娘の涙は二度と涙を集めることはできない
紆余曲折あってようやく実を結んだ、娘の涙での氷泪石作り。現在2歳になった娘は、もはや上を向いて泣くことはなくなってしまった。
もう涙を集めることはできないが、この氷泪石にはあの頃の100日間が閉じ込められている。成功した氷泪石は娘が大きくなったら見せてみようか。
また参考にしたい人はいないと思いますが、今回の氷泪石の作り方は動画でも解説しています。見どころは100日間かけて集めた涙が真っ白に変わる悪夢の瞬間。
これはいわゆる「人工イクラ」の作成方法を利用している。スポイトではなく、おたまなどで大量に大きく作ることで「つかめる水」と呼ばれるものを作ることができる。
これは手軽でインパクトのある不思議科学実験として知られている。ただこれを『涙で作る』というのは世界初の試みではなないだろうか。それでは氷泪石part2を作ってみよう。
着水後、涙はすぐに水面へ浮かび上がりプカプカとボウルの中で漂っていた。念の為に”殻”がしっかりできるよう、ダメ押しで涙にパチャパチャとボウルの中の乳酸カルシウム入り水を手でかけてみた。
さあどうだ。意を決して手で掬い上げてみよう。
これが涙をそのまま殻に閉じ込めることで錬成した「氷泪石part2」である。
めちゃくちゃ氷泪石! 思ったよりもすごい氷泪石なんですけど!完成度高くない!? ちょっと感動して声が出てしまった。嬉しい。涙のクリアな透明感そのまま、固体にすることができた。
実はボウルに落とす前、涙を吸う際にスポイト内部に空気が入ってしまっていた。「やばいな」と思いつつもどうしても空気が抜けないのでそのまま落としてしまったのが、案の定、空気の入ったシャボン玉のような形で固まってしまった。
その失敗が逆に功を奏してまんまるクリアな「THE 氷涙石」が出来上がった。「幽遊白書」に出てくるホンモノの氷泪石もこういう球体なので再現度もかなり高い。
正直もうこれで満足くらいの出来栄えであるが、こっちの原材料である涙はもう少しあるのでもう何滴か垂らして作っていこう。今度は空気が入らないように、そしてもう少し低い所から落としてみた。
そして出来た氷泪石がこちら。
めちゃくちゃうまくいった。
本来の形とは異なるが「これこそ氷泪石」といえる涙の形、もっと言えばティアドロップ型の氷泪石が完成した。幽白をよく知らない人にとっては”涙を使って作られた宝石”とはこれを想像するであろう、ジャスト氷泪石。
涙に溶かしたアルギン酸ナトリウムは海藻に含まれるぬるぬる成分なのだが、その量が少し多めだったことで粘性が高まり落ちていく時にヌルッとしていた。落とした高さも低かったことで滴の型が壊れることなく固まり、このようなティアドロップ型の氷泪石が出来たのである。天才かもしれない。
いやいや結構、満足した。
さて、part2を楽しんだところで氷泪石part1の製作に戻ろう。「液体のりを涙で固める」というマッドな所業から気泡が抜けるのを待つこと3週間。思ったより1週間長くかかった。
娘の涙を集め始めてから数えれば約170日目のことである。長かった。冷蔵庫の片隅に保管されていた氷泪石part1の様子がこちら。
非常にクリアな涙スライムがうまく出来上がった。だが問題はこの涙スライムを氷泪石にきちんと成形できるかである。「柔らかめ」「固め」それぞれ確かめていこう。
さて、まずは「柔らかめ」だが……。
すごい綺麗。綺麗だけどこれは氷泪石じゃない。透明なスライムである。球形に成形できるような固さでもないし、粘度が高すぎてゴム手袋にベタベタにくっついてしまう。
しかしこんなこともあろうかと「固め」を用意しているのだ。そっちが本命である。どれどれ……
悪くない。さっきのはどちらかというと”固めな液体”であったが、こっちは”柔らかい固体”くらいの感じはある。ただ、正直こちらも固さは「水飴」くらいでずっとその形を保っていられる訳ではないようだ。
もっとホウ砂入りの涙を多く吹き付ける必要があるのか、それとももっと根本的な作り方の見直しが必要なのか、こちらの製法での氷泪石はまだ改良の余地があるようだ。
紆余曲折あってようやく実を結んだ、娘の涙での氷泪石作り。現在2歳になった娘は、もはや上を向いて泣くことはなくなってしまった。
もう涙を集めることはできないが、この氷泪石にはあの頃の100日間が閉じ込められている。成功した氷泪石は娘が大きくなったら見せてみようか。
また参考にしたい人はいないと思いますが、今回の氷泪石の作り方は動画でも解説しています。見どころは100日間かけて集めた涙が真っ白に変わる悪夢の瞬間。
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