この話のきっかけは佐々木淳子さん
さて、この話。実は妻から教えて貰った。佐々木淳子さんの漫画「SHORT TWIST」の中に上のようなコマがある。ちょっと画像が見えづらいので文字に起こしてみよう。
「少年誌では セリフのあとに必ず まるかてんか?か!がつくので新鮮でした。」佐々木淳子『SHORT TWIST』185頁(PFコミックス第2刷 1986年)より引用
これを読んで知っていた妻が、「~という事なんだけど知ってる?」というので「そんなの全然考えたこともなかった」と思って調べてみた次第です。
実は「SHORT TWIST」には少女漫画誌に掲載された話と少年漫画誌に掲載された話が混ざって載っているので、単行本の途中から句読点が付き出すという珍しい事になっていた。
上の2枚は、左が『SHORT TWIST』という短編で、掲載は小学館の「プチフラワー」との事。右は『ルオスG』という短編で、掲載は同じく小学館の「少年ビッグコミック5・6号」に掲載されたのだそうだ。
確かに、右の『ルオスG』吹き出しには句読点があり、左の『SHORT TWIST』の吹き出しには無い。このコマ以外を比べても同様になっていて、なるほど、確かに少年漫画だと句読点があり少女漫画だと句読点が無いんだな、という気もする。
でも1冊だけじゃなんとも言えないので他の漫画も比べてみます。
小学館 少年サンデー『神聖モテモテ王国』
少年サンデーで連載していたギャグマンガ、『神聖モテモテ王国』。少年誌に連載していたわけで、当然のように句読点がある。かなりたくさんある。
最近新装版が出たので、旧版の単行本も持っているけど新装版も全部買った。旧版は電子化しようかなと思ってます。
小学館 少年サンデー『究極超人あ~る』
同じく少年サンデーに連載してた『究極超人あ~る』。やはり吹き出しに句読点がある。漫画雑誌の中では句読点は統一されているようだ。少年サンデーは、ある方。
ちなみに『究極超人あ~る』は30代~40代の文化系男子に多大な影響を与えていて、ある種の行動原理にもなっている。そういう層を理解したい人はご一読を。ワイド版だと4巻まであります。
では他の少女漫画はどうか。
秋田書店 プリンセス『悪魔の花嫁(デイモスのはなよめ)』
秋田書店の月刊プリンセスに掲載されていた『悪魔の花嫁(デイモスの花嫁)』。これは少女漫画と言うことで句読点はない。
吹き出しに句読点が無いとなんだかスッキリした印象も受けるが、文章としての歯切れ感が弱くなるようにも感じる。あらためて吹き出しなんて見たこと無かったけど、気にし出すとなんだか気になって止まらない。
小学館 ビッグコミックスピリッツ『20世紀少年』
上の画像は映画化もされた「20世紀少年」からの引用。スピリッツは少年誌というよりは青年誌のような気もするけど、句読点がある。
ここまでの結果だと、少年誌と青年誌の吹き出しには句読点があり、少女漫画の吹き出しには句読点が無いという説が正しいように思う。
でも、どうもそんなに単純じゃなかった。
集英社 少年ジャンプ『ドラゴンボール』
佐々木淳子さんが書いてた通りならドラゴンボールの吹き出しにも句読点があるはずだけど、調べてみたら上の画像のように句読点はなかった。他のジャンプコミックスを調べても一様に句読点はなかったので、ジャンプコミックスには句読点が無いらしい。
もっとも、ドラゴンボールの場合はかなりの場合「!」で終わってるんだけど。
で、他の少年漫画も調べてみるとどうにも句読点が無いのだった。
上の段、左は『ヘルシング』で、右は『がきデカ』だ。それぞれ「ヤングキングアワーズ」と「少年チャンピオン」に連載されていたので少年漫画ということになるが、吹き出しに句読点はない。
下の画像は小湊の誕生寺で買った『地獄と極楽』という仏教教育漫画だ。僕が少年の頃に読ませられて軽くトラウマになった漫画であり、少年時代に読んだという意味では少年漫画なのだが、吹き出しに句読点はない。
以上の様に漫画を開いては吹き出しの句読点をチェックした。少年漫画でも吹き出し句読点があったり無かったりする。なんだろう?と思っていたのだが、ある共通点に気がついた。
あれ、句読点があるの、全部小学館の漫画じゃない?
どうやら小学館の少年漫画が共通点らしい
少年サンデー、ビッグコミックスピリッツ、ビッグコミック、ヤングサンデー、コミックIKKIなど、吹き出し句読点がある漫画だけを並べてみると、どうやらすべて小学館の漫画なのだ。
複数の出版社で単行本を出している漫画家さんのばあい、例えば『富江<全>』や『うずまき』で有名な伊藤潤二さんの本は、小学館から出ている『うずまき』には吹き出し句読点があり、朝日ソノラマから出ている『富江<全>』には吹き出し句読点がない。
また、冒頭に書いた佐々木淳子さんの『SHORT TWIST』同様、萩尾望都さん『イグアナの娘』も、ビッグゴールドに掲載された短編『学校へ行くクスリ』には吹き出し句読点があり、プチフラワーに掲載された『イグアナの娘』には句読点が無い。
つまり、句読点が無いのが漫画のスタンダードであり、小学館の少年誌と青年誌に載る漫画だけ句読点があるのだった。
では当サイトでは吹き出し句読点をどうしているか?
さて、以上を踏まえて当サイトに載っている漫画の吹き出しを見てみよう。当サイトのイラストレイター陣は、果たして吹き出しに句読点を使っているのだろうか。
ほぼ、吹き出し句読点はなかった。ほぼ、というのはたまに句点が出てくるから。法則性がある訳じゃなくて、特に気にせずに使ったり使わなかったりするようだった。
次はべつやくさん。昔は茶髪キャラでしたね、そういえば。
べつやくさんは吹き出し自体をあまり使わず、コマの端に文章を書くタイプ。なので、吹き出し句読点とは認定しづらいけど句読点は使っている。ただ、キャラクターの近くに独り言のように書かれるセリフには句読点が無い場合が多い。
北村さんの漫画も吹き出し句読点は無い様子。とはいえ、江古田のコンパ。の回ではママの吹き出しに読点が付いていたりもするので、多分気にせずに書いてるんだと思います。
そしてM・齋藤さんこと斎藤充博さん。一見すると句読点が無いのだけど、最後のページでは吹き出し句読点が出てくる。これはカエルが釣れなかったという事実と関係があるのかどうか。今度会ったら聞いてみたいと思います(多分関係ない)。
これからは吹き出し句読点を気にしてください
以上の様に、小学館の少年誌と青年誌に載っている漫画だけ吹き出し句読点があるわけですが、なぜかというと、読みやすさを考慮しての事なのだそうな。そういえばドラえもんとかも吹き出しに句読点ありますね。
さて、これで今までなにも気にしてなかった吹き出しの句読点が気になってしまう事でしょう。僕は気になって仕方ありません。あ、あった、あ、これはない、みたいに。
みんなも僕と同じように、吹き出し句読点が気になって仕方なくなれば良いと思ってこの記事を書きました。どうぞよろしくお願いいたします。