岐阜で五平餅を食べる
次は本場、岐阜で五平餅を食べた。
岐阜駅の近くに、僕の子どもの頃の記憶にかなり近いだんご屋さんを見つけたのだ。それがこちら。
いま令和7年である。値段もお店のたたずまいも、僕が小学生だったころと変わっていない気がするけどいいんだろうか。
お店をのぞくと店主が黙々とだんごを焼いていた。
だんごは本当に1本30円だった。
焼きたてのだんごを頬張ると、一瞬で頭の中が少年時代にタイムスリップする。
うちの家はたいして信心深い方ではなかったのだけれど、休みにはちょっと遠くの神社に参拝に行ったりしていた。子どもだった僕は、神社の参道で帰りに買ってもらえるみたらし団子を目当てに、よく両親についていったものだ。
五平餅も注文させてもらったのだが、焼き上がるまでに30分くらいかかるぞ、とのことだった。なぜならいま手一杯だから。
「いま焼いてるのはぜんぶ電話予約分なの。五平餅は注文分ぜんぶ焼いたあとになるからしばらくかかるよ」
僕にいいながら、耳では新しい注文の電話を受けていた。
大将とだんご
だんご屋の大将は郵便局での仕事を辞めたあとにここでお店を始めたのだという。そのキャリアパス、非常に興味があります。
ーーさっきから注文がひっきりなしですが、もしかして郵便局時代よりも儲かってたりします?
「そんなわけないだろう。どうやったら儲かるんだよこれで」
ーーそうですよね、すみません
「おにいちゃん前も来たよな(初めて来ました)、この辺の人?あ、違うの?ならどこから来た?東京?何しに?」
僕はこの日たまたま岐阜の大学で講義みたいなものをすることになっていたので「今日は学校で教える仕事があって」と答えると「体育か?」とすぐに返された。
この遠慮なく懐に投げ込んでくる力任せのキャッチボールが心地よくて、みんなここにだんごを買いに来ているのかもしれない。大将に「また来ます」と言ったら「次は電話してからな」と言われた。
五王 加納店
岐阜県岐阜市加納桜田町2丁目1
五平餅はコミュニケーションの場
五平餅は餅みたいにねばねばしていないので片手で食べながら話をすることができる。それから名古屋の章でも書いたが、道端で五平餅を食べている人がいたら、その人の周りにはなんだか平和な空気を感じるのではと思うのだ。
五平餅は東海地方で生まれたコミュニケーションツールなのである。平和利用のため、全国にもっと広まった欲しいような気もするし、知ってる人だけで味わっておきたいような気もしてます。
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