インタビューは緊張する
その理由というのは、
前回の記事で西川貴教さんにインタビューした時に感じた。妖精のような西川さんの目をしっかりと見ることが出来ず、緊張して踏み込んだ取材が出来なかったのだ。僕はジャーナリストではないから、踏み込む必要なんてないのかもしれない。それでも、なるべく緊張しない方が楽しい話を聞き出せると思う。今後、また大物にインタビューすることがあるとしたら、その時までにはなんとかしたい。
そこで思いついたのが仮面だ。
仮面を被ってしまえば、緊張せずに話を聞くことが出来るのではないだろうか。そうだ、仮面ライターになろう。
仮面を作る
仮面ライターになるための仮面を作る。
まず、そのベースとなる部分をフルフェイスのヘルメットでまかなうことにした。
ドン・キホーテで一番安いフルフェイスを探す。
ドン・キホーテのヘルメット売り場
フルフェイスで3000円が最安値だった。こんな頑丈でずっしりとした物が3000円だなんて。さすがドン・キホーテの情熱価格である。
3000円のフルフェイスを購入した。
購入したヘルメット
このフルフェイスは内装ウオッシャブル。つまり、中のモコモコした部分が着脱式で洗えるのだ。これなら夏場にインタビューが入っても大丈夫である。
内装ウオッシャブルだと助かる、というお客様の声
このヘルメットを仮面ライター用に改造していく訳だが、主な改造ポイントはシールドだ。情熱価格で購入したヘルメットのシールドは透明なので、中の顔が見えてしまう。見えてしまったら仮面を被る意味がない。
そこで、透明なシールドに色をつけることにしたが、そうすると前が全く見えなくなってしまうので、色付けの前にのぞき穴をあけておいた。
3mm系の穴をあけた
左右2個ずつ、合計4つの穴からインタビュー相手を観察することになる。
穴をあけたシールドにスプレータイプのペンキを吹きかけていく。
下地を塗ってから
スプレーペンキを吹きかける
シールド部分の色は蛍光のレッドを採用した。戦隊物でもレッドがリーダーと相場が決まっているからだ。
一度塗りだけでは色が乗らなかったので、何度か重ねて塗っていった。
最終的に5度塗りしたシールドは奇麗な蛍光レッドへと変貌遂げた。
蛍光レッドのシールド
このシールドを更にグレードアップさせるため、テープ式のLEDライトを貼る。
テープ式のLEDライト
これにより、インタビュー相手に充分な光量を当てることが可能になった。大物女優さんが相手でも、LEDのライトがあるから大丈夫なのだ。
尚、このLEDライトは1日点けっぱなしでも電気代が0.5円(消費電力4.8w)とお財布にも優しい。
更なるカスタマイズ
シールド以外の部分にもカスタマイズを加えていく。
まず、インタビューしながら相手の写真を撮ることも可能にしたいので、iPhoneを固定する器具を購入した。
iPhone固定器具
Smart Holder5。税込で2,036円だ。これをヘルメットに装着してiPhoneを固定する。先ほどのLEDライトで照らされた相手をiPhoneで激写できるのだ。
更に、ヘルメットに何かしらの装飾を施したいので、東急ハンズでシールの切り文字加工をお願いした。
切り抜いてもらった文字は以下である。
コマンドS
Sの前にあるマークはMacintoshのコマンドキーである。コマンドキーとSキーで「ファイルの保存」。
原稿を書いていて集中力が高まってくると、どうしても保存を忘れがちになる。そして、そういう時に限ってMacintoshが固まってしまうものだから、「コマンドS」をこまめに行わないといけない。
ライターにとって大切な「コマンドS」を、ヘルメットの真ん中に据えることした。
更に、左側頭部には、次の文字を刻んだ。
締切厳守
コマンドSの次に大切なもの。それはもちろん締切である。「締切厳守」と文字を刻むことで、
「私は締切を厳守するタイプの仮面ライターですよ」
とアピール出来る仕組みだ。
東急ハンズで切り文字加工をお願いする際、「締切厳守でよろしかったですか?」と何度も聞かれて恥ずかしかったけれども。
ハンズのPCに表示される「締切厳守」の文字
以上で仮面ライターの仮面作りは完了である。
出来上がりはこのようになった。
仮面ライターの仮面
iPhoneによる撮影が可能
リチウム電池がiPhoneに接続されているため電源の心配は不要
LEDライト点灯時
LEDライトは手元で調光が可能
この仮面を被ることで僕は仮面ライターへと変身し、緊張せずにインタビュー取材をこなすことが出来るのだ。
果たして本当にうまくいくのだろうか?
あの人にインタビューして確かめてみよう。
林さんにインタビューを敢行
記念すべき1人目のインタビュー相手は林雄司さんだ。当サイトのウェブマスターであり、ネット黎明期から数々のヒットコンテンツを世に送り出してきたネット界の寵児である。
林さんは今のIT業界をどのように見ているのか?
仮面ライターとしてインタビューしてみる。
仮面ライターの住です。
本日はよろしくお願いします。
仮面ライターのセッティングを済ませて、林さんと向き合う。林さんとは15年くらいの付き合いだが、こうして改めてインタビューとなると照れてしまう。しかし、今日の僕は仮面ライター。照れたり緊張したりしないで済むのだ。
まずは備え付けのiPhoneで林さんを撮影してみた。
挨拶代わりに撮影
撮影された画像
ここで気がついたのだが、シールドにあけたのぞき穴が小さ過ぎた。ほとんど前が見えない。勘でiPhoneを操作したら上のような写真になってしまった。主役の林さんの顔が切れてしまい、訳ありの人みたいになってしまった。
これではインタビュー相手に失礼である。
その様子を見ていた林さんが、
「iPhoneのカメラだったらイヤホンで操作出来ますよ」
と教えてくれた。
それは助かる。イヤホンをつないでリモコン操作によって撮影しながら、インタビューすることにした。
イヤホンでカメラを操作しながらインタビュー
独占400字インタビュー。林雄司テクノロジーを語る
――では、改めまして。林さんが最近面白いと思っているテクノロジーはありますか?
林「やっぱりウェアラブルではないでしょうか。僕の最新の記事でも(『
僕はなにを見てドキドキしているのか』)ウェアラブルデバイスを使用した試みについて書いています。心拍数を測る装置と1日中撮影出来るカメラをつけて1週間。1日のうちで一番どきどきした瞬間を記録していきました」
――なるほど、ウェアラブルは確かに興味深いですが、これからそれらの端末はどのようになると予想しますか?
ウェアラブルを語る林さん
林「今の状況ってiPodが出る前と良く似ている。あの時も各社から色々なmp3プレーヤーが発売されましたが、最終的にiPodに集約されていった。今出ているウェアラブル端末も、これから発売されると言われているアップルのiWatchが1つのソリューションとして提供されるように思います」
――今はiPod出現前夜のようだと
林「はい。そんな風に感じます」
更に踏み込む仮面ライター
ここで、更に林さんとの距離感を縮めるため、呼び方を変えてみる。
――ところで、ユージ。最近はお酒飲んでる?
バラク、シンゾウと呼び合った、というニュースからヒントを得た呼び方だ。仮面を被っているからてらいなく聞けた。
林「先週くらいから結構お酒を飲む機会があって、体調があまり良くないですね」
最近の体調について語る林さん
――最近ユージの中でいい二日酔いの薬はある?
林「スルフォラファンがいいですよ。飲んでると二日酔いになりにくいし、なったとしても軽く済むような気がします」
――それはいいですね。僕も試してみます。今日はありがとうございました。
こうして仮面ライター最初のインタビューは終わった。前が良く見えない、写真が撮りづらい、などいくつかの改良点はあるが、林さんにグッと踏み込むことが出来たと思う。
聞き手が仮面を被っている。きっとそれはとても失礼な態度なのだろう。薄々気づいてはいたが、仮面を被っていると守られている感が強く、いつもよりも大胆になれることは確かである。仮面ライターでも怒らない。そんな方がいたらいつでもインタビューに伺いますので、よろしくお願いいたします。