特集 2019年11月29日

渋谷川が天井から飛び出す広場ができた

東京・渋谷駅の地下に新しい広場ができた。そこはなんと、渋谷川が上空を飛んでいるという場所だ。

なにそれどういうこと。さっそく見に行ってきました。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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渋谷駅のどこに広場ができた?

その広場「渋谷駅東口地下広場」は、開業したばかりの渋谷スクランブルスクエアと東急東横線などへの通路を結ぶ、新しくできた通路上にある。

この地図で「広場」と書いた緑色のところがそうだ。(下の「スクスク」は渋谷スクランブルスクエアです。なおこの見取り図は各種資料もとに作った目安であり、正確ではありません。)

この通路ができたことによって、渋谷駅の動線がまたちょっと便利になる。のだがそれよりも注目したいのは「川」と書いたオレンジの渋谷川の存在だ。新しい広場は渋谷川をくぐるように作られている。それも、ちょうど天井から川が飛び出すような位置関係になっているのだ。

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ここがその広場。なんとこの景色のなかに川がある!

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赤で囲ったところが渋谷川なのだ。頭の上を川が飛んでいるなんてかっこよすぎる。

取材の日は広場のこけら落としということで記念のイベントが開かれていた。

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しかし、みんなが座っているその席の天井が川なのだ。みなさん、渋谷川ですよ! 気づいてますか、ある意味で天井川ですよ? などと言いたくなってしまう。

しかしいったいどうしてこんなことになってるんだろうか。

数年前、ここらへんの工事に伴って渋谷川が地面に露出してたのを覚えている人もいるだろう。あれが関係している。いっかい整理してみたい。

どうして渋谷川が天井に見えている?

前提として、渋谷川は新宿から渋谷を経由して広尾のほうに流れていく川だ。現在では、渋谷駅より北では地下に隠れている。

渋谷駅の再開発に伴って、2014年に渋谷川の流路を変える工事が行われた。そのときに一瞬だけ川が姿を表した。

 

画面下にぽっかり空いているのが渋谷川だ。川は奥の建物に対して斜めになっているから、この写真は現在で言うとこの位置から撮ったものだとわかる。

上の図で「旧川」と書いてあるのが、上の写真、つまり2014年時点での渋谷川の流れだ。それが工事によってオレンジ色のほうに、つまりヒカリエ側にずれた。

そして宮下公園に近い側ではぐいっと川が曲げられた。

オレンジ色が曲げられた今の川だ。なので矢印の視点で広場を見ると、ちょうど渋谷川が正面を横切る形になる。

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しかしどうして渋谷川を曲げたんだろうか。その理由はいろいろあるが、ざっくり言えば再開発にあたってビルを建てやすくしたり、通路を作りやすくすることで人々の動線を改善するため、ということになるようだ。

識者と遭遇する

この取材は当サイト編集長の林さんと一緒に行ったのだが、そこに偶然すばらしい識者が現れた。

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昭和女子大学の田村圭介准教授(写真右)だ。渋谷駅の模型を作っていたりして、渋谷駅の構造については誰よりも詳しい。林さんの高校時代の同級生でもある。

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渋谷駅の立体模型が時系列になった」より (12/14まで昭和女子大で展示中!

広場に見える渋谷川のことが気になっていると伝えたところ、そういうことなら、としばらく一緒に歩いてくれることになった。これは嬉しい。

渋谷川のゆくえを追跡する

渋谷川は広場で一瞬だけ姿を表すが、その前後では壁の中に消えてしまっている。壁の中の渋谷川はいったいどこを通っているのだろう。ゆくえを追跡してみることにした。

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出発点はさっきからいる広場だ。真上に渋谷川が見えている。

考えてみるとこれは水道橋なのかもしれない。さらにいうと渋谷川のこの区間は下水扱いなので「下水道橋」だろうか。すると足元の柱は下水道橋脚だ。おもしろい。

ここから奥の階段のほうへ行く。

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渋谷川の真下に来た。こう見るとずいぶん幅広く感じられるが、川幅はいったいどれくらいなんだろうか。

東京都の下水道台帳というものによると、その幅は10メートルとなっていた。足元のブロックの1辺は60cmと考えられるので、それで数えた場合は約12メートルになった。なので確かにそれくらいなんだろう。

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階段を登ると、その奥は通路になっていた。ここを歩いているとき、林さんが「ここって元の渋谷川の流路じゃないですか?」と言い出した。

今いる場所と視線の方向は矢印のとおりだ。緑色の通路と、青い旧流路が重なっている! この通路こそがかつての渋谷川じゃないか、と盛り上がった。

もちろん、この図は(各種資料をもとに)ぼくが作ったものに過ぎないので、正確ではない。あとで詳しい方に聞いたところ、だいたい近いところは通っているものの、旧流路そのものではないとのことだった。

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それでも思いを馳せるにはいい通路だ。渋谷川ファンのみなさんにおすすめしたい。

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エスカレーターから渋谷川を見る

向こうのエスカレーターを降りたところに渋谷川があるんだよ」と田村先生がいう。

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渋谷スクランブルスクエアの一階からエスカレーターで下っていくと…

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これ!

なんとこの天井の奥に渋谷川が隠れているというのだ。

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天井を見上げる二人

このあたりを川が横切っていることになるようだ。川幅が約10メートルとするとこんな感じだろうか。

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できたてのおしゃれなビルの天井裏に川が流れてるとは、なんて素敵なことだろう。そしてそれが(ここにいる人のなかで)ぼくたちだけに見えているというのもこっそりと嬉しい。

エスカレーターと渋谷川の関係は、田村先生の渋谷駅の模型だとこんなふうになるようだ。

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渋谷駅の立体模型が時系列になった」より

エスカレーターを降りてきたあたりに渋谷川がある。川をずらしたからこそ作れるようになった道なのだそうだ。

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トイレの壁の向こうに川がある

こんな感じなので、油断してるといろんなところで川に出くわし、おっ、と思う。

たとえばこんな風景。

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矢印のところ、川なのだ。階段を降りたらその上に川がある。はじめて見る光景。

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この「+FUN」と書かれたところは、パウダールームとトイレが併設されている。そしてその奥は川だ。お化粧を直してるその壁の向こうは川なのだ。

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広場にあるカフェ。この椅子に座って眺める景色も、

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もちろん渋谷川ビューだ。

カフェで隣に座っていた人も「この広場、もっと渋谷川のことをプッシュしてもいいんじゃないかな」と言っていた。ぼくもそう思う。

しかし、じつはひそかにプッシュされていたのだ。それは、この柄。

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気づかなかったが、渋谷川の水の流れを意識したものなんだそうだ。なんと、そうだったのか…。


今はまだ空いてる

時間帯にもよるが、今のところこの広場と通路は渋谷駅の他の場所にくらべればまだまだ空いている。つまり渋谷川ビューを思うがままにできるのだ。

天井から川がはみ出してる部屋なんて初めてみた。とにかく面白いのでぜひ行ってみてほしい。そして渋谷川のゆくえを想像してほしい。


街角図鑑の街歩きをします

路上のガードレールみたいななんでもないものに詳しくなろうという趣旨の街歩きをします。

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主催は「まいまい東京」で、12月1日(日)の朝9時からです。早い!でも午前中には終わりますので、ぜひ。
https://www.maimai-tokyo.jp/event/tk19d025/

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