また0からの涙採集

そうして再び採取から始めることになったのだが、そういえばこの活動を知った方から面白い情報を教えてもらった。「涙を入れる容器」というものが世の中には存在するというのだ。それが『涙壺』である。

葬儀の時に流れた涙を薬の材料として使うために集めたり、戦場に行った夫を待つ女が涙を入れるために使ったとか、世界各地にあるらしい。涙を特別な液体だと考える風習はやはりいろんな所であったようだ。
そしてこの写真の涙壺の形状は涙を集めるための合理的な形をしていてとても興味を惹かれる。何かをするのに特化した器具というのは美しいものである。
それはともかく再び涙の収集が始まった。以前、活動をスタートした時期に比べて泣く頻度は非常に少なくなったが、代わりに『トヨタのアクアのCMが流れると必ず泣く期』にうまいこと入ったためにそれを利用してうまく稼ぐことができた。どんなにご機嫌でもこのCMが流れた瞬間に泣く。
「赤ちゃんが泣き止む曲」は反町隆史さんの「POISON」やタケモトピアノなどが知られているが、その逆もあるようだ。そんなに嫌なら見なきゃいいと思うが、アクアのCMが流れた瞬間に顔をテレビに向けて凝視しながら泣いていまうのだ。皆さんも試してみてほしい。
↓これです↓ 曲はSUPERCARの「Strobolights」をyuiがカバー
娘の涙で「氷泪石」を作るには
活動開始から150日と少し、再び迎えた氷泪石の作成当日。今度は絶対に失敗できない。それに涙の量も正直なところ足りるかどうか非常に心配なほどしか集まっていない。ロスを最小限に抑えて作っていきたい。


今回の氷泪石づくりだが工程自体は簡単である。まずは涙に薬品を溶かしていく。
……「涙に薬品を溶かす」というワード、こう自分で打ってみるとすごい文字面である。マッドサイエンティスト感というか黒魔術感というか。


この時に溶かすホウ砂は液体の10分の1でいい。つまり水1ml(1mg)に対し0.1g溶かすわけだが今回、涙は0.6mlしか集まっていなかった。その10分の1のホウ砂となると0.06gである。
そんな細かい重量を手持ちのキッチンスケールでは計測することができない。量が少ないとこうして色々と支障が出るてくるのだ。
まあホウ砂の正確な量が重要なわけではなく、飽和させることが重要なので溶けなかった部分は無視すればいいはずだ。



これでホウ砂が飽和濃度まで溶けた涙が完成である。ホウ砂が出てきた時点でわかる人にはわかるかとは思うが、これはいわゆる「スライム」の作り方の第一工程である。
つまり現在作っているのは「涙を材料としたスライム」である。なるべく涙のクリアな質感をそのままにベタっとしないスライムを再現するためにホウ砂濃度の高い涙が必要なのである。そしてもう1つの重要な材料が「液体のり」である。

YouTubeでいろいろなスライム作り動画を見た結果、このフエキ「オーグルー」の補充用パックが透明度が高くてコスパも良く、クリアなスライム作りに適しているという知見を得た。
本来のりの性能になんの関係もない「透明度の高さ」がスライム作り界隈で高評価につながるとは、のりメーカーサイドも驚いているだろう。


ここからは意外にも力作業である。液体のりにホウ砂入りの涙を吹き付けながら混ぜていく。ホウ砂入り涙が液体のりに付くと、のりが固まっていく。
霧吹きのようなスプレーボトルを使っているのは液体のりに満遍なくホウ砂を行き渡らせるのに便利だからだYouTubeの知恵、ありがとう。

吹き付ける水分(今回は涙)の量が少ないほどハードなスライムができる。なのでホウ砂濃度が高いことが重要だ。涙を吹き付けるほどに液体のりは徐々に徐々に、固さを増し気泡で白く泡立っていく。
一気に大量に吹き付けると固さにムラが出るので要注意である。作業後半は液体のりがかなり粘り気を増していくのでめちゃくちゃ腕に来る。思いっきり混ぜたあと、新たに涙を吹き付ける前に一呼吸入れながらやるといい。

吹き付けと混ぜを繰り返していくと最初は容器にべったりと張り付いていたのりが段々とまとまりができて1つの塊になってくる。完成が近い。
ここからは少しの吹き付けで一気に固さが増すのでより慎重に少しずつ吹き付けるのが重要である。今回は「柔らかめ」と「固め」2種類を作った。より涙の質感に近いものを完成としたいと思う。


この時点ではかき混ぜた卵白のように気泡の入った白い塊であるが、ここから時間をかけて気泡を抜いていく。気泡の方がのりより軽いので置いておくだけで少しずつ上に上に気泡が移動して勝手に抜けていくのだ。
ここでしっかり時間をかけることがクリアな氷泪石を作る重要なポイントである。


これまでの試作結果によると固さにもよるが、気泡が抜け切るまで2週間はかかるはずなので冷蔵庫の隅にそっと寝ておいてもらおう。
その間に別のやり方でもう1つの氷泪石(氷泪石part2)を作ってみたいと思う。材料はあの惨劇で白くなってしまった涙である。
もう1つの氷泪石作成方法

冷蔵庫にずっと置いておいたら知らないうちに沈殿がもっと進んで息を吹き返している!実は先程の氷泪石(part1)作りにおいて途中で吹き付ける涙が足りなくなってしまい、こちらの涙も一部使用していた。それでもまだこんなにある。
本当はこの氷泪石part2の製作にこそクリアな涙が必要なのだ。真っ白になってしまった時は絶望したが、なんとか持ち直してクリアになってくれてありがとう。この涙でもう1パターン作っていく。

使用するのは「乳酸カルシウム/C₆H₁₀CaO₆」と「アルギン酸ナトリウム/(NaC6H7O6)n」という2つの薬品。
氷泪石part1で使用した「ホウ砂」がある程度の毒性を持つのに対し、乳酸カルシウムもアルギン酸ナトリウムも食品に使われるものなのでより安心である。
材料はこの2つの薬品と涙と水、つまり氷泪石part2は「食べられる氷泪石」なのである。(涙であることに目をつむれば)

まずは涙にアルギン酸ナトリウムを溶かすのだが、本来の分量は大体【溶液200mlに対しアルギン酸ナトリウム1g】である。
今回は溶かす涙が残り3mlしかないので必要なアルギン酸ナトリウムは0.015g。またもやそんな少量を計る術がないので、なんとなくこれくらいだろうという量を入れることにする。


乳酸カルシウムを水に溶かした水溶液を作れば準備は完了。
氷泪石part1では液体のりを固める”つなぎ”の役目に涙を使用した。ただその場合、主成分は「液体のり」だ。しかし、part2では涙をそのまま氷泪石にしてしまう。
涙に溶けたアルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウムが反応して涙液の周囲にアルギン酸カルシウムの<殻>が出来上がるという寸法だ。