特集 2012年4月18日

東京パラレルワールドめぐり

ここは...どこだっけ...
ここは...どこだっけ...
進学や就職で、この春から東京で新生活を始めた人も多いだろう。

そんな皆さんに、手っ取り早く東京の有名スポットをご紹介したいと思う。これを読めば、同期の一歩先を行く東京通になれるはずだ。

それと同時に、すでに東京を知り尽くして今さら気になるスポットはない、という人にもぜひ見てもらいたい。いや、むしろそういう人こそ読んでください。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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新都心・新宿

まずご紹介したいのは、かつて副都心と呼ばれ、いまや名実ともに新都心となった新宿西口の高層ビル群。都庁を初めとした、日本有数の巨大ビルが立ち並ぶ姿は圧巻だ。この中で働いているという人も、まだ見たことがないという人も、ビルの谷間に立って見上げれば、敗戦から高度成長を遂げて、世界に誇る巨大都市となった東京のダイナミズムを感じられるに違いない。
右奥が都庁で、手前が京王プラザホテル、ということは、左がNS...え、す、住友ビル?その左奥が...あれ?ヒルトン?
右奥が都庁で、手前が京王プラザホテル、ということは、左がNS...え、す、住友ビル?その左奥が...あれ?ヒルトン?
この高層ビルのうちいくつかには、上層階に展望室がある。今回はその中でもっとも高い場所にある、都庁の展望室に行ってみた。エントランスから、直通エレベータで展望室のある45階まで直行である。そこからの眺めは圧巻の一言。広い東京の街を手に取るように眺めることができるのだ。
左から...六本木ヒルズ...?、東京スカイツ...いや東京タワー?、代々木のドコモタワー、そしていちばん右端...が、東京スカイツリー...。(マウスオンで代表的な建物名が出ます)
ちなみにニフティも昨年末、このエリアに新築された高層ビルに移転してきた。納豆を1万回かき混ぜた記事や、僕のダム好き記事がこの東京の中心から発信されていると思うと誇り高い。

さらに、超有名施設が密集しているあたりにズームするとこんな感じだ。
いちどは名前を聞いたことのあるだろう施設がギッシリ(マウスオンで施設名が出ます)
上から眺めて支配欲を満たすのもいいけど、地上に降りて街に出てみよう。

混沌とした渋谷

続いてやってきたのは渋谷。テレビなどではオシャレなギャルの街、というようなイメージで伝えられることが多いけど、実際はほかの街と大差ない、おっさんも垢抜けない男も大勢行き交っている、混沌とした街だ。でも渋谷と聞いていちばんに思い浮かべるのはこのギャルの聖地ではないかと思う。
渋谷のランドマーク、109前を左に行くと道玄坂を登る...はずだけど平坦だなあ
渋谷のランドマーク、109前を左に行くと道玄坂を登る...はずだけど平坦だなあ
最近の地形ブームでかなり知れ渡ったと思うけど、渋谷という土地はその名の通り、いくつかの川が合流する谷だった場所だ。だから川跡以外は地下鉄が突如2階の高さで飛び出てくるほど、坂道ばかりの街である。道玄坂とかスペイン坂など、一風変わった名前の坂を聞いたことがある人も多いだろう。渋谷の醍醐味は、オシャレな街並みがそういった急坂と細い路地で立体的に配置されているところだと思う。

渋谷でもうひとつの名物は駅前のスクランブル交差点。待ち時間がやや長いこともあって、歩行者信号が青に変わる直前には横断歩道を挟んだ両側がいつも黒山の人だかり。思わず戦国時代の合戦の風景を想像してしまって、青に変わった瞬間「かかれー!」なんて軍配を掲げたくなってしまう。
合戦開始の直前、両軍とも緊張感高まる!
合戦開始の直前、両軍とも緊張感高まる!
スクランブル交差点に人が入り乱れる様子は、井の頭線とJR線の渋谷駅を結ぶ橋の上からよく眺めることができる。
両軍入り乱れての大激戦!(うそ)
両軍入り乱れての大激戦!(うそ)

レインボーブリッジとお台場

次に向かったのは比較的新しい観光地、お台場。新しいと言えば六本木ヒルズとかミッドタウンなどを思い浮かべる人もいると思うけど、あちらは既存の街の再開発であるのに対し、こちらは海を埋め立てて街を作った、まさに新開発エリア。50年前はまだ海だった、20年前でも雑草伸び放題の荒野だった場所だ。
都心とお台場をつなぐ命綱、レインボーブリッジ
都心とお台場をつなぐ命綱、レインボーブリッジ
そういう成り立ちの街だから、名所というような場所は江戸時代に造られた元祖「台場」以外ほとんどなくて、ビルの中で買い物したり遊んだり、といった屋内レジャーがメインの超都会的な観光スポットだ。唯一、北側にあるお台場海浜公園の海辺を散歩するのは、まわりを近代的商業施設に囲まれた中で逆に非日常な感じがして気持ちいい。
静かなビーチに派手な商業施設とホテルが建ち並んで、いったいどこの国だ、という気分になる
静かなビーチに派手な商業施設とホテルが建ち並んで、いったいどこの国だ、という気分になる
近くにはパリの自由の女神像のレプリカもある、けど自由の女神って左利きだっけ
近くにはパリの自由の女神像のレプリカもある、けど自由の女神って左利きだっけ

老若男女誰にも鉄板、浅草

100年前いちばんホットだった東京の観光地が今年、ひさびさにいちばんホットの座に返り咲こうとしている。その観光地とは浅草。なぜかと言えば、すぐ近くに東京スカイツリーという化け物のような観光施設がオープンするからである。浅草にはかつて日本の高層建築のさきがけであり、関東大震災で崩壊した凌雲閣というタワーが建っていた。また、戦後には凌雲閣を模した仁丹塔という広告塔が立っていた時期もあり、何かと塔に縁が深い土地である。
左がアサヒビールの通称うんこビル、中央がビールジョッキを模した本社ビル、右にスカイツリー、まさかここがこんな名所になるとは
左がアサヒビールの通称うんこビル、中央がビールジョッキを模した本社ビル、右にスカイツリー、まさかここがこんな名所になるとは
歴史ある浅草寺と賑やかな仲見世、最新の観光スポットであるスカイツリー、のんびり過ごせる花やしきや隅田川の水上バスクルーズ、そして浅草ならではのグルメなど、老若男女日本人外人問わず、誰のニーズにも応えられる観光地となった浅草は、間違いなく東京で今年もっとも注目のスポットである。なんて、浅草にこんな謳い文句を使う日が来るとは少し前まで思いもしなかった。
浅草の象徴、浅草寺の雷門前はいつもすごい人
浅草の象徴、浅草寺の雷門前はいつもすごい人

図鑑に載ってたお茶の水

最後に立ち寄ったのは観光地ではないけど、こんな景色をいちどくらいテレビや本で見たことないだろうか。
オレンジの線は中央線、トンネルから出てきた地下鉄は丸ノ内線、これぞ東京の交通の縮図
オレンジの線は中央線、トンネルから出てきた地下鉄は丸ノ内線、これぞ東京の交通の縮図
ダイナミックに立体交差する線路、トンネルから出てきていきなり川を渡る地下鉄。僕が子供のころに見た電車の図鑑みたいな本には、必ずと言っていいほどこのお茶の水駅の写真が載っていたので、実際に見られて感激した。少し違和感があるけど。

正面奥に架かる緑色の橋の向こうは秋葉原である。上の景色に何となく見覚えがある人は、秋葉原に行った帰りにでもぜひ立ち寄ってほしい。

で、結局この記事は何だったのか

東京をよく知っている人は、この記事を見てどうも頭がもやもやしないだろうか。既にお気づきの人もいると思うけど、実は今回載せた写真、すべて現実の風景ではない。いや、現実の風景なんだけど見ることはできない、パラレルワールドのような世界である。

唐突に話は変わるが、先日ヤフオクで古本を買った。
ダム好きの触角が反応した
ダム好きの触角が反応した
本の内容はともかく、この表紙に使われているダムがどこか、考えても分からなかったのだ。いろいろな要素を当てはめていくと、長野県にある奈川渡ダムしかあり得ないんだけど、でも奈川渡ダムとは決定的に違う要素もあるのだ。
ほとんど奈川渡ダムだけど、あるはずのものがなかったりないはずのものがあったり
ほとんど奈川渡ダムだけど、あるはずのものがなかったりないはずのものがあったり
ダム好きの威信にかけて10分くらい悩んで、結局出た結論が「写真が裏焼き」、つまり写真を表裏逆に使ってしまっているのだ。信じられなかった。その結果、現実の風景とは左右が入れ替わり、表裏も逆になる。でもたったそれだけで、よく知っている景色のようだけどちょっと違う、頭の中に大きな違和感をもたらす景色になった。

このもやもやを体験してもらえないか、と思った。そこで今回は、東京の有名な景色の写真をすべて裏焼きにして東京案内の記事を書いてみた。

どうだろう。知ってる場所だけどちょっと違う、この写真どこから撮った?というようなもやもやを感じてもらえただろうか。

これから東京デビューする人は、この記事の写真をよく覚えてから出かけて、現実の景色に違和感を覚える、という貴重な経験をしてもらいたい。

すごくもやもやする

単に写真が裏焼きなだけで、よく知っているはずの場所が、見覚えのある、でも知らない場所になるのはすごく新鮮だった。

これからは撮った写真すべて裏焼きの複製を作ろうかなと思っている。そうすれば世の中の景色もダムもすべて2倍に増えるのだ。
個人的にお馴染みの宮ヶ瀬ダムも、こんなダム知らない!となる
個人的にお馴染みの宮ヶ瀬ダムも、こんなダム知らない!となる

あの写真集が文庫になります

5年前に出版させてもらったダムの写真集、その名も「ダム」が、このたび再編集してお求めやすく、持ち運びしやすい文庫になりました!

加筆修正や写真の差し替えだけでなく、なんと新規取材したダム9基を追加。文庫らしくないフルカラーの盛りだくさんな内容になっています。

発売日は4月25日。通勤や行楽のお供に、ぜひ見てみてください。詳しくはこちらへ!
裏焼き写真は絶対ありません
裏焼き写真は絶対ありません
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