駅間距離最短区間は84メートル
ちなみに、ウィキペディアによると日本で一番駅間距離の短い区間は高知県にある土佐電気鉄道後免線の一条橋駅ー清和学園前駅の84メートルだそうだ。
なるほど、これは近い。
ただ、この近さを見るためだけに高知まで行く甲斐性はぼくにない。
そもそも厳密に「鉄道」で、と言い出すと、この土佐電は路面電車みたいなものなので、駅間距離が短いのも当たり前だろうという話になってくる。
では「普通の鉄道」で短いところはどこなのか。
それは長崎県の松浦鉄道西九州線の中佐世保駅ー佐世保中央駅の200メートルということになるらしい。
確かに近い。
ただ、この近さを見るためだけに長崎まで行く甲斐性はぼくにない。
東京で駅間距離が短い区間といえばどこだろう
高知や長崎まで行くことはできないので、もっと身近なところに駅間距離の短いところはないだろうか? 身近な短いところはどこだ。
そういえば、山手線では日暮里ー西日暮里間が駅間距離が短かったはずだ。調べてみるとその距離500メートル。
事前に駅間距離84メートルとか200メートルなんて情報を仕入れてしまったので、物足りなさを感じてしまう。これは失敗した。
しかし、山手線の電車の長さが11両で220メートルらしいので、電車たったふたつ分で次の駅についてしまうぐらいの勢いなのだと考えると500メートルでもじゅうぶん短い。
日暮里駅から西日暮里駅が見える
実際に行ってみると、日暮里駅のホームから西日暮里駅のホームが見える。確かにこれぐらいの距離なら歩いてもそんなに時間はかからないような気がする。
そこで、実際に駅同士の近さはどれぐらいのものなのか、歩いてたしかめてみたい。
実際に歩く感覚で近さを検証してみたい
駅間距離は駅のどの部分の長さを測ってるのかJRに問い合わせて確認してみたところ、駅の本屋(ほんおく)から10メートル以内の場所を定めて、そこを起点にキロポスト単位で駅間の長さを測っているらしい。最小単位が100メートルなのはそのためだ。
しかし、線路の上を歩くわけには行かないので、普通に「駅だ」と思える駅の出入口から隣の駅の出入口まで歩いてみての、日常の感覚に近い部分で距離を測ってみたいと思う。
駅の出口から出口までの距離を測りたい
ウォークメジャーを0メートルにセット
ダイナミックな踏切を超え
日暮里駅を出発し、京成線と常磐線のダイナミックな踏切を超えてあっという間に西日暮里駅に到着。
西日暮里駅の東口に到着
はたして、日暮里駅から西日暮里駅までの距離はいくらか?
542メートル!
542メートル!
といっても具体的なイメージが湧きにくい。理屈としては東京タワーより長くて、スカイツリーより短い。ということはわかる、でもちょっとピンとこない。
仕方がない、ここは家にある書物をひもとくことにしたい。
「くらべる図鑑」小学館
この書物は、世の中のあらゆるものを、同じスケールで大きさを比べるという、重宝かつ面白い図鑑である。
この図鑑の情報によると、カナダのトロントにあるCNタワーがちょうど553メートルとあった。なにがちょうどなのかわからないけれど、とにかく553メートルらしい。
CNタワー553メートル
……CNタワー、実際に見たことないからさらにわからなくなってきた。
しかし、こう考えてはどうだろうか? CNタワーは日暮里~西日暮里間を歩いた距離とほぼ同じなのだ。
そうすると、俄然イメージが浮かびやすくなってきた(気がする)。
時間感覚で比べてはどうか?
やはり、距離を具体的にイメージするのはちょっと難しいかもしれない。
人は距離を感じるとき、距離をどんなふうにイメージするだろうか? 例えば「家から駅まで歩いて5分ぐらい」というように、距離を感じるときは「かかった時間」をイメージすることも多いのではないだろうか?
実は先ほど距離を測るさい、かかった時間というのもあわせて計っておいたのだ。日暮里駅から西日暮里駅まで歩いてどれぐらいなのか?
日暮里駅をスタート
良い感じにくたびれた商店街を抜けて
西日暮里駅到着
約6分30秒。これならたしかに駅に入って電車を待って、乗るよりも歩いたほうが近い。
日常生活で6分30秒ぐらいのことってなんだろう?
そうだ、銀行での両替だ。
……いきなり話があさっての方向に飛んでしまって申し訳ない。個人的に趣味で両替をよくするのだけど、銀行での両替がちょうどそれぐらいの時間なのだ。
10万円を2千円札50枚に両替する時間は、はたして何分ほどなのか? 実際に計ってみた。
スタート!
2分経過
4分経過
6分経過
7分経過
8分かからなかった
結果はご覧のとおり、約7分58秒。
銀行の中でちょっと迷ったりしたため、2分ほどロスしたことを思えば概ね6分ぐらいだったのではないだろうか?
日暮里駅~西日暮里駅間は、銀行で10万円を2千円札に両替するのと同じぐらいの時間で歩いていける。
どうだろう。分かりやすさを目指したものの、例えで迷走している雰囲気は感じ取っていただけるものと思う。
そしてぼくの手元には50枚もの2千円札が残った。まあ、使うからいいんだけど。
私鉄を含めた場合の最短区間はどこか?
ところで、先程はJR山手線内での短い駅間距離だった。今度は東京近郊の私鉄や地下鉄も含めて駅間距離の短いところを調べてみたところ、東急池上線の五反田駅~大崎広小路間が短いということがわかった。
木造ホームに三両編成の電車。ローカル感が漂う
東急池上線五反田駅は駅ビルの4階というやたら高い場所にある。
山手線接続駅とは思えない雰囲気
大きくカーブした先にすぐ次の駅が
この五反田駅から隣の大崎広小路駅まで駅間距離は300メートル。おそらく、東京近郊の鉄道路線では一番短いのではないかと思われる。
五反田駅を出発すると
カーブにさしかかり
もう隣駅が見えた
五反田駅を出発してカーブを曲がるとすぐに大崎広小路駅だ。
駅は古びてるけど、看板だけ新しい
ここも東京都内とは思えないホーム屋根
もともと、池上線は1928年に五反田駅~大崎広小路駅間が開通する前まではこの大崎広小路駅が終点で徒歩で五反田に乗り換えるシステムだったらしい。駅間距離が300メートルしかないのはそのためなのだ。
駅間距離300メートルは歩くとどれぐらいか?
さっそく五反田駅から大崎広小路駅までの距離と時間を計測してみたい。
スタート
ガードを抜けて
やたら高い池上線の高架を左にみつつ
大崎広小路駅に到着
417メートル
4分44秒
なにに例えたらわかりやすいのか?
五反田駅~大崎広小路駅の距離は417メートルと出た。この417メートルという距離はなにに例えたらわかりやすいだろう?
2千円札の横幅は154mm
先ほど両替した2千円札の横幅は154ミリメートル。五反田駅から大崎広小路駅まで2千円札をつなげていくとすると。
417÷0.154=約2707.79220
約2708枚ぐらいは必要ということになる。
541万6千円。
40代くらいの中間管理職のサラリーマンの平均年収ってこれぐらいじゃないだろうか? 結構リアルな数字が出た。
「中間管理職の平均年収は二千円札に換算すると、五反田駅から大崎広小路駅ぐらい」宮仕えの方々にはぜひ心のすみに留めて置いて頂きたい情報である。
50枚ぐらいじゃ足りない
ちなみに1万円札の横幅は160ミリメートルなので。
417÷0.160=2606.25
2606万円必要ということになる。五反田周辺であればワンルームのマンションぐらいの価格だろうか?
以上、意味もなく距離をお金に換算してみたけれど、ピンとこなさはCNタワー以上のものがあった。
地下鉄の出口同士だと超接近してるところがある
ところで、今までは地上に露出している鉄道のみを見てきた。しかし、出口から出口までという定義で考えると、地下鉄の駅にも隣駅の出入口が超接近している所がいくつかある。
例えばここだ。
東京メトロ日比谷線日比谷駅のA1出口と、同じ日比谷線の銀座駅C1出口だ。
一見なんの変りもない地下鉄出入口だけど……
この近さで実は別の駅の出入口なのだ
日比谷駅の方はビルの中にある出入口なのでちょっと見落としがちではあるものの、看板にはしっかりと「日比谷駅」と書いてあるので、後方にある銀座駅とは別の駅だということがわかる。
さっそくその距離を測ってみた。
日比谷駅の出入口から
銀座駅の出入口まで驚異の41メートル
なんと、たったの41メートル。ボルトなら5秒ぐらいで走ってしまう距離だ。
約31秒
わりとゆっくりめに歩いても30秒ほどしかかからない。30秒だとそうめんも茹でられないほどのあっという間の時間だ。
しかし、ここで一つ注意しておきたいのは、日比谷線の銀座駅と日比谷駅は地下で繋がっている。ということだ。
もう一度最初の地図をご覧頂きたい。
薄いピンク色の部分が地下なわけだけれども、銀座駅と日比谷駅はつながっているのだ。ということは、地下では日比谷駅と銀座駅の体感的な駅間距離は0メートル。ということになってしまう。
銀座駅と日比谷駅は別ですよ。という注意書きはあるが……
実は地下でつながっている銀座駅と日比谷駅
ほんとはもっと良い物件があるんです
実は駅同士が地下で繋がっていなくてまったく別なのに、出入口が超接近しているところ。あるんです。
それは有楽町線有楽町駅D9出口と、銀座一丁目駅1番出口だ。
有楽町駅D9出口
銀座一丁目駅1番出口
高速道路を挟んである
さすがに銀座駅と日比谷駅ほどは接近していないけれど、駅同士が地下で繋がっていないということを考慮すれば、じゅうぶん近い。
さっそく距離と時間を計測してみたい。
銀座一丁目の2番出入口から
有楽町駅に向かう
100メートルぴったり!
時間は約1分8秒だった
有楽町駅と銀座一丁目駅の体感駅間距離はちょうど100メートル。歩いて1分8秒ほどだ。ボルトが10秒弱ほどで走る距離は、普通に歩くと1分ほどかかるということが分かった。
1分ぐらいのことってなんだろう?
ところで、1分ぐらいのことってなんだろう?
銀行は8分ほどかかった。それならばスタバで注文して出てくるまでの時間はどうだろう?
実際に頼んで計ってみた。
コーヒーは苦手なので、スタバではいつも抹茶クリームフラペチーノを頼む。
ま、抹茶クリームフラペチーノ……
財布が見当たらない
……
できた!
1分54秒! 意外と早い。
しかし、有楽町駅から隣駅の銀座一丁目駅まで歩くよりも時間はかかった。抹茶クリームフラペチーノとか小学生がたのむようなやつじゃなくて、エスプレッソとか頼んでたらもっと良い勝負だったかもしれない。
で、結局なにがしたかったのか?
というわけで、隣の駅まですぐの駅をいろいろとめぐってみたわけだけれど、駅同士が近い。というのは定義次第で色々と見方が変わってくるので、一概にここが一短い。とは断言しづらいところではある。
最短区間は?といっておきながら結論としては「まあ、いろいろあるよね」だ。はっきりと答えを出さない姿勢は、まさに和をもって尊しとなす日本的態度でもある。