特集 2019年3月26日

実証。高濃度缶チューハイ悪酔い説は量の問題

調べました。悪酔いしません。そして私は酒造会社のまわしものです。

昨年、渋谷のハロウィンに行ってみた。そこで目についたのがストロングゼロなどの高濃度缶チューハイの多さだ。

酔うために飲むのだろう。ドラッグみたい飲み方だ。悪酔いしそう。と、ここまで思って気づいたのだが、この「悪酔いしそう」という認識は正しいのだろうか?

量さえ守れば酔い方は同じというが、ここにはそれ以上の何かがある……と私達は思い込んでるんじゃないか。そこで実験をした。

1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

半数の人が「悪酔いすると思う」

まずはこの「悪酔いする飲み物」という認識は正しいのだろうか? 調べてみた。

高濃度缶チューハイは悪酔いすると思うか? とTwitterでアンケートをとったところ53%が「すると思う」と答えた。

悪酔いという言葉の定義があいまいながら「悪酔いする」という認識が2人に1人程度には根付いていることがわかる。

甘味料が悪いのか? 原因はなんだ?

アンケートについた返信や反響などから悪酔い原因にはいくつかの説があることがわかった。

・糖類ゼロだからアルコール分解に必要な糖分が足りないのではないか→糖分足りてない説
・人工甘味料(アセスルファムKなど)が悪酔いするのではないか→甘味料説
・使われているアルコールがウォッカなので悪酔いするのではないか→ウォッカ説
・使っているウォッカに不純物が多いから悪酔いするのではないか→悪ウォッカ説
・度数の割にスルスル飲めるから酒量の問題ではないか→飲みやすさ説

筆者も甘味料のせいにしていた。しかしストロングゼロ系の甘味料使ってないものを選んでも悪酔いするような気がする。ならば悪いのはウォッカ?

そんなときに99.99という缶チューハイがサッポロから出た。ストロングゼロと同じ9%のアルコールで、「エタノール以外の有機物割合が0.01%未満のウォッカ」というウリ文句だ。甘味料も使っていない。これだ、これで全部解決だ。飲みやすい。これはいい。

そして地獄のフタが開いて入り口が垣間見えるほどに酔った。頭が痛い。

ネットの記事を読むとアルコールの量の問題(飲みやすさ説)

ストロングゼロはネット界隈でも大人気なのであれはあんなに濃くて大丈夫なのか?というネットの記事がいくつか出ている。読んでみるとなにか悪いものが入ってるわけではなく、アルコールの量の問題だという結論が多い

えー、飲みやすいから? にわかには信じられない。いや、信じられなくないですか、これ? 量なの?

だってですよ。お酒を飲めるようになって18年経ってるのにそんなチューハイだからって飲みすぎるだろうか? ビール苦い! チューハイ飲みやすくて最高! みたいな大学生のころの気持ちはもうみじんもないのに。

飲みすぎてるわけでもないのに明らかに足に来ている実感が我々にはある! よしわかった、量を守って飲んでやろうじゃないか! そう息巻いて実験することにした

「ふだん飲む量のアルコールを高濃度缶チューハイで飲む飲み会」実験である。

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デイリーポータルZのはげます会にて実験の協力を募集した。会員ははげまさないといけないわ実験に参加させられるわで大変である。

 一度ふつうに飲んでから高濃度缶チューハイ飲み会をする

参加者は事前にふだんどれくらい飲むかを各々量っておいてもらう。酔いの感覚も覚えておく。

実験当日、ふだん飲むのと同量のアルコールを高濃度缶チューハイで用意して飲み切る。当日はオンラインでチャットをしながら飲み、後日「悪酔いしたか?」というアンケートをとった。

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まずふだん飲む量を量った。晩飯のあとビール350ml缶3本とソーセージを食べた。

 

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そして後日350×3×5(ビールが5%の濃度)÷9(チューハイが9%の濃度)で583.33mlの9%チューハイを飲みながらチャットをする。
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飲みながら状況を報告するチャットを行った。ログより

実験中は酔いの早さを示す声が!

参加者は合計で14人。高濃度缶チューハイを日常的に飲む者は少なかったようでフレッシュなコメントが多かった。

>大宮♪酔うスピードがストロング系が早い感じします。なんでだろ
>林雄司♪350ml飲み終わって、2缶目に入ったあたりから急に酔ってきますね
>よねざわ♪ここまで、酔いが遅いというコメントが皆無ですね(^^ゞ 

酔いが早いというコメントがチャット中にも頻出した。濃いものをチューハイ感覚でグビグビ流し込むとそりゃ早いのは当然か。

>大宮♪ストロング系のむと顔暑くなる
>林雄司♪ワインや焼酎よりもスカッと顔が赤くなってたしかにこれは面白いですね
>よねざわ♪あ。確かに顔の熱さが大きい気がする! 
>トルー●「高濃度缶チューハイ顔」ってあるかもしれないですね

顔が熱いの大合唱である。そんな顔面にくる酒だったのか。おさるさんの飲み会みたいなことになっているが、おっちゃんたちが「顔が赤い」と大学生みたいなことを言い出してるので高濃度缶チューハイは他とは違う感覚なんだろう。

さて1時間半くらいチャットはつづき、みんな所定の量を飲み終え、翌朝にアンケートに回答してもらった。

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回答例。悪酔いしましたか?「いいえ」である。

 

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悪酔いしましたか?「いいえ」が並ぶ。よく酒を飲んでるイメージのウェブマスターの林さんもストロングゼロの酔いの早さに驚いていた

結果はほぼ悪酔いしませんでした

結果を集計したので見てみよう

■アンケート回答
回答者数14
「高濃度缶チューハイで悪酔いしましたか?」
・いいえ…11
・少しした気もするが誤差の範囲かも…2
・無効…1

なんと…!! 悪酔い、二日酔いになった者はいなかった。ほらね、である。ほら見たことか、である。なんと恥ずかしい結果だろうか。Web記事の識者の意見を無視して、勝手に悪酔いする悪酔いすると騒ぎ立てて「ほらね」という結果が出てしまった。

皮をひんむかれ、今や恥辱の概念がむきだしである。風が吹くたびに心が刺激されて恥ずかしい。穴を掘って今叫びたい。ブラジルの人、聞こえますか!と(叫ぶ内容はなんでもいい)。

「そのほか感想を自由に」
酔いが早い 12/14
翌朝軽いしんどさ 3/14
顔が熱い 2/14
酔いが深い 2/14

他にもこのような結果が出た。高濃度をチューハイ感覚で飲むので酔いはやはり早いようだ。いつもより深く酔ったという者も2人しかいない。

全体的に「想定どおり」の結果が出てしまった。ブラジルの人! ブラジルの人聞こえますか! おおお!

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そういえば弟が医師免許を持ってるのでどう思うか話をきいた

 医者に聞いてさらに恥ずかしい思いをしよう

ここで専門的な意見をもらって恥ずかしい実験結果をさらに恥ずかしくしようと思う。聞いたのは筆者の弟である。医師の免許を持っているし、身内に恥をさらしてなお恥ずかしい。

──アンケートの結果見てほしいんやけど、悪酔いって結局やっぱりアルコールの量なん?

「悪酔いを"二日酔い"のことだとすると、アルコールの分解途中のアセトアルデヒドの問題になるなあ。アルコールを摂った総量が一緒であれば基本的には変わらへんわ。結局肝臓は何時間で何グラム代謝できるっていうのがあるので、翌朝の状態だけ見たら変わらへんと思うよ」

──度数90%のアルコールでも変わらん?

「最初の酔いの早さは全然ちがうやろなー。アルコール度数低いと、酔ってきもちええな~という状態から飲みすぎて気持ち悪いってところまでゆっくりいくやろうけど、度数が高いと早くいくやろね。気持ちいい時間は短くなると思う」

──特定のこの物質がだめとかないの?

「たしかに代謝には糖分がいるけど、夜ご飯やおつまみ食べてる人なら体に蓄えてる糖分も当然あるから足りないということはなさそう。二日酔いの原因の一つに脱水症状もあると言われてるから水分は摂った方がええんやろね。そういう意味では利尿作用のあるもの、コーヒーとかはダメかなあ」

──そういえばビールって水とアルコールやけど水飲まんとあかんのかい?

「結局アルコールに利尿作用あるから摂った以上に水を出しちゃう。多く水を摂っとくとまだましになるんとちゃうかなー。

スポーツドリンク飲むと悪酔いするって言われてたけどそれは全然問題ないんじゃないかな。吸収が早くなるというのは二日酔いにはあんまり関係ないし水をとれるならいいかなと。

牛乳飲んで胃に膜作る、とかはアルコールの吸収の2割は胃であとの8割は小腸らしくて、胃で膜を作ってもあとは小腸で吸収されるから。最初に気持ち悪くなったりアルコール血中度数の急な上昇を防いでくれるんやろうけど、二日酔いをするかどうかは結局総量やから。

安いお酒が高いお酒が、甘味料が、っていろんな話があるけどデータがないしわからんなあ。でもまあアルコールに比べれば、おそらくやけど、人体にそこまで影響するかあ?みたいなとこやね。

医学的な見地としては『アルコールの量をちゃんと考えて飲もう』ということ以外ないんじゃないかな」

──二日酔いになったら?

「睡眠をとることと、脱水になったら水摂るんがいいんだろうけど、ウコンがいいとかいろんな意見があるけどちゃんとした根拠はない」 

──お前はお兄ちゃんがこんなことしてアホやなと思うか?

「うーん、二日酔いも個人の主観的なものでしかないからこれがいいあれがいいって否定するものでもないなあ。」

弟は「二日酔いにいろんな対策をする人をアホと思うか?」と勘違いしたようだが、もう私には訂正するだけの気力がなく、そのままにしておいた。そしてその夜は枕を涙で濡らした。

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ということで高濃度缶チューハイを水で割って飲んでみたら普通の缶チューハイ飲んでる感覚になりました。うまくはないですが

 


量を決めて飲めるかが大人の飲み方だ

悪酔いとはなにかということもあるが「二日酔いがひどい」「酔いすぎる」ことなら高濃度缶チューハイ自体が悪いわけじゃないという結果が出た。

頭が痛くなっていたのは結局いつもより飲みすぎていたのだ。高濃度缶チューハイが悪酔いするのではない、悪いのは飲みすぎていた我々だ。

いや、毎回飲みすぎるならそれって結果的に悪酔いする飲み物なんじゃないの? という意見もあるだろう。しかしこれは「チカンしてしまうような服を着るお前が悪い」という論法にも見えなくないし難しいところだ。

とりあえずは「量を決めて飲むと悪酔いしない」ことがわかった。これでもう高濃度缶チューハイは怖くない。

これから私は350ml缶一本と、133.33mlを軽量カップで量って生きていく。それでも早く酔いすぎるから水で割って飲む。

つまらないなと思われることだろう。しかし翌朝の世界を呪うような頭痛を考えたことがあるのか。生産性ゼロを叩き出す午前中を考えたことがあるかと問いたい。大人の飲み方といわれるものはきっとこれだ。YAZAWAや北方謙三あたりもこうなさってるにちがいない。

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余談だがライターの江ノ島も参加してくれていて、普段のむ酒に「焼酎ハイボール(7%)」を選び「フォーナイン(9%)」と2:1の割合で比べていた。高濃度缶チューハイと高濃度缶チューハイを比べてどうする。気持ちはうれしいが無効とした。

 

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