おまけ:赤湯温泉で疲れを癒す
白兎からの帰り道、寒さで縮こまった身体をほぐすべくフラワー長井線の始点でもある赤湯駅で降りて赤湯温泉に立ち寄った。
温泉は300円という格安料金で入れてとても気持ち良かった。白兎観光の際にはぜひお立ち寄りください。
既に1月も半ばに差し掛かってしまったが、今年はうさぎ年である。子だくさんでぴょんぴょん飛び跳ねるうさぎは「繁栄」「豊穣」「飛翔」などの象徴とされ、縁起の良い干支と言われている。
そんなうさぎ年にあやかるため、少しでもうさぎ度の高い場所へ行きたい。調べてみると山形県に「白兎駅」という駅があるらしい。よし、そこへ行ってみよう。
白兎駅があるのは山形県は長井市。日本で一番けん玉を生産している市だ。一時期けん玉にはまっていた時期があるのでそれだけ知っているが長井市についてそれ以外の情報は何も知らない。
白兎駅という駅名は駅周辺の地名に由来している。白兎(はくと)と呼ぶ地名は全国にいくつかあるが、白兎(しろうさぎ)という地名は全国で唯一だという。
駅が出来たのは平成元年12月。その1年前の1987年(うさぎ年)に近隣の神社で白兎のミニ絵馬を作ったところとても評判がよかったので、もっと町を盛り上げよう!ということで出来たのがこの白兎駅だ。平成ってけっこう最近だ!と思ったがもう33年前である。平成元年はベルリンの壁が崩壊する一方で白兎駅が出来た、そんな年です。
うさぎ年だし盛り上がっていたりするかなと思ったが、駅については特にそんなこともなく平常運転だ。
うさぎ年がきっかけで出来たわけだし、駅が出来てからでいえばまだ3回目のうさぎ年である。12年に一度なんだしもう少し浮かれてもいいのに、と思ったがここで浮かれすぎない奥ゆかしさが白兎地区の皆さんの美徳なのかもしれない。
一応来る前に周りに何かないか調べてきたのだが、観光地らしきところはこの葉山神社くらいしか見つけられなかった。狛犬ではなく狛兎がいるらしい。とりあえずここを目指そう。
葉山神社までは駅から約1.6㎞、歩いて20分ほどの道のりだ。誰もいないかと思いきや葉山神社方面から引き返してくるひとたちと2回ほどすれ違った。筆者と同じくうさぎ年だからやってきたのだろうか。
このまえニュースで都内のうさぎがいる神社が例年の2倍の参拝客といっていたが、この葉山神社も例年より人出が増えているといいなと勝手に白兎駅の盛り上がりを心配してしまう。なんたって12年に一度だからな。
ところで白兎という地名はこの葉山神社とも関連している。
その昔、この近くの池でとあるお坊さんが砂金で出来た仏像を拾い、それを祀るために社を建てた。その社というのがこの葉山神社の本尊に当たる山の山頂にある神社なのだが、そこまでの道案内をしたのが兎だったことから「白兎」という地名ができたと伝えられている。白兎地区では白兎を神の使いや幸せを招く兎として大切に扱い、家畜としての飼育を禁止してきたそうだ。
ちなみにこのバックグラウンド情報は駅にあった観光案内のQRコードを読み込んで仕入れた。そういうローカルな場所にあるQRコードからは意外と他のどこにも載っていない情報が得られたりするのでぜひ読み込んでみてほしい。
情報が武器になるこの時代、だれも読み込まなそうなQRコードこそ読み込んでライバルたちに差をつけろ!(ライバルって誰だ)
では、この町では兎は神聖な存在であるという知識を得たうえで、葉山神社の狛兎をご覧ください。
特にうさぎ年だからといって盛り上がっているわけでもなかったが、ひっそりとした中で訪問者を出迎えてくれる大きなうさぎは神秘的で、普通の狛犬よりも守り神っぽさがあった。
狛兎がある神社はこの葉山神社以外にも全国にいくつもあるが、白兎という地名とセットになることで守り神としての相応しさがグッとアップしている。さらにうさぎ年と重なることでそのパワーが増しているような気がする。うさぎ年のはじめにここに来れてよかった。
うさぎ年の記念イベントは4月に開催される。そうか、雪が多い地域だから冬場のイベントごとは大変なのか。こういうところから雪国の生活を過酷さが垣間みえる。盛り上がってないとかいってごめんね。
前回のうさぎ年に詰めたタイムカプセルをオープンするようだ。「十二年前の白兎が蘇る」とあるが、もう少し待った方がよくないか?いや、実は意外と変わっているのか?
白兎にも押し寄せるデジタル化の波を実感するのか、はたまた変わらなさを嚙みしめるのか、どんなイベントになるのか気になってきてしまった。白兎、やるな…
さて、葉山神社の狛兎は事前に調べて見に行こうと決めていたが、ここから先は特にノープランである。何か見どころはあるのだろうか。
とりあえず葉山神社の前を通る県道11号線を南下していこう。
どんな意味があるのかお聞きしたかったがお店の方が不在で話を聞くことはできなかった。残念。でも真っ白な景色の中だといきなり彩度の高いものが目に入ってくるだけで脳が刺激される気がする。いや、絵のせいか。目出し帽かぶりながら餅つきするってどんな状況だ。
これといった見どころがあるわけではないが、旅先ならではの普段見慣れないものに目を奪われつつ進んでいくと、なにやら見慣れない建物が現れた。
鯉を育てているところは養鯉場というのか。養豚場があるんだからまぁ養鯉場だってあっておかしくないのだが、初めて聞いた言葉だ。
せっかくなので覗いてみたいが、だれもおらず、入っていいのか分からない。入口の看板に「錦鯉販売は10時から」と書かれているが、この時の時刻は9:50。あと10分待ってみるか…
さて、10時を過ぎた。しかし誰も出てくる気配がない。。仕方ないので養鯉場のなのか、営むご家族の住居なのか判別がマナカナくらい難しいインターホンを押してみることに。「ご用の方は押してください」と書いてあるし、大丈夫だろう…
インターホンを押すとご主人の奥様らしき方が出てきてくれた。うさぎ年だから白兎に来たこと、このあたりの見どころを探している話を伝えたが、どうやら養鯉場を管理している息子さんが今日は不在らしい。記事のために写真を撮らせてくれないかと聞いてみるも息子さんに確認がとれないためNGとのこと。残念!
しかし養鯉場の中を見せてもらうことは出来た。そこには温かい温室の中でゆったりと泳ぐ錦鯉がたくさんいた。温度差も含めて一気に顔がほころんでしまった。何より、知らない場所にきて、たまたま見つけた温室に入り、そこで鯉を見るってめちゃめちゃ旅番組っぽい。思わず奥様に「へぇ~」と舞の海みたいな返しをしてしまった。
購入することも可能で高いものだと数万円の値が付いていたが、一番安価なものは500円から購入することができるようだ。一瞬ほしいなと思ったが、この先の旅のことを考えて踏みとどまった。一人旅を続ける中、片手が鯉で埋まるのは行動が制限されすぎる。
写真は撮れなかったし、購入も諦めざるを得なかったが、白兎で素敵な鯉に出会うことができた。
あまり遠くまでいってしまうと隣駅についてしまうので、鯉にも出会えたので駅方面に引き返すとしよう。
白兎駅を降りて約2時間半、駅周辺を歩き回り続けてだいぶお腹が空いてきた。このあたりでご当地グルメでも食べて白兎観光をバシッと締めたいところだ。と思っていたらちょうどよく飲食店が!
実は山形県はラーメン外食にかける費用が日本一、さらにラーメン店舗数も日本一のラーメン大国なのだ。確かにこんなに寒いとラーメンが食べたくなるのも分かる。白兎でも例にもれず、外食といえばラーメンということなのだろう。
さすがは日本一のラーメン県、お昼時ということもあり次々にお客さんがやってくる。しかも一人の男性客はもちろん、仕事仲間や子連れのファミリーなど、老若男女問わずなのだ。本当に県民性として外でラーメンを食べるという文化が根付いているのだと実感する。
スープはシンプルな醤油ベースで、あっさりというよりはコクの深い味わいで、昔ながらの、でも確実においしい一杯だ。トッピングで追加した焼きもちも醤油スープとよく合う。もちはうどん・そばより醬油ラーメンに入れよう。
ここ長井市では古くから馬肉を食べる食文化があり、親戚などが集まるハレの日には馬刺しが食べられてきたという。そんなわけで長井市のラーメンには馬肉のチャーシューが乗せられていることも少なくないのだ。たまたま見つけて入ったお店だがちゃんとご当地メニューにありつけた!
馬肉チャーシューは脂身が少なく、食感は少し硬めなので食べ応えがあり、個人的にはとても好きだった。濃いめのスープに馬肉の引き締まった味わいがすごくマッチしていた。
味も雰囲気も最高のお店を出るとこれまで厚く雲がかかっていた空から少しだが日が差していた。そして遠くに山々が連なっているのが見えた。今まで全く見えなかった遠景に大きな山々が突如現れたこの景色はなんだがすごく神々しく感じた。
幸運をもたらす白兎が最後にこの光景を見せてくれたような気がする。すごく人が集まる観光スポットがあるわけではないが、白兎はいいところでした。
白兎からの帰り道、寒さで縮こまった身体をほぐすべくフラワー長井線の始点でもある赤湯駅で降りて赤湯温泉に立ち寄った。
温泉は300円という格安料金で入れてとても気持ち良かった。白兎観光の際にはぜひお立ち寄りください。
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