日常にひそむ「材料かぶり料理」
いきなりだけどクイズです。
次の写真はある日のぼくの晩ごはんだけど、実はなにかが執拗なまでにかぶっている。それは何でしょう?
何かがかぶっている
大豆ばっかりだった
なんと大豆ばっかりなのだ。
ここまでかぶるのはさすがに珍しいと思うんだけど、一品料理でも意図せず材料がかぶっちゃうことはよくあると思う。
たとえばこんなんだ。
大豆に大豆をかけて食べている
お豆腐に醤油をかけるのってふつうだと思う。
でもそれって実は大豆に大豆をかけているのだ。姿も形も違う二人だけど、じつは異父兄妹で、育ちが違うだけみたいな話である。許されない禁断の恋。
あるいは感動の再会かもしれない。お互いに「お前どこいってたんだよ?」みたいな。
かつらみたいになった
ゆで卵とマヨネーズである。なにか髪型みたいになってしまったが、この組み合わせもよくある。そしてうまい。
でもマヨネーズって酢と卵だ。だから全体としてほぼ卵なのだ。
ゆで卵としては、自分は熱湯という厳しい境遇のなかを耐えてきたのに、マヨネーズの奴は外人と結婚して名前まで変えやがった、という感じか。でも相性は抜群である。
うっかりしていたが、これも小麦粉 on 小麦粉なのであった。天かすがおかずみたいな顔してるので見逃していた。
それぞれ違う場所で修行してきて、いま一つの皿を盛り上げる頼もしい兄弟に成長した、それがたぬきうどんであるという印象。
大豆すぎる
かぶっているという意味ですごいのはお味噌汁だろう。
「ジパングでは豆をあらゆる形に加工し、それを豆を原料とするスープに入れて食べている」と東方見聞録に載っていてもおかしくない。きな粉も大豆だし、とにかく大豆すごい。
かぶり度:大豆の4カード
そしてついに氷水である。
これはデイリーポータルZ編集部の安藤さんに言われてはっとした。むしろこれくらいの温度感がいいのだ。
最近お前冷たくなったな、と語りかける兄(水)の姿が思い浮かぶようである。しかも弟は浮ついている。
かぶり度:水の1ペア
そう、親子丼は由緒正しいかぶり料理なのでありました。
でも具体的な親子を想像して「天国で一緒に…」などと考えてしまうと悲しくなるので、その点については何も考えない方がいいようだ。
かぶり度:ニワトリの1ペア
お、西洋から来たなという感じのマカロニグラタンである。
マカロニは小麦粉をこねて茹でたもの。ホワイトソースは小麦粉とバターを炒めて、牛乳を加えたもの。ようするに小麦粉と牛乳だ。ザ・西洋。
小麦粉のいいところは、こういうふうに主食どうし重ねてもあまり違和感がないところだ。米はこうはいかない。おかゆの中にマカロニ状のごはんが浮いてる料理とか想像がつかないと思うのだ。
かぶり度:小麦粉の3カード
サウザンアイランドドレッシングは、マヨネーズとケチャップのソースに、みじん切りした野菜を加えたものだ。
だからそれを野菜にかければ、当然野菜の分がかぶる。そもそもサウザンアイランドとは、みじん切りにした野菜が千の島に見えるからとも言われているのだ。
偉そうに紹介したが、すべて当サイトライターのきだてたくさんに、締め切りの前日に教えてもらった受け売りである。
かぶり度:野菜の4ペア
お菓子の材料は、つきつめれば小麦粉、牛乳、卵なので、どのお菓子をとってもたいてい何かが被っている。
シュークリームでは、シューにもカスタードにもそれぞれ小麦粉、牛乳(バター、生クリーム)、卵が入っているので、結局3ペア成立である。
さらにチーズケーキだとチーズ、バター、生クリームを全部使ったりするので牛乳の3段活用になる。こうまでされると牛乳も本望かもしれないが、もともと子牛が飲むはずだった分・・と思うと若干せつなくもある。
かぶり度:小麦粉、牛乳、卵の3ペア
食材は限られ、加工は限りない
食品の加工ってすごいな、と思う。今回大豆を多くとりあげたけど、まだきな粉もおからもゆばも豆乳もあるのだ。
食材は、米にしろ鶏にしろ、もともと野生のものを、ご先祖様が長い年月をかけて人間の扱いやすいように改良してきたものだ。だからよい食材は限られていて、工夫しながら食べてきたということなのかなと思った。