バニラアイスとは香り
白いものにバニラエッセンスをかければ、それはもうバニラアイスというのは何も夢物語ではない。バニラアイスで重要なのは「香り」だと思うのだ。
香る! バニラ
電車で「香る! バニラ」と書かれたハーゲンダッツの広告を見かけた。そう、香り推しなのだ。「濃厚! バニラ」でも「甘い! バニラ」でもなく「香る! バニラ」。香りが重要なことが伺える。
口の中にバニラの香りが咲く
しかもこの広告なにかのついでではなく「香り」が全面に押し出されている。ディズニーランドで言えばミッキー的なポジションだ。ミッキーさえいれば多くの人が満足すると思う。香りとはミッキーなのだ。
ハーゲンダッツの香りは官能的らしい
バニラアイスは白い
バニラアイスの色をざっくり言えば「白」だ。ピンクのバニラアイスはないだろうし、緑のバニラアイスもないだろう。やっぱりバニラアイスは「白」なのだ。
程度の差はあるけれど、大体白い
バニラアイスの大きなポイントは「香り」と「白」の2つだと思う。さらに外でアイスを買った時のように球体にしてカップに入れれば完璧。このポイントを抑えればもう否定できないほどにバニラアイスになる。
ザ・バニラアイス!
上の写真はもう完全にバニラアイスだ。
もちろん写真では分からないけれど、ポイントであるバニラの香りも漂っている。バニラアイスに飢えた野獣ならばむせび泣きながら飛びつくと思う。
でも、本当は豆腐(木綿)に
バニラエッセンスをかけたもの
味はどうだろうか?
上記のポイントを抑えて杏仁豆腐にバニラエッセンスをかけて食べてみようと思う。味もバニラアイスになるのだろうか。
杏仁豆腐をカップに移し
バニラエッセンスをかける
香りは完全にバニラアイス。
杏仁豆腐は柔らかいのでアイスのように丸くはならなかったけれど、ちょっと溶けたアイスと思えばいい。さぁ、問題は味だ。
バニラアイスだ!
食べてみるとなんとバニラアイスなのだ。
後味は杏仁豆腐なのだけれど、口に入れた瞬間は間違いなくバニラアイス。見かけと香りのおかげで舌はバニラアイスと認識したようだ。人間の舌は案外バカだ。
彼はすごい
バニラアイス風豆腐
杏仁豆腐はバニラアイスになった。
では、先のページにあった豆腐はどうだろうか。視覚と嗅覚は完全にバニラアイスと認識しているので味覚は騙されるのではと期待している。
豆腐は安いので、
これがバニラアイスになると嬉しい
ワクワクしながら食べてみると驚いた。
杏仁豆腐はバニラアイスだったけれど、この豆腐はビックリするくらい豆腐なのだ。
見かけ、香りともにバニラアイスなのにうんざりするぐらいに豆腐。醤油などをかけていないために、むしろ普段食べる豆腐よりも豆腐だ。こんなにも豆腐を胸いっぱいに感じたことはなかった。
名探偵コナンのように「あれれ~」と思ってしまった。
あ~豆腐だ、という表情
バニラアイス風はんぺん
食感の問題かもしれない。豆腐はバニラアイスの食感とは程遠い。そこで「はんぺん」にバニラエッセンスをかけてみようと思う。以前北海道で食べたバニラアイスがフワフワの食感でとても美味しかったのだ。はんぺんもフワフワなのでいけるかも知れない。
はんぺんをカップに移しバニラエッセンスをかける
はんぺんにバニラエッセンスをかけて驚いた。なんと全然バニラの香りにならないのだ。はんぺんのままなのだ。フワフワしているのにこんなに強情なタイプとは知らなかった。
はんぺんは強情
バニラの香りもしないので、あきらめ気味に食べるとやっぱりはんぺんだった。バニラアイスの「バ」の字も感じられないが、はんぺんの「はんぺん」の文字は10回くらい繰り返し感じた。はんぺんだから当たり前だけれど。
はんぺんなので不味くはない
バニラアイス風しらす
高級感を出したらどうだろうと思い「しらす干し」にバニラエッセンスをかけることにした。もっと視覚にバニラアイスを訴えるのだ。高級なバニラアイスにはバニラビーンズのつぶつぶが入っていることがあり、しらすの目がそのつぶつぶに見えるのではと思ったのだ。
…見えなかった
デジャヴかな? と思う。
全然バニラエッセンスの香りがしないのだ。バニラエッセンスに無限の可能性を感じた子供の頃の自分にこの事実を伝えたい。しらすの方が強いよ、と。子供の頃の僕は意味が分からない、という顔をすると思う。
見かけも香りもしらすのまま
香りはあきらめて味だ! と自分のテンションを逆バンジーのように上げて口に運ぶと口いっぱいに漁村が広がった。荒れ狂う日本海に船を出す男たちが脳内に浮かぶ。要するにしらすなのだ。
食べた直後に書いたメモには「これ以上にないくらいしらす」と書いてあった。今までしらすを食べても「これ以上にないくらいしらす」と思ったことはない。素材の素晴らしさをバニラエッセンスのおかげで見つめなおすことができた。
「これ以上にないくらいしらす」と初めて思った
さらになぜか苦いのだ。
この苦さが「荒れ狂う日本海」を連想させたのだと思う。味はしらすなのだけれど、それとは別に苦味がある。これを出しているお店があれば、そのお店の食べログでの評価は絶対に低い。
写真が家の中ばかりなので夕日の写真をどうぞ
バニラアイス風イカのお寿司
僕はバニラアイスが好きなので、同様に好きな物にバニラエッセンスをかけてみようと思う。好きな物×好きな物でより好きなものになると期待したい。好きな物とはお寿司。ネタはイカだ。白いのでいけると思う。
イカのお寿司
バニラエッセンスをかけたがイカの香りと打ち消しあって無臭。どうにかバニラエッセンスの香りにしたくて、バニラエッセンスをどぼどぼかけたら、やっとバニラエッセンスの香りになった。甘い香りがするイカのお寿司は初めてだ。
醤油なら辛くて食べられないくらいバニラエッセンスをかけた
むせ返るほどの甘い香りに戸惑いながらイカのお寿司をほお張るととにかく苦かった。甘い香りとは裏腹にすさまじい苦味。昼間は弱気な副学級委員、でも夜はマッドサイエンティストみたいな味だ。顔がゆがむほど苦かった。
苦い
バニラエッセンスは苦い
夢のような甘い香りがするバニラエッセンスなのに、こんなにも苦味に悩まされるとは驚いた。ディズニーランドに行ったら、雑誌の裏に載ってる開運グッズを身につけたミッキーに出迎えられたような感じだ。
バニラエッセンスだけを舐めてみた
バニラエッセンスだけを舐めてみて初めて現実に気がついた。バニラエッセンスは苦いのだ。それはもう表情がゆがむほどに。アイドルだってこれを舐めたらアイドルスマイルは保てない。アイドルでない僕はなおさらだ。
苦い!
バニラエッセンスはエタノールやグリセリンで作られている。甘い要素がないのだ。甘いのは匂いだけなのだ。食虫植物に食われる虫の気持ちを理解した。僕が虫なら真っ先に食われると思う。人間でよかった。
苦い表情だけではなんなので、夏らしい画像をどうぞ
バニラアイス風大福
苦味を打ち消すには甘い物にかければいいのではと思い、大福にバニラエッセンスをかけてみることにした。よく考えてみればバニラアイスは甘い。忘れていた大きなポイントだった。
大福!
バニラエッセンスをかけたけれどバニラエッセンスの香りはしなかった。ちなみに部屋の中は甘い香りが充満している。なのに大福の周りはバニラエッセンスの香りがしないのだ。不思議だ。
全然匂わないんだよ!
食べてみると笑ってしまうくらいに大福だった。バニラエッセンスが大福とプニプニ部分と全く合わさろうとせず、口に入れるとまず苦味が来てその後はまんま大福。大福はやわらかいくせに柔軟性がなく、わが道を行くタイプらしい。大福の新しい一面を知ることができた。
バニラエッセンスの意味がなさ過ぎて笑っちゃった
バニラアイス風ゆで卵
バニラアイスの多くに卵黄が入っている。ということで今度は卵にバニラエッセンスをかけてみようと思う。バニラアイスのポイントが香り、白い、卵の3つになったので期待したい。
ゆで卵にかけた
ゆで卵にバニラエッセンスをかけると、甘いものを予感させる香りを放った。杏仁豆腐以来の期待を感じた。今のところメガネをかけて授業を真剣に聞いている学生だ。
今のところ優等生ですよ!
期待を胸にゆで卵を口に運んだ。 メガネをかけて授業を真剣に聞いていた学生が急にタバコに火をつけ授業中なのにエレキギターをかき鳴らした。ガッカリだ。しかし、その演奏はちょっと上手い。
というのも、毎度のことながら苦いのだけれど、ゆで卵が大人の味になっているのだ。初めてお酒を飲んだ時のような味。食べ続ければお酒のように病み付きになるかもしれない。
大人の味でした(バニラアイスとは全然違うけれど)
バニラアイス風大根おろし
バニラエッセンスが苦いのなら逆に苦いもので対抗してみてはどうだろうか、と考え大根おろしにバニラエッセンスかけることにした。
マイナス×マイナスがプラスになるように美味しくなるかもしれない。もうバニラアイスとは遠いところで戦っている気がする。でも、負けられない戦いだ。
大根をすって
カップへ
バニラエッセンスをかけると、大根の匂いはするけれど、遠くに甘い匂いを感じた。何もかもが遠い。メモ帳には「バニラは遠くになりにけり」と書いてあった。和風にポエミー。バニラの香りにポエミーな雰囲気はよく合うから味も期待したい。
ポエミーになる
さてさてと食べてみると苦いをはるかに遠く通り越して辛かった。やっぱり遠い。こうもバニラアイスにならないと、バニラエッセンスとはなんだろう、と哲学的なことを考え出してしまった。答えは香料だ。
辛かった
バニラアイス風ゆで豚
バニラアイスの材料には動物性脂肪と植物性脂肪のどちらかが使われている。ハーゲンダッツなどは動物性脂肪だ。ということで、動物の脂にバニラエッセンスをかけてみようと思う。
豚肉です
ゆでると白くなる
動物性脂肪と豚の脂は全く関係ないと思うけれど、「そうだ、これだ」と思った僕の勢いを大切にして、バニラエッセンスをかけてみると、今までで一番のバニラエッセンスのいい香りがした。これは期待できる。
いい匂い!
食べてみると驚くことに美味しいのだ。脂の甘みにバニラエッセンスの香りが足されることで今までにないスイーツになっている(バニラアイスとは程遠いけれど)。サバンナでこれを出すお店を出店すればメスライオンが列を成すと思う。肉食用スイーツだ。
予想外の美味しさにビックリ!
バニラアイス風きざみネギ
高級なバニラアイスには動物性脂肪が使われているが、安いバニラアイスには植物性脂肪が使われている。動物性脂肪(豚バラだけど)+バニラエッセンスは美味しかったので、今度は植物にバニラエッセンスをかけてみようと思う。
白ネギをきざんだものにかけます
野菜売り場を見ていたら白ネギが目に入ったのでこれをチョイスした。そして、バニラエッセンスをかけてみると、なんとビックリ。今までで一番バニラアイスに近いのだ。バニラアイスの甘い匂いと、どこか鼻を刺すような爽快感。それがそっくりそのまま再現されている。
完全にバニラアイスですよ!
食べた後に書いたメモ帳には「ネギの味」「ザ・ネギ」と書いてあった。香りの再現度は高いけれど、味の再現度はかなり低い。
人は顔ではなく中身、というけれど僕も初めてこれを食べてその通りだと思った。今まで顔だけを重視してきた自分を悔い改めたい。大切なのは中身だ。味だ。
あ~ネギだ…という表情
バニラアイス風クリーミー杏仁
最後にハーゲンダッツの「クリーミー杏仁」にバニラエッセンをかけることにした。杏仁豆腐にバニラエッセンスをかけたらバニラアイスだったので、もうこれなら完全にバニラアイスだと思うのだ。
クリーミー杏仁
バニラエッセンスをかけると香りは完全にバニラアイスだった。杏仁は自己主張が激しくないのだと思う。僕は彼のそういうところが好きだ。オレがオレがではない控えめなところが。
完全にバニラアイスです
食べてみてもやっぱりバニラアイスだった。
後味こそ杏仁だけれど、口に入れてしばらくはバニラアイスなのだ。甘く、冷たく、バニラの香り。素晴らしくバニラアイス。
問題は、クリーミー杏仁を買ってバニラエッセンスをかけてバニラアイスにするのなら、最初からバニラアイスを買えばいいという点だ。
でも、美味しいからいいや!
バニラアイスへの道は遠い
バニラエッセンスだけでは、なかなかバニラアイスにならないことが分かった。このほかにも、うどんやつけもの、ヨーグルトなどにバニラエッセンスをかけたのだけれど、バニラアイスにはならなかった。今後も研究していきたいのだけれど、バニラエッセンスをかぎすぎて好きな香りだったのに嫌いになってしまった。