてみれば当たり前なんだけど、直線からいきなり一定の半径の曲線に入るんじゃなくて、その間をつなぐ緩やかな曲線が挟み込まれていた、なんて普通に暮らしていたら気づかないよね。

ちなみに@oomatipalkさんは保線関係のお仕事をされているとのことで、線路まわりが本職の方だ。ちなみに「レイルエンヂニアリング」というレールや分岐好きとしては鼻血が出そうなホームページも運営されている。

では「BTC」や「BCC」は...?

「BTCは『Beginning of Transition Curve』で緩和曲線始点、BCCは『Beginning of Circle Curve』で円曲線始点。つまり、直線から曲線に入ってまた直線になるには、直線→緩和曲線→円曲線→緩和曲線→直線という流れがあり、その境目にBTC、BCC、そしてECC『End of Circle Curve(円曲線終点)』、ETCがあります」

つまり図で説明するとこうだ。
絵が拙すぎて緩和曲線と円曲線がうまく描き分けられてない気がする
絵が拙すぎて緩和曲線と円曲線がうまく描き分けられてない気がする
僕が見つけたETCとBTCの間では、探してもECCが書かれているのを見つけられなかった。でも何気なく電車に揺られているとき、きっと床の下ではしょっちゅうBTC、BCC、ECC、そしてETCという文字が通り過ぎているのだ。リアルタイムで見たいなあ。
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代わりの標識もある

線路、というか枕木に書いてあるETCとかECC、もっと見たいと思ったらすべての場所に書いてあるわけではないらしい。その代わり、

「円曲線部の両端、緩和曲線部との境界には曲線標という標識があり、緩和曲線部と直線部の境界には逓減標(ていげんひょう)という上部が白に黒帯の細い杭があります。」

ということで、探したらありました!
これが直線と緩和曲線の境目、逓減標だ!
これが直線と緩和曲線の境目、逓減標だ!
これが緩和曲線と円曲線の境目にある曲線標だ!
これが緩和曲線と円曲線の境目にある曲線標だ!
曲線標にはいろいろ数字が書かれている
曲線標にはいろいろ数字が書かれている
枕木に文字が書かれていなくても、線路脇にこれがあればそこが曲線の変更点。気にしたことはないけれど、そう言えば確かに今までもあった。線路まわりの文字や標識、そんなのばかりである。

曲線標には数字がいろいろ書いてあるけど、それぞれどんな意味なのだろうか。

「一番大きな数字が円曲線半径、TCLは緩和曲線長、CCLは円曲線長(単位m)、C=カント、S=スラック(単位mm)となっています」

カントとは、曲線を通る車両の重心を遠心力に対抗して下に向けるため、内側のレールに対して外側のレールを上げた量、そしてスラックとは急カーブでも台車に固定された車輪が曲線をスムーズに通過できるように、内側のレールを曲線の中心方向へ拡大してレールとレールの間を広げた量のことらしい。

つまり、この場合は、
情報が詰まった曲線標
情報が詰まった曲線標
全長20mの緩和曲線と全長50mの円曲線の間に立っている曲線標で、内側のレールより外側のレールの方が2.5cm高くなっている、という状態を表している。そして、
この曲線標に書いてある大きい数字は
この曲線標に書いてある大きい数字は
これはここから半径600mの円曲線が始まる、という意味。曲線標と逓減票についてはもう分かっただろう。

ところで曲線標を探していたらほかにも線路に立っている標識を見つけたのだ。たとえばこれ。
上下に数字が並んだやや大きい杭
上下に数字が並んだやや大きい杭
ひとつだけ数字が書かれたやや大きい杭
ひとつだけ数字が書かれたやや大きい杭
「これは始点からの距離を表す距離標で、その中で100m単位を表すⅢ号標(丙号標)と呼ばれるものです。上の大きい数字が100m、下の数字がキロを表しています。上のポストは21k700mを表しています。

下の写真はキロ部分が省略されているものと考えられます」


なるほど始点からの距離か。それで、これは誰が見る標識なのだろう。運転手が見るには小さい気がするし、保線工事などの目安にするのだろうか。

「距離標も、曲線標もですが、保線だけでなく土木や電力の検査や、工事にも必要ですし、運転士も見ています。何か事故が起きた際は警察や消防に距離標を目印にしてもらう事もあります」
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よく見かける人形型の杭

距離標のほかに、もうひとつ、前から知っている形の標識があった。棒状の杭に、横向きや斜め下向きに腕が取り付けられた標識である。どこかにないかな、と探したら自宅の最寄りの踏切近くにあった。
横向きの腕に「L」と書いてある。反対側の腕は裏が黒く塗られている
横向きの腕に「L」と書いてある。反対側の腕は裏が黒く塗られている
「『L』と書いてあるものは『勾配標』です。その名の通り勾配の変更点に設置されます。LはLEVELの略とされていて、この先は平坦である事を示しています。下り勾配の場合はこの腕木が30度下方向へ。上り勾配の場合はこの腕木が30度上方向へ設置されます」

そうか、これは勾配を表している標識なのか。この写真の標識は反対側に裏が黒く塗装された腕木が設置されているのも見えるけれど、つまり逆方向から向かうと下り勾配になっている、ということなのだろうか?

「そうですね、反対側から見て下向きの腕木が見えるということは、反対方向から見てここから先は下り勾配となっています。この方向からは上ってきて平らになるということですね」

気にしだしてから線路をよく見ると、いろいろ記憶にある標識が立っていることに気づく。たとえば、次の標識も誰もが1度は見たことがあるのではないか。
板に数字が二段で書き込まれている
板に数字が二段で書き込まれている
これは大きな数字だけ。後ろに曲線標がたくさん立っている
これは大きな数字だけ。後ろに曲線標がたくさん立っている

制限速度?

大きめの板に数字が書かれている。65とか55は恐らく速度の数字ではないかと思うけれど、その下の213が分からない。半径213mの円曲線区間ということだろうか?

「こちらは『速度制限標識』です。主に分岐器や急曲線など、設備的な理由で最高速度を制限する場合に設置します。1枚目の写真65/213は、この標識より先213m間が最高速度65km/hであることを表しています」

なるほど、しかし距離が213mとは細かい!

では最後に、もうひとつだけ聞きたかったものを見てもらいたい。
枕木に書いてある○の中の×は何を意味しているのか
枕木に書いてある○の中の×は何を意味しているのか
○の中に×が書かれている記号。これまでの標識とは違って、きっと保線作業の人が確認用に書いたものだと思う。これは何を意味しているんだろう。

「○に×の組み合わせのマークですが、MTT不能箇所を示すマークです。MTTとは、マルチプルタイタンパという大型の保線機械で、砂利が敷かれている線路の歪みを直すものです。 具体的には、凹んでしまった線路を直すためにマクラギごと線路を持ち上げ、マクラギを挟むようにタンピングツールと呼ばれる振動する棒状の金具を砂利に突き入れて浮いたマクラギの下へ砂利を押し込むことで凹んだ線路が元通りの位置に戻ります。」
MTTとは前に保線基地を鑑賞したときにいたこれか
MTTとは前に保線基地を鑑賞したときにいたこれか
「このタンピングツールはある程度マクラギとマクラギの間隔が無いと突き入れることができません。また、砂利ではない区間や、ケーブルが線路を横断している場所でも使う事ができません。そういった場所で間違えて作業してしまうと、ケーブルが切断されてしまったり、マクラギやMTTが壊れてしまうので、あらかじめ作業できない場所(不能区間)を調査して、印をつけているのです」

なるほど、機械で施工とはいえ線路の下にはいろいろな事情があるので、きっとその都度保線作業の方が判断しているのだろう。

と言うわけで、@oomatipalkさんにほとんど教えてもらっていろいろな疑問が解けた。どうもありがとうございました。

毎日使って視界にも入っているはずなのに、意味をぜんぜん知らなかった線路脇の標識や枕木の文字たち。でもある程度は意味が分かってしまったので、これまでよりエキサイティングな通勤になるような気がする。そして、ほかにも気になるものはあるので、今後も収集して調べてみたいと思う。
たとえばこのマークとか(は聞いて教えてもらった)
たとえばこのマークとか(は聞いて教えてもらった)
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