バレンタイン禁止の職場が増えてるらしいが、ホワイトデーは今どうなってるのか!
バレンタイン禁止の職場が増えつつあるという。もしかしたらホワイトデーも消えつつあるのかもしれない。
となるともう返礼じゃない新たなホワイトデーに進化してる可能性もあるな……自分自身にホワイトデーしたりするやつだ。なにか新しいことになってないか?と、デパートを回ってホワイトデーの現在を見てきた。
24店舗回ってきた
デパートを中心に有名ショッピングモールなどを渋谷から銀座、東京、新宿を回った。池袋の東武百貨店をのぞけば有名デパートは見てこれた。これが成果である。
25店舗まわった。ポップは各店共通のサイン、ポスターはデパート公共の掲示物として飾られてるものとして使用。二子玉川ライズ情報は編集部提供
総括、大きく変なことにはなってない
これら25店舗を一日で回った疲労感たるや……
そしてその結論としては「意外と(ホワイトデーを)やってない」「まあ、こんなものだろうな」という消極性や保守性である。一体どうなるんだ、この記事は。
いや、何も変わってないならそれはそれで成果だ、ホワイトデーの現在地をたしかめる意味で、細かく見ていってみよう。まずはホワイトデーをうたう文言から。
「すきをありがとう!」東急本店
『今日が「いつもありがとう」を贈るタイミング』東京ミッドタウン
「ありがとう」の気持ちを込めて 丸の内ビルディング
「愛と感謝を伝えるチャンス シアワセの切り札を探そう! Love&Thank you」二子玉川ライズ
ホワイトデーの根底は返礼であり「ありがとう」
ホワイトデーの定義とは「バレンタインデーのお返しのプレゼントを贈る日」ということだろう。なのでキャンペーンのコピーは「ありがとう」と入ったものが多い。
ところでこの「ありがとう」は、返礼によるものかこちらからするプレゼントなのかでけっこうちがう。
東急本店の「すきをありがとう」は返礼の受け身のものであるが、東京ミッドタウンの「今日が『いつもありがとう』を伝えるタイミング」は返礼関係なくどんどんプレゼントしていこうぜという主体的なものを感じる。
『「ありがとう」の気持ちを込めて」という丸の内ビルディング、「愛と感謝を伝えるチャンス Love&Thank you」という二子玉川ライズも後者である。
受け身のありがとうに限定しているのは東急しかない。返礼じゃなくてどんどんプレゼントあげようよ、と言ってるのだ。バレンタインのチョコ配りが下火になりつつあり、ホワイトデーがありがとうを贈る日に成り得るかにかかっている! 今がホワイトデーにとって大事な時期! へたにいじらずにそっとしておいてあげて!
「女性から男性へおねだり! 逆指名! WHITEDAYGIFT」大丸は女性の人気を先に伝えるものに
「Think you」ヒカリエ。ありがとう系の変形ながら「(私は)あなたを考えます」ともとれるし「お前を考えろ」ともとれるコピー。後者なら「お前ふらふらしてるけどそろそろちゃんと考えろよ」という意味にもとれる絵である
エスカレーターのわきに催事のポスターが貼ってあったりするが、ホワイトデーだと東急本店とこの三越本店くらいだった。GINZAステージで「ギンザホワイトデイ」をやろうとする三越。銀座をレペゼンしすぎである。
老舗デパートのやる気のなさたるや…
以上のコピーがついたものはまだまだやる気のある方である。問題は老舗デパートだ。
これだけめぐるとデパートのホワイトデーがどういうものかわかってきた。
小田急のホワイトデー、タカシマヤのホワイトデー。基本的にはデパートの名称に「ホワイトデー」がついたものが催事の名前だ。
そしてデパ地下に洋菓子店を集めて特別ブースを作る。それ以外には特にないので各お店で独自のポップを作る。既成品なのか「HAPPY WHITEDAY」と書いてあるものが多い。HAPPYにつぐHAPPYで(一体、誰が幸せなんだっけな…?)とぼんやりしてくる。
これが一般的なデパートのホワイトデーである。
デパ地下の菓子売り場の店名ポップがホワイトデー仕様になっている。これがふつうのデパートのホワイトデー
西武は「ホワイトデー好適品」と対象の年齢層の高さを感じさせる案内が
デパートの強さがはっきり
老舗デパートはあんまり力を入れないと言いつつも、伊勢丹、三越の人手がすごい。「中継」という札をもった行列の人がいる。行列が途切れて別の場所にあるのだ。伊勢丹行っときゃいいんだろう的なお父さんたちが多いのだろう。思い入れや自信がない買い物は有名どころにかぎる。
しかし当の伊勢丹も見に行ったときに「サダハルアオキシェフご来店でーす!」と本人が来ていた。
「中継地点」という札がいくつも出回る。列が途切れてまた別のとこにあるのだ
伊勢丹にサダハルアオキ本人がいたが、ホワイトデーでとにかく見るのがこのサダハルアオキのボンボンショコラである。この日一日で何回も見たので「あの本人が!?」とものすごく興奮してしまった
ところで一番行列がすごかったのは大丸である。東京駅と直結しているからだろうか。女性客も多く並んでいたので東京みやげとして買っていくのだろうか
「デジレー」というチョコにも大行列が作られていたのだが、このデジレーは他のデパートでもふつうに売られているので、列が列を作るような熱狂がここにはあった
新興のヒカリエがめちゃくちゃホワイトデーに力を入れてた
ホワイトデーはもはや古い文化なのかなと思ったらヒカリエが大々的に盛り上げていた。洋菓子売場だけでなく、雑貨売り場にもホワイトデーの案内が出ている。お客さんも多い。
賑わっていればホワイトデーもがんがん仕掛けていけるんだろうか?
一方、新しいデパートであるGINZA SIXでは人も多かったがキャンペーン自体そこまで前面に出ていなかった。NEWOMANも個々のお店任せだった。
ヒカリエは雑貨類でもホワイトデーコーナーを作っていた。ホワイトデーそろそろ下火かな?と思ってたが新興のヒカリエがめちゃくちゃ力入れてるのは興味深い
店外にも特設なのかブースがある気合の入れよう
同じく新しい商業施設NEWOMANでは唯一冊子を作っていた。だがそれ以外のホワイトデーらしさは各店舗にゆだねるものに
ホワイトデーの中心はやっぱり洋菓子
ところでちょっとしたプレゼントを買う場所といえば東急ハンズやロフトかな?……と思ったのだが両者とも特に展開なし。
やはりホワイトデーといえばチョコレートの返礼であり、基本は洋菓子なのだろう。そういえばホワイトデーってマシュマロを渡すものみたいなイメージがあるが……あれはなんだったのだろう?
ロフトもハンズも「春はプレゼントの季節」とぐるっとひとまとめにしてる感じ
洋菓子売場にこのような特設ブースができる。これがデパートのホワイトデー
マシュマロはあなたが嫌い説も
検索していて初めて知ったのだが、ホワイトデーにマシュマロを贈るのは「あなたが嫌い」の意味だという噂があるそうだ。あれ? そもそもマシュマロを贈る日っていうイメージがあるぞ?
ついでにホワイトデーのそもそもを検索してみよう。発祥は1970年代あたりのようだ。
ホワイトデーの発祥ともいわれる不二家
ホワイトデーの元祖は3つある
ホワイトデーの発祥は大きく3つ説がある。
2005年2月2日の日本食糧新聞でホワイトデーの由来についての記事が掲載されたようだ。本文を確認できてないのだが、不二家が1973年にマシュマロメーカーエイワとともに3月14日を定めたという主張のようだ。新聞の人が調べたのならきっとそうなのだろう。
知ってた?ホワイトデーの起源は、結構しょうもないー女子SPA!
不二家のホワイトデー ほかに「HAPPY WHITEDAY」のポスターも
元祖2は福岡のマシュマロ和菓子
だが福岡の和菓子屋さん石村萬盛堂も発祥を主張する。
「始まりは石村萬盛堂 ホワイトデー41周年」ー石村萬盛堂
こちらは不二家説の5年後、1978年にマシュマロデーという日を作ったそうだ。
じゃあこちらがウソかというと誕生時の細かいエピソードもある。岩田屋という百貨店から「そら石村さん、一番ひまんなる3月14日がベストやね」と言われてバレンタインの日を決めたとか。
HPも力が入っていて「ホワイトデーの動向調査」という項目もある。8割の人がお返しをする。お返しの相場は1.1倍。ということだそうだ。ホワイトデーは今のところ、どこまでもイメージどおりだ。
マシュマロの和菓子「鶴乃子」が有名だそう。東京では今月歌舞伎座で特別に取扱中だというので行ってきたが売り切れ。やはり人気があるのだろうか
元祖3は飴の組合
そしてもう一つ全国飴菓子工業協同組合が1980年に始めたという説があり、組合がHPを作っている。その名も「ホワイトデー公式サイト」である。
ホワイトデー公式サイトー全国飴菓子業協同組合
公式を名乗っているのだ。公式とかあったのか、と震える思いである。
だがここでは「誕生秘話」として当時の飴会社の社長さんらによる座談会が掲載されている。これも細かいエピソードが多く、信ぴょう性が高い。
ホワイトデー誕生秘話がおもしろい
ホワイトデー誕生秘話ー全国飴菓子業協同組合
社長さんらが言うには飴の組合で1978年にバレンタインの返礼はキャンディーでというキャンペーンをやろうということになった。というのも
>当時も、メーカーによっては、細々とホワイトデーのキャンペーンを行っているところもありましたが、単にバレンタインデーのお返しにチョコレートを返そうというくらいのレベルでした
>高柳 ホワイトデー・イコール・キャンデーというような認識を定着させるまでが、ひと苦労でした。それまでは、マシュマロありクッキーありだもの。
先の不二家にしても石村萬盛堂にしても独自に始めてるところはいくつかあったのだろう。飴の組合はそれを「ホワイトデー」として「ホワイトデー=キャンディで」とまとめて上書きしようということだろう。
>高柳 ただ、どういうわけか、銀座の三越が大変乗り気になってくれて、「ホワイトデーの元年は、銀座の三越からはじまった」ということで宣伝してくれといわれ、それに乗っかった感じですね。
他にも二回目から銀座ソニービルでキャンペーンをしたとか電通が協力してくれたとか。三越が大々的にやっていたのか。今もすごい賑わいだが、特に前面に押し出してやってるわけではなさそうだった。
一方、今の三越のホワイトデイはすごい賑わいながらも、そこまでホワイトデイホワイトデイうたってない。老舗デパート的なホワイトデイ。
>中西 「ホワイトデー」という名前を浸透させるために、私も一役買ったんですよ。地下鉄に乗って、駅に近づくたびに、「ホワイトデーって知っているか」「ホワイトデーってのは、キャンデーを女の子に返す日だぞ」と相棒に大声を出して、落語みたいなことをやりました。
黎明期の話はおもしろいのが多いが、ホワイトデーでもそうだった。この誕生秘話以外にも歴史を振り返るページもおもしろい。
従来はミスDJのコンサートだったが第七回は思い切って黒沢年雄にしただとか。1987年のことをこう振り返っている。
>「本年のホワイトデーは昨年までとは全く様相が変わってきて、もうすっかり社会の中に定着してきたともいえるでしょう。
1987年くらいになって、ようやくホワイトデーは定着したのだ。ただしそれはキャンディーに限ったことではなかったようで
>キャンデー、マシュマロ、クッキーに始まった商品に、ショーツやハンカチに包んだキャンデー、花とキャンデーの宅配便などが加わり
と1988年にはキャンディー以外が盛り上がっていた振り返りがあり、翌年の1989年には
>「3月14日ホワイトデーはキャンデーを贈る日」は国民的な一大行事として根付き、世間の人々に認知して頂いたと確信致しました。
としてキャンペーン自体終焉をむかえる。ホワイトデーという名前は定着はしたが、キャンディーでは失敗したのだろう。時代はバブルに突入するころだ。チョコのお返しが飴というのは原料としてチョコが損だ。
プレゼントの多様化といえば東京ミッドタウンではホワイトデー用の商品を展示していた。こちらは3024円のぬかぶくろ。ぬかが…。これで最高級のぬか漬け作りたい
こちら赤坂サカスの展示。ホワイトデーとは言わないが水色のプレゼント箱が飾られている。抽象的なホワイトデーである
どの和菓子売場にもホワイトデーは適用されているし、大丸では「ホ和イトデー」なる造語も生み出されていた。カステラは和菓子でもかなり洋だが。
ホワイトデーのポップは和テイストが入ってくると急に味わい深くなってくる。こちらは文明堂
のりチップスまでくるとホワイトデーだっけ?という気になってくるが、返礼品なので基本はなんでもいいのだ
ところで錦松梅は?
そういえば個人的にバレンタインデーといえば錦松梅である。デパ地下で佃煮ながら一人しれっとバレンタインデーに参戦していたのをかつて見たのだ。一方、ホワイトデーはというと…!?
かつて見かけたバレンタイン錦松梅。ホワイトデーは…!?
バレンタイン錦松梅につづき、ホワイトデー錦松梅もある! バレンタインに錦松梅贈られた人はもうこれ一択だ
今後、縮小化が予想される世界で
ホワイトデーの歴史を振り返ると1980年代に定着したようだ。以前和菓子の記事でお菓子業界の人に話を聞いたとき、洋菓子は今の団塊の世代(かちょっと上か)を中心に伸びたと聞いた。彼らが子供の頃にあこがれ、冷蔵庫が普及して生ケーキが当たり前になり、会社に入ってバレンタインができて、ホワイトデーもできてバブルに突入して……そして今彼らはおつかれさまでしたの退職の時である。ホワイトデーを会社で配るのも彼らの世代のものなのだろう。徐々にその文化が解体されていってる気がした。
さて、予定していた企画が取材先の都合で流れてしまって、急遽ホワイトデーをめぐることになった。朝10時に出かけて25店舗まわって夜7時に帰ってきた。「もう若くはない」ことを体の疲れで知った。その成果がこれである。なんかどこもイメージどおりだし薄くしかやってないな…というちんまりした成果である。
しかしこのままホワイトデーが変わらないと規模が縮小していくことは予想されるので、今後また急にハンドル切ってきたなという展開があると信じてまた来年も売り場に足を運ぶ!