望遠鏡とテント……それはつまり、天体観測?
毎度おなじみメルカリのデータによると、島根県の人はメルカリで望遠鏡とテントを買いがちだという。「おうそうか、まあ、そういうこともあるだろうな」ってなもんである。
どうもこの「望遠鏡とテント」という組み合わせに、キャンプに出かけないと星空の観察ができないと思いこんでいる都会人くささを、僕は感じとってしまった。
はたして、島根の人は、望遠鏡やテントをよく買うのか。
デイリーポータルZライターで、元島根県民だったさくらいみかさんに話を聞いてみた。
――メルカリのデータによると、島根県の人はメルカリで望遠鏡とテントを買いがちだという話なんですが……。
さくらいさん「え、そうなんですか? なんでだろう……娯楽ないからですかね」
――「え、そうなんですか?」ってなりますよね……そもそもキャンプ行って望遠鏡で天体観測しようって人、まわりにいました?
さくらいさん「あー、キャンプ……小中学校の時は海にキャンプしにいきましたけど……それ以外そんな経験もなく、周りにもいませんでしたね、三瓶山とかでキャンプするのかな?」
――望遠鏡持ってる友達いました?
さくらいさん「聞いたことないですね……星は見やすそうではありますけど(街灯少ない場所とかで)」
こんな感じだ。
今回も、メルカリのデータはデータとして、このデータから連想した気になる場所に行く……というテイで今回は進めたい。
隕石を見に行きます
前置きが長くなった。
というわけで、望遠鏡とテント→天体観測→宇宙→隕石……ということで、前から見に行きたかった隕石を見に行くことにした。
地方で、地元の人が考える推しの観光物件があんまりない場合「何もないがある」といったトンチみたいなことを言い出すか「星空がキレイ」などとを言いだしがちである。
しかし島根県は「空気がキレイだから星がキレイ」といった「そりゃそうでしょうよ」みたいな理由ではなく、マジでそこに隕石が落ちたからという理由で作ったガチの資料館がある。
島根県松江市にあるメテオプラザだ。松江市といっても、島根半島の日本海側にある七類港にあり、かつては美保関町という町だった。
七類港は、隠岐諸島へのフェリー乗り場があり、お盆前のこの時期は、観光客と帰省客の車で港は大渋滞であった。
メテオプラザは、隕石の展示だけでなく、フェリー乗り場や温浴施設も兼ねている。
フェリー乗り場は人でごった返していたものの、フェリーが出港してしまうと、あたりはシーンと静まり返った。
さっそく、隕石を見に行きたい。
メテオミュージアムで料金600円を支払い中に入ると、バカでかいはやぶさが展示してある。
パイプ椅子の並んだホールで、隕石に関する映像を視聴する。映像が終わると、モニターの後ろにある隕石といよいよご対面である。
美保関隕石とは、1992年12月10日。旧美保関町惣津(そうづ)の松本さん宅に落下したという隕石だ。
この隕石は、松本さん宅の屋根と二階の床を突き破り、1階の床下に落ちた。当初、松本さんは「雷が落ちた」と思っていたそうだが、あとで調べると床下に、大きさの割にはやたら重い石があることに気づき、隕石ではないか? となり、大騒ぎとなった。
隕石のある部屋の展示室では、松本さん宅の模型や、実際に隕石が突き破ったカーペットや畳が、これでもかというほど展示してあり、さながら松本さん宅ミュージアムといった趣になっている。
この、隕石に対する熱量を感じ取ってほしい。
このミュージアム、美保関隕石の本物以外は、いくつかの隕石の標本と、松本さん宅の壊れた建材ぐらいしかなく、あとは隕石の学術的な説明と、隕石が落ちたことによる大フィーバーの様子が丁寧にパネル展示されている。
当時、隕石が落ちたことによる隕石フィーバーぶりはすごく、毛利衛さんや島根県知事のほか、きんさんぎんさんまでがやってきてなぜか隕石を拝んでいったという。
隕石の所有についていろいろとあったようだが、最終的に松本さんは美保関町に監理を任せることになったため、この隕石一点突破のメテオプラザがめでたく完成したというわけだ。
挙句の果てには、松本さんの名前がついた小惑星まで誕生し、地元の民謡『関の五本松節』に隕石が唄いこまれた新歌詞が美保神社に奉納され、隕石川柳が募集され、いん石まんじゅうまで発売(現在は製造中止)される始末で、松本さん自身、家に隕石が落ちたことにより、人生がガラリと変わったと、館内で再生されていたインタビュー動画で述べていた。
なんだか昔話みたいな話だ。
あと数十メートルずれていたら……
メテオプラザのある七類港の隣の集落・惣津にある隕石落下地点、つまり松本さん宅前に行ってみた。
美保関は、リアス式海岸の入り組んだ小さな浦ごとに鄙びた集落が点在し、景色としては抜群によい。
隕石一点突破の町おこしが成功したのかどうかはわからないが、美保関町は2005(平成17)年に松江市に併呑され自治体としては消滅した。
以上、島根県のレポートでした。
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