半ば諦め気味に吉野ヶ里遺跡へ行く
佐賀はスケジュールの都合上、福岡から長崎まで行くなかで取材を行わなければならない。
時間がない中、佐賀市へ向かう途上、吉野ヶ里遺跡の近くを通りかかった。
ひとまず、天ぷら鍋の謎はおいておいて、吉野ケ里遺跡を見たらなにかインスピレーションがもらえるかもしれないので、行ってみることにした。
吉野ヶ里遺跡の何がすごいかって、弥生時代700年を通して、小さな村がおおきな国になる過程の全てがここにあるということだ。卑弥呼のいた邪馬台国がここではないかという説もあることは、皆さん御存知の通りだ。
吉野ヶ里遺跡で見学できる範囲はめちゃくちゃ広く、おそらくすべて見て回ろうと思うと、それこそ数日がかりになってしまうだろう。
ただし、勢いで来てしまったため、長居はできない。
遺跡内には、出土した土器などを展示している施設もある。
主に何が展示されているかというと、甕棺(かめかん)と呼ばれる棺桶がずらりと展示されている。
この甕棺は、佐賀や福岡などに特徴的な棺桶で、この中になくなった人を入れて埋葬していた。
吉野ヶ里遺跡で特に有名なものは、首のない人骨が甕棺の中から発見されたものだろう。
教科書の吉野ヶ里遺跡のくだりは、この首なし人骨や、矢じりが体中に刺さった人骨、刃物で切りつけられた跡のある人骨などが載っていることが多いかもしれない。
これらは、戦争で死んだ人たちだと考えられている。
「弥生時代の集落」というと、のんびり米作りしてるのかなと誤解しがちだが、そんなことはなく、おそらく小さな集落ごとに様々な理由で頻繁に抗争していたのだろう。
印でも作るか
遺跡内を回っていると、印制作体験ができるコーナーがあった。
吉野ヶ里遺跡に来る前の日、福岡の志賀島の金印公園までわざわざ行ったぐらいの金印好きなぼくとしては、参加せざるを得ない。
教科書に出てくる「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」の金印はなぜか福岡の志賀島で出土したけれど、ここで制作体験できるのは「親魏倭王」という印だ。
もし、吉野ヶ里遺跡の国が、魏から印を授けられたら……という体の、架空の印である。こういった国の印章を勝手に作ると、御璽(ぎょじ)偽造罪にあたることになるが、すでにない国の架空の印なので安心して偽造することができる。コンプライアンス遵守の偽造印である。
観光協会に相談する
さて、普通に吉野ヶ里遺跡の観光を楽しんでしまった。天ぷら鍋の謎を解くインスピレーションは全く降りてこなかった。
「佐賀の人は天ぷら鍋を売りがち」をどう解釈すればよいのか。佐賀市内の荒物屋で話を聞いてみるしか無い。
とりあえず、観光案内所で佐賀市内にある荒物屋を聞いてみた。しかし、個人商店で荒物を商っているような店は、佐賀市内にはちょっともうないのでは? とのこと。
はて、どうしたものか。
――メルカリで、佐賀県の人は天ぷら鍋を売りがちということなんですが……佐賀の方って天ぷら鍋をよく売ったりするんですか?
観光案内所の方「うーん、特にそういうこともないと思いますけど……」
ですよね。「天ぷら鍋を売る」ってその理由がよくわからない。メルカリのデータの意図がまったく読めないのだ。
まあ、メルカリのデータはデータとして、佐賀の人は天ぷらをよく作ったりするのか。
観光案内所の方「天ぷらは普通に作りますが……頻繁にというわけでもないです」
――天ぷら鍋のメーカーがあるとか、天ぷら鍋の伝統工芸品があるとかも無いですか?
観光案内所の方「ちょっと聞いたことはないですね……」
――天ぷら鍋ってのが謎なんですよね……佐賀の名物で天ぷらが関わるシュチュエーション思いつかないですもん。
観光案内所の方「そういえば……呼子や唐津の方はイカの活造りが名物なんですが、イカの刺身を食べたあと、残ったゲソやミミの部分を、天ぷらにして食べる食べ方があるんです」
――おぉ! それは良い情報ですね。イカの活造り食べられる店って近くにあります?
観光案内所の方「佐賀駅周辺だと……こちらの店で、今開いてるのは……こちらですね」
と、情報がスルスル出てきた、さすが観光案内所……これから情報に困った時は観光案内所に来てなんでも聞こう……。
というわけで、イカの活造りが食べられる店にやってきた。
吉野ヶ里遺跡で印を偽造しているときに、数時間後にイカの活造りを食べることになるとは想像もしてなかった。
聞いたところ、イカの活造りを食べた後に、ミミやゲソの部分を天ぷらにして食べる食べ方は「後造り」と呼ばれるやり方らしい。ちなみに、この店では天ぷらの他に塩焼き、刺身などの後造りもしているという。
ひとまず、イカの活造りを注文する。
写真だとまったく伝わらないわけですが、ゲソやミミの部分はまだうねうね動いている。
特に必要ないかもしれないけれど、生きの良い様子を動画でも捉えております。
呼子のイカの活き造りに関しては、比較的新しい名物料理だ。
元々捕鯨で賑わった呼子の港町だが、捕鯨が厳しくなって以来、イカに注目した「河太郎」という料理店が、昭和40年代にイカの活造りを提供しはじめたところから呼子の名物となった。
したがって、昭和時代の旅行ガイドブックを読むと、イカの活造りに関してはまったく記述がないこともある。
うんちくはこれぐらいにして刺身をいただく。
うめえ……。
コリッコリのイカを噛めば噛むほどねっとりとした甘みが出てくる。九州の甘めの刺身じょうゆと合っている。
後造りはもちろん天ぷらにしてもらった。
揚げたてのの天ぷらだ、まさに「しゃおっ」(©三浦哲郎『盆土産』)という食感とともにイカの旨味が口の中に広がる……。
塩でも醤油でもどっちでもうまいなこれ……。
いったい、何をしているのかわからなくなってきたが、ひとまず「佐賀の人はメルカリで天ぷら鍋売りがち」というデータに関しては、佐賀はイカが美味い。という結論になった。
よろしいでしょうか。
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