ただ、これは私の家にある。毎年1月13日に私と飼い猫が小声の「むらさきかがみ」を聞くだけである。これに何の意味があるのだろうか。”無”しか生まれないマシーンである。誰かにプレゼントしようかしらと思ったものの、そんなことをしたら私が社会的に死ぬ。なぜ、こんな無駄なものを作ってしまったのだろうか。無駄……。無駄といえば……。
そもそも「紫鏡」ってみんな知ってるの?
作らなくては……と思い、デイリーポータルZの編集部の方に相談してみた。「殺人マシーンのアイディアを思いついてしまったのですが……」と、恐る恐る聞いたところ、「紫鏡ってなんですか?」と言われてしまった。私的には、全国的に知名度のある都市伝説だと思っていたので、衝撃的だった。
ツイッターでアンケートをとったところ、このような結果になった。
半数以上が知らないとは……。知っているけれど、忘れようとしているのかもしれない。そっちの可能性に賭けたい。
編集部の石川さんは、「自分の地元では紫鏡じゃなくて虹色の鏡でしたね」と言っていた。虹色の鏡……。なんかパリピっぽくて全く怖くないじゃないですか。
気になってtwitter上で聞いてみたところ、色々なバリエーションがあることを知った。「紫鏡」から派生したであろう「紫のイルカ」。ラッセンが思い浮かんでしまう。また、「紫のばばあ」。これを覚えているとトイレに引きずりこまれてしまうらしい。想像しただけで怖い……。
また、イルカから派生して、「ピンクのイルカ」や「イルカ島」というものもあった。「紫鏡」といい、単語自体は怖くない。しかし、謎の神秘性のある畏怖をまとった言葉である。これを生み出した人すごいな……。
児童文学書に載っていたという「血まみれのコックさん」という言葉もあった。ストレートすぎて情緒ゼロだ。
しかし、私は、かなりビビりな上、こういうのを信じてしまうので、けっこうブルブル震えている。
企画を強行します
企画的にこれは大丈夫なのだろうか。不安で胸がいっぱいになった。でも、閃いたからには、伝わらなくてもいいから作りたい。半数以上がきょとんとしてもいい。形にして人に見せるぞ。インターネットってそういう場所ですよね……。
まずは、「紫鏡」と呟かれる仕組みを作ろうと思う。
Arduinoというマイコンを用意した。アルドゥイーノと読む。穴に導電ワイヤーを挿すことで、手軽に電子工作ができるものだ。
これに、MP3が再生できるモジュールを繋げる。あと、ピカピカ光ったらカッコいいので、LEDテープも繋げた。
「Mp3を再生する」と「LEDを光らせる」のサンプルコードを組み合わせて、マシーンを動かすプログラムを作った。
USBでパソコンとArduinoを繋げて、この英数字を入れるだけで、指示通りにマシーンが動くなんてすごい。機械は従順。ありがとう。
続いて、鏡の方を作っていく。100円ショップの鏡をより「紫鏡」っぽくしたいので、3Dプリンターでフレームを出力する。
スピーカーとLEDをフレームに付けた。なんかいい感じだ。
次は、「成人式の前日になったらマシーンが起動する」という部分を作っていきたい。
使用するのは、SONYから発売されているMESHというデバイスと、IFTTTというウェブサービスだ。
IFTTTはウェブ上のあれこれを組み合わせることができるサービスだ。
これで、「1月13日23時45分になったら、MESHに信号を送る」というアプリを作った。なぜ、45分なのかと言うと、15分単位でしか選べなかったからだ。本当は、57分とかに設定したかった。
MESH側では、「GPIOタグ」という電気の入力と出力ができるデバイスに、FETボードという拡張アクセサリーをつけた。
これをすることで、電源の供給がをアプリ側でコントロールできるようになる。
IFTTTとMESHを組み合わせて、1月13日23時45分になったら、MESHがArduinoに電源を供給させて、マシーンが動くという流れが完成できた。
呪いを使ってみよう
そんな感じで完成したので、動いているところを見たいと思う。私は、自在に時空を操ることができるので、1月13日23時44分の世界にした。
はっ。記事だと音声が伝わらないことに今気付いてしまった。
動画でお聞きください。想像よりとても小さく「むらさきかがみ」とつぶやきます。
肝心の「紫鏡」の音声は、フリーの音声合成サービスで作成したものだ。なんかsiriのようになってしまった。Siri……。全世界のsiriをハックして、成人式の前に「紫鏡」って言わせるようにしたら、世界はどうなってしまうのだろうか。次の私はそこを目指すべきなのではないだろうか。
せっかくなので、別角度から見てもらってもよろしいでしょうか。いや、別角度から見たとて、何かがあるわけではないのですが、見てもらえたら嬉しいなあって。
普通の鏡として使えます。
ただ、これは私の家にある。毎年1月13日に私と飼い猫が小声の「むらさきかがみ」を聞くだけである。これに何の意味があるのだろうか。”無”しか生まれないマシーンである。誰かにプレゼントしようかしらと思ったものの、そんなことをしたら私が社会的に死ぬ。なぜ、こんな無駄なものを作ってしまったのだろうか。無駄……。無駄といえば……。
「無駄づくり展」を開催します
11月16日から原宿にあるベースヤードトーキョーで「無駄づくり展」を開催することになりました。
「Twitterで『バーベキュー』と呟かれると藁人形に五寸釘が打ち付けられるマシーン」や「パピコを一人で食べられるマウント」など、私が今まで作った無駄なものを展示します。
お知らせ慣れしていないため、強引に商品の紹介をするネット広告のようになってしまいました。あと、ですます調に変えました。
今回、制作した「成人式の前日に『紫鏡』とつぶやくマシーン」も展示します。
原宿という腰パンの人がたくさんいる街で、展示をやるなんて光栄です。会場は、漫画しかない本屋さん。座りながら漫画を読むこともできるので、漫画ついでにぜひ来てください。
「無駄づくり展」
日時:11月16日-11月25日 11時-21時(日曜:11時-20時)
場所:ベースヤードトーキョー 2F MANGA&SPACE
東京都渋谷区神宮前6-12-22
「白い水晶」という言葉を覚えていれば「紫鏡」の呪いが解けるということを聞いた。こういうのは、一体誰が考えているのだろうか。
本も出します
11月16日に「無駄なことを続けるために」という本を出版します。「無駄づくり」という活動を通して見えてきたことを書きました。好きなものを作りながら、自分の生活できる分だけお金を稼ぐことについてが主なテーマです。
ちょうどいい厚さですので、洗濯機のぐらつきが気になった際にぜひお求めくださいませ。