特集 2018年11月14日

成人式の前日に「紫鏡」とつぶやくマシーンを作って恐怖のどん底へ

「紫鏡(むらさきかがみ)」という言葉がある。まことしやかに囁かれている都市伝説的なものである。なんでも、この言葉を成人までに覚えていたら死んでしまうらしいのだ。

私は、小学生のときにこの言葉を知ってしまった。確か、「ふみコミュニティ」という小・中学生向けの掲示板で偶然目にし、震え上がった。忘れなくては……。そう思えば思うほど、頭に刻まれてしまう。紫鏡……。「紫」というのがまずなんか怖いし、「鏡」というのも怖さがある。この2つが組まれることで、より怖くなってしまう。

今、私は25歳だ。成人を過ぎて5年ほど経ったけれど、ありがたいことに死ぬ気配なく生きてこられた。ふとしたときに、「紫鏡」と思い出す瞬間はあった。そもそも、「覚えている」ってどういう範囲で言っているのだろう。

そんなことを考えていたら、「成人式の前日に紫鏡と呟くマシーン」を閃いてしまった。閃いたからには、作らなくてはいけない気がする。

2013年から、YouTubeチャンネル『無駄づくり』を開始し、無駄なものを作り続ける。
ガールズバーの面接に行ったら「帰れ」と言われた

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そもそも「紫鏡」ってみんな知ってるの?

作らなくては……と思い、デイリーポータルZの編集部の方に相談してみた。「殺人マシーンのアイディアを思いついてしまったのですが……」と、恐る恐る聞いたところ、「紫鏡ってなんですか?」と言われてしまった。私的には、全国的に知名度のある都市伝説だと思っていたので、衝撃的だった。

ツイッターでアンケートをとったところ、このような結果になった。 
 

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半数以上が知らないとは……。知っているけれど、忘れようとしているのかもしれない。そっちの可能性に賭けたい。
編集部の石川さんは、「自分の地元では紫鏡じゃなくて虹色の鏡でしたね」と言っていた。虹色の鏡……。なんかパリピっぽくて全く怖くないじゃないですか。

 

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気になってtwitter上で聞いてみたところ、色々なバリエーションがあることを知った。「紫鏡」から派生したであろう「紫のイルカ」。ラッセンが思い浮かんでしまう。また、「紫のばばあ」。これを覚えているとトイレに引きずりこまれてしまうらしい。想像しただけで怖い……。
また、イルカから派生して、「ピンクのイルカ」や「イルカ島」というものもあった。「紫鏡」といい、単語自体は怖くない。しかし、謎の神秘性のある畏怖をまとった言葉である。これを生み出した人すごいな……。

児童文学書に載っていたという「血まみれのコックさん」という言葉もあった。ストレートすぎて情緒ゼロだ。
しかし、私は、かなりビビりな上、こういうのを信じてしまうので、けっこうブルブル震えている。

企画を強行します

企画的にこれは大丈夫なのだろうか。不安で胸がいっぱいになった。でも、閃いたからには、伝わらなくてもいいから作りたい。半数以上がきょとんとしてもいい。形にして人に見せるぞ。インターネットってそういう場所ですよね……。
 
 

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まずは、「紫鏡」と呟かれる仕組みを作ろうと思う。
Arduinoというマイコンを用意した。アルドゥイーノと読む。穴に導電ワイヤーを挿すことで、手軽に電子工作ができるものだ。
これに、MP3が再生できるモジュールを繋げる。あと、ピカピカ光ったらカッコいいので、LEDテープも繋げた。

 

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「Mp3を再生する」と「LEDを光らせる」のサンプルコードを組み合わせて、マシーンを動かすプログラムを作った。
USBでパソコンとArduinoを繋げて、この英数字を入れるだけで、指示通りにマシーンが動くなんてすごい。機械は従順。ありがとう。

 

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続いて、鏡の方を作っていく。100円ショップの鏡をより「紫鏡」っぽくしたいので、3Dプリンターでフレームを出力する。

 

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スピーカーとLEDをフレームに付けた。なんかいい感じだ。

次は、「成人式の前日になったらマシーンが起動する」という部分を作っていきたい。
使用するのは、SONYから発売されているMESHというデバイスと、IFTTTというウェブサービスだ。
 

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IFTTTはウェブ上のあれこれを組み合わせることができるサービスだ。
これで、「1月13日23時45分になったら、MESHに信号を送る」というアプリを作った。なぜ、45分なのかと言うと、15分単位でしか選べなかったからだ。本当は、57分とかに設定したかった。

 

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MESH側では、「GPIOタグ」という電気の入力と出力ができるデバイスに、FETボードという拡張アクセサリーをつけた。
これをすることで、電源の供給がをアプリ側でコントロールできるようになる。

 

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IFTTTとMESHを組み合わせて、1月13日23時45分になったら、MESHがArduinoに電源を供給させて、マシーンが動くという流れが完成できた。

呪いを使ってみよう

 
 

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そんな感じで完成したので、動いているところを見たいと思う。私は、自在に時空を操ることができるので、1月13日23時44分の世界にした。

 
 

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23時45分になった…!

 
 

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「むらさきかがみ」

 

はっ。記事だと音声が伝わらないことに今気付いてしまった。

 

動画でお聞きください。想像よりとても小さく「むらさきかがみ」とつぶやきます。

肝心の「紫鏡」の音声は、フリーの音声合成サービスで作成したものだ。なんかsiriのようになってしまった。Siri……。全世界のsiriをハックして、成人式の前に「紫鏡」って言わせるようにしたら、世界はどうなってしまうのだろうか。次の私はそこを目指すべきなのではないだろうか。

 

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せっかくなので、別角度から見てもらってもよろしいでしょうか。いや、別角度から見たとて、何かがあるわけではないのですが、見てもらえたら嬉しいなあって。

 
 

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普通の鏡として使えます。

 
人々を恐怖のどん底に落とすマシーンを作ってしまった。
ただ、これは私の家にある。毎年1月13日に私と飼い猫が小声の「むらさきかがみ」を聞くだけである。これに何の意味があるのだろうか。”無”しか生まれないマシーンである。誰かにプレゼントしようかしらと思ったものの、そんなことをしたら私が社会的に死ぬ。なぜ、こんな無駄なものを作ってしまったのだろうか。無駄……。無駄といえば……。

「無駄づくり展」を開催します

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11月16日から原宿にあるベースヤードトーキョーで「無駄づくり展」を開催することになりました。
「Twitterで『バーベキュー』と呟かれると藁人形に五寸釘が打ち付けられるマシーン」や「パピコを一人で食べられるマウント」など、私が今まで作った無駄なものを展示します。
お知らせ慣れしていないため、強引に商品の紹介をするネット広告のようになってしまいました。あと、ですます調に変えました。
今回、制作した「成人式の前日に『紫鏡』とつぶやくマシーン」も展示します。

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原宿という腰パンの人がたくさんいる街で、展示をやるなんて光栄です。会場は、漫画しかない本屋さん。座りながら漫画を読むこともできるので、漫画ついでにぜひ来てください。

「無駄づくり展」
日時:11月16日-11月25日 11時-21時(日曜:11時-20時)
場所:ベースヤードトーキョー 2F MANGA&SPACE
東京都渋谷区神宮前6-12-22

「白い水晶」という言葉を覚えていれば「紫鏡」の呪いが解けるということを聞いた。こういうのは、一体誰が考えているのだろうか。


本も出します

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11月16日に「無駄なことを続けるために」という本を出版します。「無駄づくり」という活動を通して見えてきたことを書きました。好きなものを作りながら、自分の生活できる分だけお金を稼ぐことについてが主なテーマです。
ちょうどいい厚さですので、洗濯機のぐらつきが気になった際にぜひお求めくださいませ。

本の詳細
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