神戸の門松、キャベツのやつ植えるじゃん
年も押し迫ったころ、あれやこれやと所用などありあこがれの神戸市に乗り込んだ(ところで神戸市営地下鉄の三宮駅ホーム、焼けたパンのにおいがしませんか。「ここがあの三宮」の気持ちがこうじた幻匂だろうか……)。
洗練のまち、神戸。骨の髄をふるわせ期待に腰がくがくで地上にあがる。歩いて5メートルでレストランの前に置いてある小さな門松に目がとまった。
……あれ。この門松、植栽で見かけるあのキャベツのやつが(ハボタン、ですな)根元に飾ってある。
珍しいなあ。写真を撮った。
(ちなみに完全にあとで知ったのですが、↑のお店の「モーリヤ本店」さんは神戸牛を使ったステーキの名店だそうですな……門松だけ見てスルーするとはね……)
そのまま気になっていたパンの店へ行き、友人にすすめてもらったお菓子屋もひやかし、選書のすてきな本屋さんに寄ってと順調に観光の足をすすめるなか、大丸神戸店の前をとおりかかるとそれはそれは立派な門松がある。
遠目でもわかった。どーんとキャベツのあのやつが飾り付けてある。
さっきのお店が特別に飾っているのだと思ったのだけど、そうじゃないのか。もしかしてこのあたりって門松にハボタンをあしらう文化があるんだろうか。
神戸だけじゃない……?
もしこれが兵庫県独特の地域性だとしたら興味深い。編集部の面々に写真を送ってみると、こんな返事がきた。
岐阜県出身・石川「岐阜でもそうです」
愛知県出身・安藤「愛知もですね」
……!? 帰省中の石川は、岐阜県内で撮影したという写真も送ってくれた。
本当だ、岐阜の門松にもハボタンが使われている。
もしかして私が門松というものを覚え違えてるのか? 東京の門松にもキャベツってのってたんだっけ。
記憶が定かでないまま、なんとなくおもしろがる気持ちもわいて真相を検索しないまま旅は大阪市へ。
ここでもあちこちの門松にキャベツは大いにあしらわれていた。
しめ飾りとやすともさん(のポスター)もこの目で見ました
ちなみに関西のしめ飾りは関東のとは違うとは以前から聞いていたが、これもはじめて本物を見た。
なお、縁起物に近い(近い?)話としては、関西の大スター、海原やすよともこさんのこちらのポスターを見かけに見かけありがたかったこと加えておこう。
実は私は超々寡聞にしてやすともさんのことをきちんと認識しきれておらず、初見でおふたりと分からなかったのだ。
あまりにもあちこちに貼られまくっているから不安になって、夜ほんとうに夢に出たのだった。
東京の門松にキャベツは……なかった!
さて、兵庫~大阪ツアーを全力堪能、再訪を誓いつつ東京に戻ってきた。
ここでどの門松にもハボタンが植わっていたら、私は知らないあいだに門松にハボタンが植わる世界線に転生していた……ということになるわけだが……。
帰着後すぐ、親戚一同で遊びにいったスカイツリーの周辺で見た門松が、もうこうだったのだ。
そうそう、私が見知った門松は、これ、これでーす!
関東も広いので「関東ではこうです!」バキッと言ってしまっていいのか迷うのだけど、少なくとも翌週出かけた埼玉県の川越も同様であった。
温暖な西日本の門松にハボタンは植わる
ここでいよいよ調べてみる。まったく、ハボタンを門松に使うのは関西を中心とした中部より西の文化ということであった。
ハボタンは紫と白がある。紅白に近い色をそえられることができ美しく、花言葉等を由来におめでたい植物ともされる。
けれど寒さに弱いのだそうで、寒冷な地域では物理的に使えない、それで地域限定的な門松文化となっているようだ。
東京の、あまり華やかにはしない廉直な門松に見慣れていると、ハボタンを使った門松には大きい物はもちろん小さくても華やかさに迫力がある。
門松だけでフラワーアレンジメントみたいに見える。
ある文化の地域差は単純にとてもおもしろい。
そのことは十分わかっていたつもりだけど、「もしかしたら私の勘違いで、東京の門松にもハボタンあったかも?」と自分を疑うフェーズを一旦はさんだおかげで地域差の目撃が立体的な体験になった。
これが旅じゃんね~~! としびれきったのでした。