特集 2024年8月15日

貴族の親子のようにコンビニ弁当を食べる

7メートルの机の端と端

マンガや映画で見るお金持ちは長い机の端と端で食事をしている。だいたい親子だ。父と息子。ナイフとフォークを悠々と扱いながらこんな会話をする。

父:学校の成績はどうだ

息子:頑張ってるよ、父さん

父:家の名に恥じぬよう、努力を続けなさい

もっと楽しい話をしたらいいのに。おいしいふりかけの情報とか。

これは個々人の性格もあるが、距離が遠いのも影響していないだろうか。僕だったら長い机の端の相手に何をしゃべるだろう。やってみたい。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:『11ぴきのねことあほうどり』のコロッケを作る


机が長ければ長いほどお金持ち

場所はデイリーポータルZの企画会議のために借りた会議室。会議前に時間をもらった。

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パソコンやカメラを片付けてもらって、
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縦につなげる

机やイスが重くて大変だった。お城みたいな場所を借りればこんな苦労はなかったんだろう。

でも貴族になりたいわけではないのだ。長い机の端と端で、普段みたいにものを食べたいだけなのだ。だから場所は普通に借りられる普通の会議室がいい。

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一緒に食べる相手は、編集担当の橋田さん(写真左)

机の長い辺が1メートル20センチ。6つつなげたので7メートル20センチになった。

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上の写真を撮るために、林さんが壁にめり込んだ

会議室の端と端。写真に収まるギリギリである。机が長ければ長いほどお金持ちなので、限界を攻めることができてとても嬉しい。

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7メートル先の橋田さん

すごく遠い。ただ部屋の向かいを見ているだけじゃないのだ。同じ机を共有しつつ向かい合っているので遠さが際立つ。

表情もうっすらしか読み取れなくて駅のホームを挟んで反対側にいるような感じだ。橋田さんがこっちを見ているのが分かるが、何を思っているのかが分からない。真顔で見つめ返すしかない。

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橋田さんから見た僕
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そして、

すぐ横に、石川さんに立ってもらった。

貴族の親子の食事では、傍に執事のような人が立っている。これもやりたい。長い机とともに、すぐ近くに人がいる食事も経験しておこう。

よし。この布陣で、ぼやける相手とコンビニ弁当を食べよう。

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【貴族の親子はこんな気持ちだったのか①】相手が食べているものが分からない

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「いただきまーす」
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橋田さんも食べる

トルー(筆者):橋田さんのそれ、ハンバーグ弁当ですよね

橋田:いや? 違うよ?

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トルー:ハンバーグ弁当じゃないんですか?

橋田:うん

トルー:いや、ハンバーグ弁当でしょ

橋田:違うってば

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いきなりつまずいた。なぜか僕は橋田さんの弁当をハンバーグと思い込んでいるし、橋田さんも正解を教えてくれない。

傾けて見せてもらったが、遠いのでなんの意味もなかった。ハンバーグ弁当にしか見えない。

「そのブロッコリーおいしそうですね」みたいな会話だけはできると思っていたので大誤算だった。

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正解はのり弁当だった
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早速しゃべることがなくなり、黙ってあんかけチャーハンをかきこんだ
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【貴族の親子はこんな気持ちだったのか②】別の空間のようになる

しゃべることがなくなってどうなるかと言うと、相手の動きを実況しだす。

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「お、食べた」「食べた食べた」「おいしそうだ」とつぶやきながら橋田さんを見ていた

檻の中の動物を見ているような気持ちだった。何を考えているか分からないが食べていることだけは分かる。

観察できる範囲では、食べていることだけが自分と相手の共通点なのだ。だから食べていたら嬉しいし「食べた」と言う。

橋田さんもそうだったらしい。お互いが相手を見ながら「食べた食べた」と言っていた。

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「おー… 食べた食べた」

林さんに、モニター越しに相手を見ているみたいと言われてピンときた。まさにそんな感じだ。

ということは、遠いどころじゃなく別の空間にいる感覚に陥っている。確かに同じ机なのに。

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