広告企画 2023年9月7日

鹿児島で焼酎の蔵を見学する

鹿児島の人はメルカリで焼酎と炭酸水を買いがちだという。

鹿児島だから、焼酎というわけですね、なるほど。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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鹿児島ではどれほど焼酎が飲まれているのか

都道府県別の焼酎の消費量は、国税庁がまとめている統計データがある。せっかくなので、まずはそれを見てみよう。

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令和3年度成人1人あたりの焼酎消費量

ご覧の通り、鹿児島がダントツで1位だ。というか、1位から8位まで、九州沖縄の県がズラッと並んでいる。沖縄は焼酎というか、泡盛になると思うが、とにかく焼酎の消費のほとんどは九州で、なかでも鹿児島県はダントツである。

そんな鹿児島県の人は、メルカリで焼酎と炭酸水を買いがちだという。

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これは納得

なるほど、これは納得できる。なるほどなるほど、と首肯しつつ、なにをどうすればよいのかなこれは。

とりあえず、焼酎の石蔵を見学できる酒蔵に行って、焼酎造りを見せてもらうことにしよう。

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文化財の石蔵で作る焼酎

鹿児島市の北にある姶良市の重富という町に、文化財に指定された石蔵で焼酎を作っているメーカーがあるという。

酒蔵の見学を申し込み、現地に向かう。

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「石蔵ミュージアム」(白金酒造株式会社)

この石蔵は、平成13年に国の登録有形文化財に指定されたが、現役で使われている。

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予約すれば見学できます

白金酒造は、1869(明治2)年に創業。鹿児島最古の焼酎蔵といわれている。

この蔵元には西郷隆盛とのエピソードがあり、1877(明治10)年の西南戦争のおり、西郷隆盛が訪れ、蔵にある焼酎をすべて買い上げて行ったという。

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上には額に入った西郷札が展示してあった、松本清張の小説で読んだやつだ!

よく、時代劇で傷を焼酎で消毒する描写をみるけれど、そのための「しょつ(焼酎)」を買って行ったらしい。(もちろん、普通に飲む用途でも使ったらしいが)

このときの代金を、西郷隆盛は西郷札で支払っていったと、展示パネルには書いてある。

西郷札は、西郷軍が実効支配した地域内で強引に流通させた通貨だ。ほぼ信用がなく、西郷軍が敗北すると価値ゼロとなった。

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鹿児島市内の西郷像。遠くからみると分かりづらいが、つま先から頭のてっぺんまで高さ5メートル以上ある

この酒蔵のように、西郷札で半ば強制的に軍事物資を徴発された商家などは、経営が傾いたところも多いだろう。この蔵元はなんとか大丈夫だったみたいだが。

なお、立て籠もった城山を政府軍に包囲され、岩崎谷の洞窟に潜んでいた西郷隆盛は、最後の晩餐でこの「白金乃露」を飲んだと言われている。

これらの縁で、毎年12月に東京の上野で行われる西郷隆盛の誕生祭にはこちらの酒蔵で作られた「白金乃露」が供えられる。

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歴代の「白金乃露」の徳利や酒瓶
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ミュージアムとなっている石蔵は明治時代に作られたそのままで、壁にはいいカビ菌がついているのでそのままになっている
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焼酎醸造のシーズンは8月から

宮崎や大分の焼酎は麦、泡盛は米(インディカ米)から作られるが、鹿児島の焼酎は、さつまいもから作られる芋焼酎がほとんどだ。

この蔵の焼酎醸造のシーズンは、さつまいもが収穫されるこの時期、8月から年内いっぱいぐらいで作られる。

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もろみを作る甕(かめ)。甕が半分土に埋まっているのは、温度管理がし易いから

まず、水、米麹(デンプンを糖に変える作用をもつ)、酵母(糖をアルコールと二酸化炭素に変える作用をもつ)を甕で発酵させてもろみを作る(一次発酵)。

そして、磨いて(洗って)蒸したさつまいもを投入し、さらに発酵させて(二次発酵)出来上がったもろみを蒸留器に入れる。

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杉樽を使った蒸留器。この杉樽を作れる職人はもう日本にひとりしか残ってないという

二次発酵が終わったもろみは、いよいよ蒸留されることになる。

同じ米から作るお酒でも、日本酒と焼酎が大きく違うのはこの蒸留という工程があるかどうかによる。

上の写真でいうと、もろみを真ん中の杉樽に入れ、左の樽で沸かした蒸気をあてると、沸点が水よりも低いアルコールだけが気化し、管を登っていき、その気化したアルコールが右側の樽で冷やされて液体に戻り、アルコール度数37〜38度の焼酎の原酒としてドバドバ出てくる。

この出てきた原酒を1年ほど寝かせ、水を加えてアルコール度数を25度程度にして、焼酎として出荷する。

なお、最初の蒸留で出てきた原酒をさらに蒸留させると、アルコール度数がどんどん高くなり雑味などが少なくなる。焼酎の場合それが、甲類焼酎と呼ばれる焼酎だ。

かなーり端折ったが、焼酎製造の仕組みの大きな流れは上記の通りとなる。

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飲み比べるしかないでしょうね……

酒蔵の見学が終わったあと、いよいよというかなんというか。焼酎の飲み比べができるコーナーに移動する。

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焼酎の試飲コーナー

毎晩のように飲酒する習慣は2年ほど前にやめてしまったため、今回の旅の間もほぼお酒は飲まなかったのだが、せっかく焼酎の飲み比べができるということなので、試飲することにする。飲酒の習慣をやめただけで、お酒が嫌いになったわけではないんです。信じてください。

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「白金の露」を頂きます

焼酎は、二次発酵に芋や麦を使うかどうかの他に、米麴に使う米の種類、使う麹菌(黒麹、白麹、黄麹)の種類、蒸留に使う樽の素材(木樽、金属の樽)など、様々な要素で、その味わいが微妙に異なってくる。

試しに、同じ「白金乃露」の、木樽で蒸留したものと、ステンレス蒸留器で蒸留したものを飲み比べてみた。

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ムハー……うめえな

まったく何も知らされずに飲んでも「味や香りがすこし違うな」と分かる程度に味が違う。

木樽で蒸留したほうは、雑味が少なく、ステンレスの方はスッキリしている。どっちがいい悪いとかではなく、味わいがこれほど違うのがわかるのが面白い。

さて、すっかり酒蔵見学に夢中になってしまったのだが、一応、メルカリで焼酎を買うかどうか……聞いてみておきたい。

――(かくかくしかじかで)鹿児島県の人はメルカリで焼酎と炭酸を買いがちらしいんですが……。

酒蔵の人「え、そうなんですか? ……メルカリで買ったことはないですね……」

――ですよね……(笑)

酒蔵の人「わざわざネットで購入することはあまりないですね、スーパーに行けば売ってますし……うちの商品もオンラインで販売はしていますが、県外の方が購入されることが多いですね」

――なるほど、県外……ですよねー。

鹿児島県だから、焼酎と炭酸水。確かに納得できるけど、よく考えると鹿児島の人自身はわざわざネットで買うことないか。という話ではある。

ただ、鹿児島の人は焼酎をめちゃくちゃ飲む。ということはわかった。

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まんまと焼酎と炭酸水を買ってしまった……これは断酒を少し解禁して、ちょっとづつ飲もう……

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メルカリの作った47都道府県タオルに書かれたことは本当なのか。全部行って確かめる旅に出ます。

企画説明はこちら!
メルカリの47都道府県タオルに書かれたことが本当なのか、全部行ってみることにしました

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