特集 2015年11月16日

あのロボは今…。進化した「ASIMO」に会ってきた

最新型のASIMO
最新型のASIMO
ソフトバンクロボティクスのパーソナルロボット・Pepper(ペッパー)の人気がとどまることを知らない。毎月1000台ずつの一般販売は、いつも受け付け開始1分で完売してしまうという。

ところで、Pepperよりはるか前に一世を風靡した、あのヒト型ロボットは今どうしているだろうか? 会いに行ってみた。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

日本はヒト型ロボット先進国

古くは鉄腕アトムの時代から、日本人にとってロボットといえば「ヒト型」が馴染み深い。ドラえもんはネコ型だけど、二足歩行である。

こうした文化的背景もあり、日本ではヒトの姿を模した、いわゆる「ヒューマノイド」の研究が盛んだ。以前、とある高名な人工知能の研究者と話したとき、その人は真顔で「鉄腕アトムをつくりたい」と言っていた。
日本科学未来館(東京都江東区)に展示されたヒューマノイドロボットの系譜。その歴史は1970年にまでさかのぼる
日本科学未来館(東京都江東区)に展示されたヒューマノイドロボットの系譜。その歴史は1970年にまでさかのぼる
ちなみに、日本では40年以上前に「ヒト型」の始祖ともいうべき二足歩行ロボットが開発されている。
世界初の二足歩行ロボットは日本人がつくった。早稲田大学の故・加藤一郎教授が開発した「WAP-1」だ
世界初の二足歩行ロボットは日本人がつくった。早稲田大学の故・加藤一郎教授が開発した「WAP-1」だ
以来、今日までおよそ半世紀にわたり進化してきたヒューマノイドの歴史。そのなかでも世間に大きなインパクトをもたらしたのは、2000年に登場した「ASIMO(アシモ)」であろう。

今のPepper人気も凄いが、「ASIMO」のデビューはそれ以上に鮮烈だったと記憶している。

あれから15年、ASIMOは今どうしているのだろうか?

というわけで、ヒューマノイド界の元祖アイドルに会いに行くことにした。
「あの人は今?」もとい、「あのロボは今?」
「あの人は今?」もとい、「あのロボは今?」
調べてみると、ASIMOは東京の日本科学未来館、または青山にあるホンダのショールームに行けば会えるらしい。それぞれ、ASIMOによる1日数回のデモンストレーションを行っているという。

今回はアシモ以外のロボット展示も充実しているという日本科学未来館の方に足を運ぶ。ちょうど「サイエンスアゴラ」という科学フォーラムの期間中で、周辺施設と連携した様々なイベントが行われていた。
日本最大級の科学フォーラム「サイエンスアゴラ」が開催されていた
日本最大級の科学フォーラム「サイエンスアゴラ」が開催されていた
ふだんは一般開放していない施設も、この日は見学できた
ふだんは一般開放していない施設も、この日は見学できた
ASIMOがいる日本科学未来館に行く前に、サイエンスアゴラの会場のひとつ「産業技術総合研究所」に立ち寄ってみた。イベント時以外は一般開放されていないが、ここにもロボットがいるっぽい。

入ってみると、ヘンなロボットがこちらに突進してきた。
なんかきた
なんかきた
いや、ヘンなというのは語弊があった。失敬。
彼(性別が分からないので、便宜上「彼」とする)の名前は「Peacock」。人の動きや音を感知して自律移動するロボットで、SJPDAFsによる移動体追跡を用いて数十人の歩行者を同時追跡できるという。……なんて言われてもなにがなにやらだが、ちょこまかと動き回る姿はどこかスターウォーズR2-D2を彷彿とさせる。かわいい。
ほかにもセラピー用のアザラシ型ロボットがいたり
ほかにもセラピー用のアザラシ型ロボットがいたり
ファイティングポーズをとるマッチョなロボもいた
ファイティングポーズをとるマッチョなロボもいた
会場で少年たちの心をわしづかみにしていたのは、「チョロメテ」というミニ・ヒューマノイド・ロボット。おもちゃに見えるが、福祉施設や家庭などで働くヒューマノイドの研究を目的につくられたものだ。

なんでも、チョロメテにはヒューマノイドロボットソフトウェアプラットフォームOpenHRPの一部の機能を搭載。ZMPを考慮した動作パターンの生成、センサーフィードバック制御により、既存のホビーロボットに比べると相対的に小さな足底で2足歩行が実現されているという(産総研ウェブサイトより)。

……またもやなんじゃそらだが、ようするに、より人間に近いフォルムで2足歩行、起き上がりなどの動作を可能にした凄いロボットなのだ。
外装監修は「機動警察パトレイバー」のデザイナー・出渕裕氏が担当
外装監修は「機動警察パトレイバー」のデザイナー・出渕裕氏が担当
アッパーを繰り出すと必ずバランスを崩す。見た目とは裏腹に戦闘力は低い
アッパーを繰り出すと必ずバランスを崩す。見た目とは裏腹に戦闘力は低い
でもバランス感覚は抜群。こんなお茶目なポーズもできる
でもバランス感覚は抜群。こんなお茶目なポーズもできる
しかし、果たしてビジュアルをヒーローっぽくする必要はあったのか?

いや、ある! どうせ作るならかっこいいほうがいいに決まっているのだ。
こちらはワンサイズ大きいチョロメテ。15分動くのに1時間の充電が必要なのだそう
こちらはワンサイズ大きいチョロメテ。15分動くのに1時間の充電が必要なのだそう
ちなみに1個5万円のモーターが20個くらいついているそうです。すなわち、1体100万円
ちなみに1個5万円のモーターが20個くらいついているそうです。すなわち、1体100万円

ASIMOを見に行こう

チョロメテに、二足歩行ロボットの進化の一端を見たところで、いよいよASIMOに会いに行こう。
ASIMOがいる日本科学未来館
ASIMOがいる日本科学未来館
おや、館内に入ってすぐのところに人だかりができている。ASIMOか?
いや、Pepperだ!
いや、Pepperだ!
このPepperは、サイエンスアゴラのガイド役。各会場の展示内容をインフォメーションしつつ、来場者とコミュニケーションをとっている。
子どもたちに大人気
子どもたちに大人気
来館者と積極的にコミュニケーションを図るPepper。ロボット界の新星は、さすがの人気だった。でもみんな、ASIMO先輩のことも忘れないであげて。
ASIMO先輩……
ASIMO先輩……
偉大な先輩の前で、ヒューマノイドの世代交代をまざまざと見せつける脅威の新人。そんなPepperには目もくれず、すみやかにASIMOがいる3階展示室へ向かった。デモンストレーションは5分後に行われる。
大混雑
大混雑

超人気者だった

そこには、ASIMOの登場を今か今かと待ちわびる外国人観光客や親子連れ、おじさんたちの姿があった。勝手に過去のロボ扱いしてしまっていたが、忘れられるどころかふつうに大人気だった。
さあスターのお出ましだ
さあスターのお出ましだ
かっこいい!
かっこいい!
しかし、あいさつもそこそこに、ゆっくりと後ずさるASIMO。どうした? おなか痛いのかい?
ゆっくり後ずさり
ゆっくり後ずさり
走った! ASIMOが走った!
走った! ASIMOが走った!
2000年のデビューから15年、しばらく見ないうちにASIMOはものすごく進化していた。そろ~りそろ~りと1歩ずつ踏みしめるように歩いていたかつての姿はそこにはない。それどころか、ジャンプもできる。
ASIMOが飛んだ! あらゆる身体能力が各段にアップしている
ASIMOが飛んだ! あらゆる身体能力が各段にアップしている
現代のアシモは2011年に登場した三代目。時速9kmで走り、サッカーボールを蹴ったり、ケンケンもできる。また、びんのふたをひねって開けたり、人の歩く方向を予測してぶつからないように歩いたり、さらには3人同時に発した言葉を聞き分けることもできるという。とんだ聖徳太子である。
手話も得意。滑らかな関節の動きは人間そのもの
手話も得意。滑らかな関節の動きは人間そのもの
ちなみに、40年前に開発された 二足歩行ロボット「WABOT-1」は1歩進むのに40秒以上かかっていたという。その大いなる進歩に脱帽である。あと40年したら、それこそアトムみたいに空を飛ぶかもしれない。

ASIMOほしい

というわけで、ひさしぶりに見たASIMOはとても進化していた。動きだけでなく、チャーミングで賢く、まさにヒト型ロボットの最高峰である。

惜しむらくは手に入れる術がないことだが、将来はPepperのように商品化されるかもしれない。そういう展望もじっさいあるらしい。20万円くらいだったら迷わず買うんだけどなあ……。
ミュージアムショップで買ったASHIMOフィギュア。五郎丸ポーズもサマになる
ミュージアムショップで買ったASHIMOフィギュア。五郎丸ポーズもサマになる
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