特集 2019年6月18日

沖縄の野良ポトスがヤバい

これ…ポトスなんだぜ

観葉植物として人気が高いポトス。

名前を聞いたことがない人でも一目見れば「あっ、これか!」と思うはず。それくらい馴染みの深い植物であるポトスだが、沖縄では彼らが野生化してドえらい姿になっているのだ。

人の手を離れ、野生を解き放ったポトスたち。その真の姿をしかと見よ。

1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。

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頑丈で育てやすい=野生化したらえらいことになる

つた状に伸びる茎に丸くかわいらしい葉をつけるポトス。『オウゴンカズラ』の和名に恥じない見た目の良さはもちろんだが、彼らが観葉植物として広く愛される理由はそのタフさにもある。

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鉢植えやハイドロカルチャーなどで広く販売されるポトス。安価な上に育てやすく園芸ビギナーからも人気が高い。原種は緑一色だが市販品には斑入りのものや葉色が明るい黄緑のものなど様々なバリエーションが存在する。

非常~~っに頑丈で、屋内でも屋外でも簡単に育てられる点にある。ホントびっくりするほど強い。

なんなら土に植えずとも、窓際に置いたビンに水を張って挿しておくだけで水中に根を張り成長していく。

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某大学のトイレに飾られているポトス。インスタントコーヒーの空き瓶に水を張っただけだがビッシリ根を張り、蛍光灯の光を目指してじわじわ茎を伸ばしている。強い。…もしこれが束縛から解き放たれたら一体どうなってしまうのか。

熱帯性気候にあたるソロモン諸島原産ながら寒さにも強く、屋内であれば温室でなくてもたくましく冬を越す。

そんな頑健さゆえに初心者御用達の地位を不動のものとしているポトス。

だが「育てやすい=野良化しやすい」である。

どれほどいい加減に扱おうが枯れずに葉を茂らせる、そんなポトスが温暖な沖縄で野生化してしまうと……こうなる。

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葉が!デカい!!
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お面が作れそうだな!と思ったが、デカすぎてお面を超越した何かになってしまった。
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傘になるじゃん。
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それどころか雨宿りできるじゃん。
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並サイズの鉢植えポトスと比較するとこのサイズ差!!同じ植物とは思えない。

これ、ポトスです……。

自然下の豊かな土壌、太陽光、どこまでもツタを伸ばせる空間を手に入れたポトスはこれほどまでに巨大化するのだ。

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完全に「ジャングルのしょくぶつ」然としている。これがポトス本来の姿……!
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別の植物じゃねえの!?と思ってしまうが、先端部の若い葉はたしかに見慣れたあの姿。沖縄の人はポトスをお店で買う必要ないのでは。

ポトス、おまえ…。もしかしてずっと大きくなりたいのをガマンしてたのか?

のんきに「ポトスは部屋の中でも元気に育つんだな~」なんて思っていたが、あれ実はあんまり元気じゃなかったのか?

街のいたるところで見かけるポトス。彼らが野生を解き放った姿は実に圧巻であった。

ビッシリ!野良ポトス

しかし!野良ポトスについて注目すべき点は葉っぱの大きさだけではない。

そのはびこり具合を見てほしい。

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これ、全部ポトスです。

「ツルがのびる」と書いて「蔓延る」とはまさにこのこと。

林道沿いの斜面が一面ビッシリとポトスに占拠されている。

さすが観葉植物界のタフネスキング。

こんな光景がいまや沖縄の、いや南西諸島のあちこちで見られるのだ。

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上方向にも伸びる!広がる!写真は生きながらにポトスに覆い尽くされたリュウキュウマツの木。樹冠もほぼ覆われ、ポトスの隙間からところどころ葉を出している状態。まともに光合成できてないのでは?

……こうなってくると困りものである。

地表を広く覆い尽くし、時には他の植物の頭上にかぶさるポトスは沖縄本来の植物が根を張り光合成を行う空間を食いつぶしてしまっている可能性が考えられるわけよ。

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びっしりとツルに覆われたリュウキュウマツの幹。さすがにこうなってしまったら成長に何かしらの影響が出るのではないか。

外来植物は動物に比べるとなかなか注目されにくい存在だが、それゆえに問題が顕在化する前に広範囲に高密度で侵入してしまいかねない。

アメリカに持ち込まれて大繁殖しているクズやイタドリのように「あ、ヤベッ。」と思った時にはもう手がつけられない状態になりがちだ。

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ポトスの茎にはこんなヒゲが生えており、これで樹木や岩に絡みつく。

ポトスも「すげえ~。野生のポトス生えてる~。映え~。」とかのんきに眺めてると、気づいた時には大問題になっているかもしれない。

また、知らず知らずのうちに敷地内にポトス藪が茂り、伐採に苦労したという話も聞く。

大きく育ったポトスのツルは太く頑丈で、切るのも容易ではない。引きちぎるなどもってのほかである。

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ポトスの太いツル。剪定ばさみでは歯が立たない太さ。

あと、わりと特殊な例だがハブ捕獲を趣味にしている男性からこんな話も聞いた。

「ハブがポトスの茂みに逃げ込むと大きな葉で姿が隠れるうえにその場で伐採することもできず、高確率で捕り逃してしまう」という。「でーじやっけー(とても厄介)だよ」という。

……野良ポトスが沖縄の文化に影響を及ぼしている一例として参考までに。

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ポトスの茂みに逃げ込むヘビ(アカマタ)。たしかにヘビにとってはいい隠れ家である。

ポトスには毒がある!?

ところで先ほどから並べられている野良ポトス写真を見て気づくことはないだろうか?

そう!虫や獣に食われた痕跡がほとんどないのだ。

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たいていどの葉っぱもキレイなまま。かじられたような跡はあまり見られない。

ご家庭でポトスを育てている人も害虫に悩まされた経験は少ないのではないか。

それもそのはず。ポトスにはある種の毒素が含まれているため動物たちに食われにくいのだ。

これもポトスが我が物顔で野良化している要因の一つだろう。

この毒とは不溶性シュウ酸カルシウムという物質で、針のように細くするどい結晶としてポトスの細胞内に存在している。
もし動物が食べてしまうとこの結晶が口の中やら消化管に刺さりまくるのだ。

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だからポトスを剪定するときなんかは手袋をつけないと肌の弱い人はかぶれたりするらしいよ。

たとえば人間がポトスの葉を2センチ四方のサイズにカットして咀嚼した場合、はじめのうちはキイチゴ、野イチゴ、グミの実を食んだ時のようなさわかな青臭さを感じる。

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粘膜にシュウ酸カルシウムを感じる…。

だがそのまま噛み続けると苦味を感じ、やがてヒリヒリとした刺激が舌に絡みつきはじめる。

「ああ、シュウ酸カルシウムのミクロな針が口腔内へ無数に刺さってんなぁオイ。」とはっきり認識できる。その後、徐々に舌や頬、喉が痛くなってくる。

なるほど、こら食えんわ。 

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だがポトスの原産地であるソロモン諸島にはオマキトカゲというポトスを平気で食うトカゲが生息している。シュウ酸カルシウムを無毒化できる生き物もいるにはいるのだ。(写真提供:二木勝)

ちなみにポトスと同じサトイモ科に属す植物の多くがこの不溶性シュウ酸カルシウムを体内に保持している。

有名なのが今回の記事の舞台である沖縄に自生しているクワズイモで、こちらの毒性はポトスよりはるかに強烈である。

なぜそんなことが言えるのか?そんな比較資料があるのか?

そんな資料は無いけど俺はどっちも食ったことあるからわかるんだよ。文句あるか。

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ポトスと同じサトイモ科に属すクワズイモ。
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生育に適した条件も近いようで、沖縄では利用者が同じ場所で見られることが多い。シュウ酸カルシウム地獄。

クワズイモの場合、葉を噛んでも噛んでも苦味はあらわれない。おっ、食べやすい!イケる!と思ったのもつかの間。咀嚼を始めてしばらく経ってから急に舌や頰がチクチク痛みだす。それはやがて焼けるような痛みに変わり、しばし悶えることとなる。数十分後に痛みは引くが、口腔内の粘膜(特に唇の裏側)が赤く腫れあがった。

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ポトスと違って苦味はないものの、痛みははるかに上。やはり2センチ四方を咀嚼しただけでこの顔。痛い。

余談だがクワズイモは姿がサトイモに似ているうえ、実際に地下茎もイモ状に発達するため誤認して重篤な食中毒を起こす例がある。十分に注意したい。

だが自然とは面白いもので、それほど強力なシュウ酸カルシウムを持つクワズイモの葉を食う虫が何種類も沖縄には生息している。

もしかするとそうした虫の中にはポトスを新たなごちそうとして歓迎しているものもいるのかもしれない。

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たとえばこのオキナワモリバッタはクワズイモの葉を食う。…じゃあポトスもいけるのかも?
 

最後にもう一度書くが持ち前の生命力でほんの小さな切れはしからでも根と芽を出すポトスは非常に野良化しやすい植物である。

安価で頑丈、よく増えるとくれば剪定や植えかえの際も扱いが雑になりがちだが、野外へ逸出しないよう十分注意したい。

これはポトスに、沖縄に限った話ではないかもしれないが。

そんなこんなでほとんど注目されないが、確実に沖縄の自然を侵食しはじめている野良ポトス事情をお伝えしました。

今後も沖縄野良ポトスの動向は注意しながら観察を続けていきたいと思います。

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花壇から溢れ出て野良になる寸前なポトスを発見。オーナーの思惑を超えて早く、長く、大きく育つ。それがポトスなのだ。
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