
プロジェクトチーム発足(プロジェクト1日目)
総合リーダー:林雄司
テクニカルリーダー:吉田知史(テクノ手芸部)
ライティングリーダー:住正徳
3人ともリーダーという、特攻野郎Aチームのようなチームである。
特に猫用テレビリモコンの動きを設計・構築する吉田さん(テクニカルリーダー)の占める役割は大きい。吉田さんは普段、テクノ手芸部として電子工作と手芸を組み合わせたアート作品を創り出している。テクノ手芸部という名前は、「やわらか戦車」のような剛柔さがあってとてもいい名前だと思う。






・猫にどうやって選ばせるか?
・猫の意思をどうやってリモコンに伝えるか?
・スカパー!の選局はどうすればいいのか?
アジェンダの最後にスカパー!の選局、という課題が上がっている。
そう、今回はスカパー!さんとのコラボ企画なのだ。スカパー!さんにはチャンネルが沢山あるから猫に決めてもらえるようなリモコンがあったら便利なのでは。今回のプロジェクトチームの発想の原点はそこにある。
約1時間のミーティングを終えて、ライティングリーダーである僕のメモ帳には、
「猫は予測出来ない」
とだけ書いてあった。

テクノ手芸部のアトリエで制作開始(プロジェクト2日目)



制作段階から臨場感を出すために、と林さんが猫の耳と猫の手を持って来てくれた。



この装備によって猫の立場から意見を伝えることが出来れば、リモコン開発の成功は堅い。





吉田さんからも若干ではあるが「邪魔だな」というオーラーが漂ってくる。いかん、空気を変えなくては!
吉田さんに電子工作について質問してみた。
「吉田さんは子どもの頃から電子工作が得意だったのかニャ?」
吉田さん「いえ、普通の子どもだったと思いますよ。住さんと同じようにミニ四駆とかで遊んでましたし」
手を動かしながら吉田さんが答える。
そうか、吉田さんはミニ四駆世代なのか。僕と同じようにと言ってくれてはいるが、僕はミニ四駆世代ではなくてチョロQ世代である。これ以上、この話題は続かないし、話しかけるのもそれはそれで邪魔っぽい。
やはり静観しよう。

ねこじゃらしを動かす仕組み











小一時間の作業で、ねこじゃらしがモーターによって動くようになった。


引き続き猫の気持ちになっている僕が試してみた。









猫の気持ちになると、このオートマティカリーなねこじゃらしが楽しくて仕方ない。
我々プロジェクトチームは、顔を見合わせて親指を突き上げた。
いけるニャ。
しかし、リモコン制作はまだ途中段階である。
次のページでは、このねこじゃらしを猫がいじることでチャンネルが変わる、という工程に入っていく。

これが猫用テレビリモコンの全貌だ



例えば、スイッチ(+)側のねこじゃらしを猫が触った場合、スイッチ(+)の信号がマイコンに送られて、それをリモコンボタンを押す(+)のモーターが受ける。すると、チャンネル選局のプラスボタンが押されてチャンネルが1つ上のチャンネルへ移動する。
上の概念図を実際に構築したのが、次の写真である。




スカパー!本社で実験(プロジェクト3日目)
スカパー!のワークスペースで猫用テレビリモコンを広げる吉田さん。



「ここじゃアレなんで、会議室へどうぞ」
と我々を会議室へ通してくれた。



この時も僕は猫になっていたのだ。
スカパー!の皆さんが真面目に仕事をしている中、猫になった中年男性がウロウロするのはまずい。阿部さんの大人の判断だったと思っている。
会議室で再び猫用テレビリモコンシステムを広げる吉田さん。テレビリモコンの選局キーを物理的に押すシステムを動かして見せてくれた。





いけるニャ。
阿部さんを含めた我々プロジェクトチームは、再び親指を突き上げた。
そして、念のため阿部さんにも猫の気持ちを体感してもらった。



いよいよ、猫で試す(プロジェクト4日目)
しかし、ここで我々プロジェクトチームの最大の弱点が発覚した。
我々は誰も猫を飼っていないのだ。猫で試そうにも猫がいない。ここまで来て基本的な問題にぶつかり頭を抱えるプロジェクトチームのリーダーたち。自分の作った電子工作が無駄に終わってしまうのでは、という吉田さんの気持ち。猫になって開発に加わってきた苦労は報われないのか、という僕の気持ち。
2人のリーダーの気持ちを引き受けた総合リーダーの林さんがすぐに動いてくれた。
「知り合いをあたってみましょう」
フェイスブックで知り合いにメッセージを送り、返信を待つ。
すると10分後、協力してくれる人が見つかった。
テキスト系妄想メディア「ワラパッパ」の編集長、末弘さんだ。
僕も3年くらいワラパッパで連載しているのだが、末弘さんにそのようなお願いを頼める関係を築けていない。さすがは総合リーダーの林さんである。
スカパー!本社での実験から2日後、我々は末弘さんのお宅にお邪魔した。








楽しみにして行くと、玉八くんの姿がない。
どうやら、とても臆病なので知らない人がいると怯えてしまうのだという。今は寝室に籠っているらしい。
果たして玉八くんは猫用テレビリモコンを操作してくれるのか?

3時間に渡る試み、そして挫折(プロジェクト4日目)





末弘さんが玉八くんを連れてくる。





なるべくいつも通りの環境で、猫用テレビリモコンと接してもらえるように。










「ちょっと、厳しそうです」
どうも玉八くんは猫用テレビリモコンのねこじゃらしにあまり興味を示してくれないらしい。
我々は一旦末弘さん宅に戻ることにした。
玉八くんの様子を記録していたビデオを見返して、作戦を練り直す。



約1時間の動画の中で、一番惜しかったのが以下であった。


検証の結果、ねこじゃらしの振り幅をもっと大きくして玉八くんの気を引こうということになった。吉田さんに振り幅の調整をしてもらう。



頼むぞ! 玉八くん!








「きびしいですね…」
ダメだったか。
ここまで順調に進んできたこのプロジェクトであったが、「猫が興味を示してくれない」という落とし穴が待っていた。
最初のミーティングの際、僕のメモ帳にあった「猫は予測出来ない」というメモ書きは、この事を暗示していたのかもしれない。
そして、この失敗の翌日、気象庁は関東地方の梅雨入りを宣言した。暗雲立ちこめる我々の心境を物語るようなタイミングであった。
このまま猫用テレビリモコンは失敗で終わってしまうのか?
いや、諦めニャいぞ。

別の猫ちゃんで2回目のトライ(プロジェクト5日目)
総合リーダーの林さんがさらに友人知人をあたってくれて、条件に合うお宅が見つかったのだ。
この日はテクニカルリーダーの吉田さんが仕事の都合で立ち会うことが出来ず、林さんと僕の2人で挑むことになる。事前に吉田さんからリモコンの仕様を詳しく説明してもらい、急な故障にもある程度対応出来る準備をしている。
中野のIさん宅で、早速リモコンの設置を開始した。



「猫たちが1時間前から警戒し始めました」
部屋の片付けを始めると誰かが来ることを察知して警戒してしまうのだという。玉八くん以上に警戒心の強い猫ちゃんなのかもしれない。
大丈夫だろうか…。
メールをいただいてから、我々の不安が一気に高まったことは言うまでもない。
プロジェクト発足から2週間近くの日数が経ち、この件で顔を合わせるのはこの日で5回目。結果を出さない訳にはいかないのだ。

兄妹の猫ちゃんたちの強い警戒心





しかし、我々にはどうしても結果が必要なのだ。
手早く設置作業を終えて、ビデオカメラの録画ボタンを押してIさん宅を一旦出た。末弘さん宅の時と同じように、外で朗報を待つ作戦である。





見慣れないリモコン装置の間をすり抜けて、飼い主のもとへ一直線で走ってきてるのが分かる。
大丈夫、その装置は地雷じゃニャいから!
そんな我々の思いが通じるはずもなく、Iさん宅で猫ちゃんたちが一番リモコンに近づいたのは上の動画の瞬間だけであった。
2連敗である。
猫用テレビリモコンプロジェクトはこのまま失敗で終わってしまうのか?
いや、泣きのもう1軒。
最後は洗足のお宅にお邪魔します。

これが最終トライ(プロジェクト6日目)
いつかはこんな部屋で暮らしてみたい。僕が憧れる生活がそこにはあった。家賃はいくらなのか、敷金礼金はどれくらいなのか、ご近所付き合いはどうなのか、色々と聞きたかったのだがこの日の主題はそこじゃない。猫ちゃんだ。猫ちゃんはどんな具合だろう。









我々がリモコンを設置している間もガンガン近づいて来て、テストで動かしてみた猫じゃらしに早速興味を示している。
イケそうな気配がするぞ。
リモコンの設置を終えた我々はテレビから少し離れて様子をうかがう。








猫じゃらしをいじってチャンネルを変えてくれ!
ここからの様子を動画でご覧いただきたい。


リオくんが猫じゃらしをいじる度にチャンネルが変わっているのが分かると思う。
ついに、猫用テレビリモコンが我々の意図した通りに作動したのだ。
リオくんはこの後も引き続き猫じゃらしと戯れ続けてくれて、チャンネルは変わりまくった。







これで猫用テレビリモコンプロジェクトを無事終了することが出来る。
実は、どうしてもうまくいかなかった時の為に、以下のような動画を撮っておいた。















