「思い出す」だけで自分を動かせる快感
失敗もあったが、紙一枚生活に増やすだけで変わることがあるという事実がおもしろい。「やっぱ自分や人間の脳って単純なんだな」としみじみ思う5日間だった。

あと文字がでかいとプレッシャーがすごくてまず嫌悪感が勝ったりする。きれいにかくのも大事でした
先月、ストレッチのやり方が書いてある紙をトイレに貼った。トイレに行くたび、なんとなくその紙を見て体をのばした。
すると肩こりが改善されたのだ。
紙を一枚貼っただけなのに…。自分、めちゃくちゃチョロい。
もっと家に貼り紙を増やせば、私は最強になれるのではないか。貼りまくりました。
まずはきっかけの紙を見ていただこう。
これです。トイレで座っている間、胸の筋肉をのばせるのでは?と思ったのがきっかけだ。大成功だった
この調子で、貼り紙でもっと暮らしを良くしていこう、というである。
まず「早起きしたい」「筋トレしたい」「家を常にキレイに」など、日々できていない不満を書き出す。
その問題を解決しつつ、未来の自分の行動を促す言葉をかく。これだけだ。15枚ほど書きまくった
では、貼り紙との暮らしをはじめていきます。
紙を貼り終えてすぐ、夕ご飯を食べた。皿をシンクにおいた瞬間
この貼り紙と目があってしまった。「読んでしまった……」と絶望的な気持ちになる
いつもならお腹いっぱいのままソファにごろん、テレビを見るきまりだ。皿は放置され、朝起きて「最悪!!」と言いながら洗っていた
なのに今日はその途中に貼り紙があらわれた
「洗う!洗うよ!」と言い不機嫌にスポンジを持つ
洗い始めるとやる気になり、ストレスもすぐ忘れた。あれ?すぐ洗うって余裕じゃないか??
その後、リビングに戻ってテレビをみた。
しばらくしてキッチンの横を通ると
「シンクがピッカピカになっている!?」といつもと違う風景に脳がバグってしまった。皿がたまってないってこんな気分がいいのか
最高の気分だった。貼り紙はっただけなのに、長年の悪習がたたれたのだ。
これは本当に人生余裕かもしれない。すごい発見をしてしまった。
貼り紙開始2日目。朝起きると
すぐなにか目に入った
なるほど・・・
…でも別にこの後予定ないんだよな…
寝てしまいました。貼り紙初の失敗である。
もう一度起きると、貼り紙はまだこちらを見ていた。罪悪感がいつもより重い。最悪の朝だ。貼り紙万能説がゆらぐ
その後、のそのそ起きると
「筋トレ1回どう?」という貼り紙と目があってしまった。「うーーわ」と声が出る
……すこし考えて素通りした。
2日目にして2連敗スタートである。
その後も、昼ごはんを食べようとテーブルを拭いていると
テーブルの端にはったこいつが目に入ってきた
「言われなくても拭いてますけど!?!?!」と無機物にむかって怒るやばい人になってしまう
自分がやってる途中で貼り紙に言われるとめちゃくちゃ腹がたつのだ。
その後もテレビのリモコンを置く指示をみたらそこに置いたり(これは成功)
玄関を出ようとすると、過去の自分から「忘れ物ないか」「ゴミはついでに捨てなくていいか」と問われ、財布を取りに戻ったりした(成功)
……などの成功、失敗を続け、5日がたちました。
5日間つづけた結果、「貼り紙自分コントロール」において1番重要なことがわかった。それは
「見てすぐできる行動に絞って書け」これです。
たとえば5日間で成功した貼り紙の中に
洗面台に貼った「鏡をみたら笑おう」があった。この紙をみたら笑うだけ、脳がいらないぐらいカンタンだ
成功した皿洗いやストレッチも、スポンジをすぐ持つだけ、壁を手につけるだけ、と脳を使わずすぐできるのだ
対してこの筋トレは、見た瞬間「スクワットをするのか?腕立てをするのか?ヨガマットは引くのか?」などの選択肢が浮かびすぐとりかかることができない
考えてる間に脳が「ダル」と放棄してしまう。
これが「スクワット1回どう?」だったら続いたかもしれない。
貼り紙はあくまで、超単純作業を思い出すスイッチなのである。
初日に敗北した早起きは、以降も貼り紙を変えていろいろ試してみた。しかし
2〜3日目:食欲を刺激しにいく。起きたてで「別にトースト食いたくない」とすぐ思う。失敗
4〜5日目:さらにハードルをさげて「寝てもいい」と足したあとで「まず体の一部を動かそう」とハードルを下げて提案。手をグーパーしたあとに寝た。失敗
など全敗北した。ぜんぜん人生余裕などではなかった。かなしい。
ただわかったのは「なぜ早起きしたいか」がまず自分の中で定まってないのだ。
なんとなく早起きしたほうがよさそう、とだけ思っているから、貼り紙を見ても「ま、今日は別にまだ寝れるしいいか」と睡眠に負ける。
よく考えたら当たり前のことなのに、貼り紙を3枚も変えないとわからなかった。紙以前の問題だった。つらい。
そのほか貼り紙にしてよかったものを見ていくと
先にもあげた「リモコン駐車場」。なくなりがちなものは、置き場所を指定するだけでほぼ無意識でそこにおくことができた。「脳チョロいな」の良い例
また、玄関に貼った「財布とカギもった?」のようなリマインダーも相性がよく
「トイレの芯捨てよう」を貼っただけで、芯をためずにすぐ捨てるようになった(以前は詰んでしまい、すぐ小さい建物ができていた)
悪い例もあげると
これはゴミ箱の上にはったもの。一見良さそうに見えますが、まだ袋に余裕がある時にこいつと目があうと「まだいいの!!」と軽くイライラします
あと早く寝るべくベッド横に貼った「スマホ見すぎると寝れないって最近気づいた」とポエム風にしてみたものです。毎日「だから何?」と心の中で返事することになった
また、貼り紙をはってわかったのは人間は文字があるとめちゃくちゃ読んでしまうということだ。
5枚の貼り紙が貼られたリビングにいると
いろんな貼り紙にふと目がいってしまい、脳の容量がとられる感じが結構あった。
いっぱい貼るとやっぱり気が散るのでここぞ!という所だけに貼るのが大事である。
はじめた当初「貼り紙で賢くなったりもするんじゃない?」と思い
お風呂場に
すごく難しい四字熟語の漢字を貼っていた
毎日お風呂に入りながら見るので、これはいやでも覚えられるだろう。
「この作戦で暗記もできたら人生また余裕になってしまうな!!」と思ったのだが
5日後の書き取りテストでこの有様である。(上:私、下:夫)同じ家に住む夫もまいにち見ていたはずで、書けてる風だが1文字目以外全部間違っている。最悪だ
貼り紙でうっかり最強の人類になる予定が、長年の悪習にはぜんぜん効かなかった。
ただ簡単なストレッチや、忘れ物、ちょっと変えたい習慣にはすごくよかったので、ぜひ試してみてください。
失敗もあったが、紙一枚生活に増やすだけで変わることがあるという事実がおもしろい。「やっぱ自分や人間の脳って単純なんだな」としみじみ思う5日間だった。
あと文字がでかいとプレッシャーがすごくてまず嫌悪感が勝ったりする。きれいにかくのも大事でした
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