次は同じく今和泉さんが作っている「空想地図」について聞きました。
今和泉さんの「空想地図」については以前も取材させてもらったことがありますので合わせて読んでみてください。「存在しない街の犯罪物語~空想地図がおもしろい~」
いったん広告です
空想地図は理想地図ではない
前にデイリーでも「さいきょうの町」という企画があって、こうだったらいいなーという町をそれぞれ考えてもらったりしたんですが、今和泉さんの作っている空想地図というのは自分の理想の町というわけではないんですか。
この企画覚えていますよ。理想の町にすごくその人っぽさが出ていて面白いですよね。
多くの人がコンビニと東急ハンズを自分の家の近くに建てたがっていました。
その気持ちすごくよくわかります。僕が作っている「空想地図」もまったく別物というわけではなくて、こういう一人ひとりの最強の街づくりを、いるであろう無数の人の分で足して割って街を生み出す実験とでもいいましょうか。
たくさんの人に「さいきょうの町」みたいなアンケートをとって平均化したってことですか?
いえ、実際にアンケートはとっていません、とったらたいへんなので。
そうですよね。今和泉さんの空想地図は巨大な都市ですもんね。
いま描いてる都市は100万人以上いますね。
つまり100万の人が集まって、ニーズとか需要がうごめき合うと結果的にこういう町になるだろうな、という空想というわけですか。
そうですそうです。理想の姿というよりなるべくしてなった町を想像する感じですね。
いったん広告です
歴史や産業が都市を作る
都市の構造っていうのは人工に比例してだいたい同じように成長していくんですか?
そうとも限らないんですよね。もちろんある程度人口に比例して似たような賑わい、密集度にはなるとは思うんですが。
千葉とさいたまだと人口は似てるけど町の感じが違う、とかありますもんね。
駅前にコンビニがあって銀行があって、みたいな一般的な要素は似てくるんだと思いますけどね。あとは歴史的背景も都市構造に影響します。たとえば城下町だったところってなんとなく町の雰囲気が似てませんか。
似てますね。小京都って呼ばれがちです。
そうそう。城下町だった都市では城という機能がなくなっても当時の中心性みたいなものは残りつづけるんです。城が作り出した権威や中心性が残りやすい、というのもあるんですが、それ以上に土地が空くんですね。
時代が変わって城が機能しなくなるとその場所が空くということですか?
そうです。城内や周辺の士族の土地は明治以降に官有地になるので、町の中心近くに広大な空地が現れることになります。
そこに公官庁ができたりして中心が形成されるのか!
そうですね。その点港町なんかだとこれがないんです。だからどこが中心なのかよくわからない。横浜とか那覇とか、中心部が時代によって何度か動いているんです。
都市形成には歴史とか地理とか産業とか、いろんな要素が絡んでくるんですね。すごい面白い。
いったん広告です
理想と現実とのギャップこそみどころ
これ、僕がいま住んでいる町の駅前の風景なんですが。
駅前は牛丼家と本屋、あとは銀行と不動産屋さんです。少し歩くとスーパーと魚屋さんがあります。とくに不満もないんですが、デイリーで記事にしたときの理想の町とはかなりギャップがありますね。
郊外にできた新興住宅地だと八百屋とか魚屋さんってほとんどないんですよ。最初から大きなスーパーがどーんとできて食料品の需要を吸収してしまうので。
なるほどー。うちの近所では商店街も残ってますが、やはり少し離れたところに大型スーパーがありますね。空想地図はこうした現実と理想との間をとっているということですか。
都市ができる以前からそこに暮らしていた人の理想とか意向と、実際に都市が形成された後のギャップみたいなものは考えますね。本当は職住近接の中心地にしようと思っていたのに、オフィスが誘致できなくてベッドタウンになっちゃったニュータウンとか。
すごくありそう。
当時の世相とそこに暮らす人々の動きというか、現在にいたるまでの変化の流れみたいなものの方が理想よりもグッときます。
理想形を想像するよりも、自分の手の及ぼないところで起きた意外性みたいなものまで加味して地図を作っていくんですね。神2.0ですよそれは。
ぜんぶ空想なんですけどね。
これからもこの地図は拡大していくんですか。
拡大というか、いまは日々修正をしている感じですね。いつか海外版もやりたいんですが、時間がかかりすぎるのでいつになることやら…。
無責任に新作を期待しています!
「地理人」今和泉さんの作った作品はマルシェルで販売中です。眺めているだけでストーリーが見えてくる、そんな不思議な作品なのでみんなで買って一晩中眺めましょう。
よろしくお願いします!
地図は自由だ
子どもの頃は地図って知らない偉い人が作っている絶対的なものだと思っていたのだけれど、今和泉さんと話をして、実はもっと身近で自由なものでいいんだと思いました。地図おもしろいなー。