マラソン大会をやるシーズンではない
マラソンのシーズンは主に秋冬である。マラソンみたいに長い距離を走るにはやっぱり涼しい季節がいいのだ。
東京マラソンのスタート風景。これは3月。
しかし中には夏の盛りに開催されるマラソンもある。それが今回僕の出た「人間塩出し昆布マラソン」である。
名前だけ見るとなんだそれ、な大会だが、実は今年で第18回目を迎える歴史ある大会らしい。
集合場所は海水浴場だった。
まさかの大会本部(海の家)。
マラソン大会をやる場所ではない
人間塩出し昆布マラソンは大会本部が海の家だった。しかも貸し切りではないので普通に海水浴をしに来た人がかき氷を食べたりビールを飲んだりしてる。その横で僕たちはジョギングシューズの靴紐を結びなおしているのだ。真夏の海である。どちらが正しい姿か、考えなくてもわかるだろう。
受付をすますと参加賞としてタオルとポカリスエットがもらえる。無記名の賞状ももらえたので完走したら自分で名前を書けということだろう。
参加賞には大会名にちなんで昆布も入っていた。食べたらうまかったです。
そもそも人間塩出し昆布マラソンってなんだろう。
簡単に言えば走る前と後とで体重を測って比べ、減った体重で順位を競う大会である。タイムとか関係ない、一番たくさん体重を減らした人が優勝の大会なのだ。
ちなみに去年の優勝者は体重9キロ減である。
スタート前の待ちの時間中にどれだけ体重を増やせるかがポイントとなる。
僕は1.5リットル飲みました。
9キロて
いまさらりと書いたが体重9キロ減ってどういうことだ。ありえないだろうそれ。にわかには信じられないが大会記録にちゃんと9キロ減とかかれているのでまじなんだろう。できればその人に去年取材したかった(ビフォーアフターで写真撮りたかった)。
海で出たゴミっぽいけど荷物預り所です。
スタート前の計量。この体重からどれだけ減らせたかで順位が決まります。
とりあえず計量の前に水分を摂っておいた方が有利だろう、ということで僕は500mlのペットボトルを3本空けた。これで約1.5キロ体重を増やしたことになる。これでもけっこうがんばった。単純に飲んだ分だけ走って減らせるのならば1.5キロ減まで狙えるわけだ。
しかしそんなに簡単なものだろうか。人間の体って袋じゃないんだから、飲んだ分だけ出したりとかできるものなのか。隣では友人が5リットル目、と言いながらペットボトルをラッパ飲みしていた。
そうこうしているうちに選手全員が広場に呼び出される。
走る前の準備体操として全員でエアロビクスをやるのだ。ここですでに汗だくになる。
走る前に参加する200人でエアロビクスをやる。
これ、準備運動という名目なんだけど、ここですでに汗をかくことになる。普通のマラソン大会だったらできるだけ足を温存しておきたい時間だが、今回は違う。一分でも長く汗をかきたいのだ。
まったくこの大会のことを知らずに海水浴に来た人たちは、汗だくの200人の集団を、すこし離れた場所から写真に撮ったりしていた。
人間塩出し昆布マラソンスタート
直前に飲みまくった水分をタプタプとかかえたまま、人間塩出し昆布マラソンはスタートを迎える。
タイムを競う大会ではないのでスタート直後もみんなのんびり。
普通のマラソン大会だとスタート直後が混雑してイライラしたりするのだけれど、この大会は違う。誰もタイムを狙っていないので余裕なのだ。むしろ速くゴールするより長く走っていた方が体重が減るからとその場で足踏みとかしてる。
トイレでの時間ロスはマラソン大会では命取りだが、今回ばかりは体重を減らすのに有効である。
コースは5キロと10キロの2種類。制限時間はいちおう2時間となっているので、その時間内ならばゴール手前でUターンしてもう一回走ってきてもいいのだ。僕は10キロの部に出たのだけれど、そう考えると5キロの部でもよかったんじゃないかと思う。
コース上、渋滞している場所はたいてい給水所。
コース途中には給水所が何ヶ所か設けられていた。ここで給水しないとルールにより失格である。体重を減らすのが目的なので途中では水を飲まない方が有利だと思うのだが、ルールはともかく飲まずにはいられないのだ。
なぜなら暑すぎるから。
なにしろ暑い
さっき飲んだ水ですでにおなかいっぱいのはずなのに、給水所では給水せずにはいられなかった。どれだけ飲んでも筒の底が抜けたように体が水を欲している。マラソンというと健康的だとか思われがちだが、大会を選べばそれなりに体に悪そうなやつもあるということだ。
道中くどいくらいに熱中症に注意、って言われる。
この日の気温は予報で32℃。直射日光降り注ぐ海沿いの道には逃げ場がない。そういえばスタート直前に大会本部から「暑すぎるので距離をちょっと縮めました」というアナウンスがあった。優しいのかそうじゃないのかまったくわからない。
ここが折り返し地点。塩出し、の標記。
暑い。
なにせ海水浴場の前がコースなのだ。どうかしてる。
汗をかくために立ち止まる
汗をかくことを目的として走ってみて、わかったことがある。
走っていると風をあびて意外と汗をかかないのだ。かいているけどすぐに乾いてしまうのかもしれない。一番効いたのは全力で500メートルくらい走って、そのあと止まってしばらく休む作戦だ。これ、じんわりどころか止まった瞬間にゴバゴバと汗が落ちてくる。
風呂入ったみたいになる。
救護班もたくさんいて安心感あります。
途中で一台救急車が本部の方へ向かっていったが運ばれたのが選手ではないと信じたい。
この大会、給水所や救護人員など、選手に無理をさせるだけではなく、ちゃんとサポートもぬかりないから安心できる。
そして栄光のゴールへ。
へろへろになってゴールするとすぐに2回目の計量が待っていた。スタート時との差で順位を決めるのだ。
ゴール後の計量。
僕はスタート前に61.9キロだったので、1.4キロ減っていた。周りの友人に聞くと飲んだ分より減っていなかった、という人がほとんどだったので、1.5リットル飲んで1.4キロ減らした僕はまずます優秀なのではないか。
1.4キロ減っていました。
計量の直後、また水を1リットルくらい飲んだけど。
恐ろしい大会でした
この日、家に帰ってからも細胞レベルで乾いているような感覚があって夜までなにしろ水分を摂り続けた。それでもスピードを競うマラソンよりもみんな楽しそうだったのがよかったです。
友人が撮影してくれたゴール直後。人間塩出し昆布、の意味を理解した瞬間である。