天ぷらにゆかりがあるのはわかるけれど……
長崎の古書店に行き『ながさきことはじめ』(長崎文献社刊)という書物を入手した。
この書物によると、天ぷらはポルトガル語のTEMPERO(調理中)あるいは、スペイン語及びイタリア語のTEMPORAが語源と言われる。
これは、キリスト教における金曜日の祭り(昇天祭)の名前で、本来は「時期」という意味を持つ言葉であるという。昇天祭では、潔斎断食の時期で、獣の肉を食べず、魚や玉子などを食べた。これがいつしか、この時期に食べる魚や玉子のことをテンプラというようになり、それが日本料理の天ぷらとなった。
長崎での天ぷらの元祖は1820(文政三)年に勝山町の料亭「竹泉」で作られたものが最初で、それを長崎奉行所の料理人が調理法を江戸に持ち帰って広まったとされる。
そして、最後に“長崎の「てんぷら」は「つけあげ」といって独特、冷えてもおいしい。”
とある。
長崎の天ぷらは独特……なのか。
「天ぷら鍋を買いがち」ということは、この「独特な天ぷら」を、長崎の人は天ぷら鍋を買って作っている可能性がある?
観光案内所に話を聞こう
佐賀で、観光案内所で話を聞いたところ、問題が一気に解決した(してないが)ので長崎でも話を聞いてみよう。
――あの、すみません、長崎の独特の天ぷらがあると伺ったんですが……。長崎独特の天ぷらを食べられるレストランなどありますかね……。
観光案内所の方「長崎独特の天ぷら、あぁー、長崎天ぷら……」
どうやら、長崎天ぷらという、普通の天ぷらとは違う天ぷらがあるというのは、知られているらしい。
観光案内所の方「長崎天ぷら、衣がちょっと違っていて、甘いらしいんですが……食べたことないんですよ……」
――農水省のウェブサイトの長崎天ぷらの解説をよむと、一般家庭で作られてると書いてあるんですけれど、長崎の方は家庭で長崎天ぷらを作ることがある?
観光案内所の方「いや、家庭で作るのは普通の天ぷらですね……」
即答である。
――長崎の方は家で天ぷら鍋を使った揚げ物をよくするとか、そういうことはありますか?
観光案内所の方「揚げ物はしますけども、回数が多いかどうかはちょっとわからないですね、月1回ぐらい?」
一般家庭での天ぷら鍋を使った揚げ物の頻度の平均が、どれぐらいなのかわからないけれど、筆者の家では油の処理が面倒くさいので、年に1回か2回ぐらいしかやらないのに比べると、月イチは多いと感じられた。が、これが全てではないことはもちろんのことである。
観光案内所の方「長崎天ぷらを提供している店、ネットで検索すると、3軒あるんですが、そのうち1軒は閉店してしまっていますね……残りの店で一番近いのはこちら……」
――ちなみに、天ぷら以外……例えばお菓子の揚げ物を家庭でやるといったようなことはないですか、あの、ねじってあるやつとか?
観光案内所の方「あぁ、よりよりですかね、たしかに揚げてますけど家庭で作ることはないですね。メーカーによっては製法が一子相伝みたいな感じですよね……」
長崎の人は天ぷら鍋を買いがち。という謎は謎のままだが、長崎天ぷらという存在はわかった。もう、こうなってくると、長崎天ぷらを実際に食べてみたくなってしまう。
結局、刺身定食を食べる
観光案内所で教えてもらった店の一つに向かう。
――こちらで、長崎天ぷらを作っておられると聞いて伺ったんですが……。
店の方「あー、長崎天ぷら。単品の料理としては提供してないんですよ」
――そうなんですね……コース料理なんかの一つという感じですか?
店の方「そうですね、衣が違ってて、フリッター(ヨーロッパで食べられる揚げ物)のような感じで、砂糖が入ってちょっと甘いんです。そのまま食べられて、冷めても美味しんですよ」
――長崎では有名なんですか?
店の方「どうかな……長崎の人でも知らないひとは多いんじゃないかな……ウチで作るやつはメレンゲを泡立てて、普通の天ぷらよりもちょっと手間がかかるんですよ。特別な時以外はあまり作らないですね」
長崎天ぷら、ますます気になってしまう。
長崎天ぷらを求めて……
3軒あるとされる長崎天ぷらの店のうち、1軒は閉業してしまっており、もう一軒は普通には提供していない。残りの1軒にも行ってみたところ、店休日のようで、店は閉まっていた。
仕方がないので、駅の食品売り場の天ぷら売り場で売っている天ぷらを買ってみた。
これは長崎天ぷら……では、ない。(普通の天ぷらとして美味しかったです)
天ぷら店の人は、長崎天ぷらの存在は知っているものの、食べたことはない。とのこと。
家で作る天ぷらの頻度も、家でやる分はそれなりに普通、だそうで、特に天ぷら鍋が……ということもないようだ。もちろん、メルカリで天ぷら鍋を買ったことは無い。
でしょうね〜。
しかし、長崎天ぷら、いったいどうすれば食べられるのか……。
熊本に行く途上で天ぷら店で天ぷらを食べる
明くる日、熊本に向かう途上で、長崎市内から山を一つ越えた茂木港という漁港にやってきた。
もともと茂木町という町であったが、1960年代に長崎市に編入された町だ。びわの栽培で有名なため、ご存知の方も多いだろう。
今回はびわではなく、この茂木に、天ぷら専門店があるというので、やってきた。
長崎天ぷらかどうかはわからないけれど、ひとまず食べてみたい。
開店と同時ぐらいに伺ったので、揚がるまでちょっとまっててと促され、しばらく待ち、でてきた天ぷらがこちら。
芋の天ぷらは、揚げたてで、サクサクの衣と芋の甘さがちょうどよく、美味い。もう、言わなくてもわかりますよね。
白身魚の天ぷらはちょっと変わっており、パン粉がついたコロッケ状の衣だが、中の白身魚がふわふわで柔らかく、めちゃくちゃおいしい。
ただし、残念ながらここの天ぷらも「長崎天ぷら」ではなかった。
長崎天ぷらについて、お店の人に聞いてみた。
――長崎天ぷらを探して色々回ってるんですが……長崎天ぷらはご存知ですか?
店の人「あぁ、長崎天ぷら、ありますね。料亭とかでないと出ないんじゃないかな」
――高級料理?
店の人「どうかな? 衣がちょっと違うんですよ、甘くて……」
――写真見たことはあるんですけど、衣の感じは沖縄でよく食べる「さかなの天ぷら」によく似てるなって思いました……こちらの方って天ぷらはよく作る?
店の人「うーん、ちょっとわからないですけど、やっぱり家庭では(油の処理などに)手間がかかるから、昔よりは作る人は減ってるんじゃないかな」
――なるほど。
スケジュールの都合上、もう長崎から離れなければならず、長崎天ぷらを食べることはできなかったが、美味い天ぷらは食べられた。
天ぷら鍋を買いがちの謎は謎のままではあるけれど……。ひとまず、長崎の調査は以上でいかがでしょうか?
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