五平餅とは
五平餅は岐阜を中心とした東海地方でよく食べられている餅で、味噌を塗ってあつあつのを食べるとそれはもう美味い。
僕は愛知県出身で、子どもの頃からことあるごとに五平餅を食べていた。
スーパーにも売られていたし、観光地に行くと屋台で五平餅を食べた。高速のサービスエリアで食べるのもだいたい焼きそばか五平餅だったように思う。東海地方には五平餅とかみたらし団子のような、甘辛く味付けされた食べ物がいくつも存在するのだ。
名古屋で五平餅を食べる
さっきはなりゆきで「五平餅とは餅で」と書いたが、よく考えてみるとあれは餅ではないと思う。
じゃあなんなのかというと、ちょっと現物を食べながら説明させてほしい。
場所は名古屋の繁華街、栄である。
栄はいわゆる大人の街で、夜になるとかなりキラキラした人たちがキラキラしたお店に集まってくる。
そんなキラキラした街に、突如として茶色の五平餅が売られているのだ。
子どもの頃の僕らにとって名古屋、それも栄なんて言ったらまさに未知なる土地で、そこには子どもを寄せ付けない雰囲気があった。
自分が大人になり、堂々と栄にも来られるようになって、いざ来てみたら五平餅が売られていたのだ。あの頃の自分に教えてやりたい。
5分ほどして味噌が焼ける美味しそうなにおいとともにやってきた。
茶色くて平たい食べ物、これこそが五平餅である。
五平餅はぜったいに焼き立てが美味い。
こればっかりは東海地方に来て食べてもらうしかないのだけれど、たこ焼きよりも焼き芋よりも、焼きたてを食べてもらいたいのはだんぜん五平餅である。
うまい。
五平餅の茶色は甘辛い味噌の茶色である。味噌には砂糖のほかに、クルミやゴマの風味が加わる。
五平餅はごはん
そんな美味い味噌が塗られて焼かれる五平餅だが、はっきりいってこれは餅ではない。
ならなんなのかと言うと、ごはんである。
そうなのだ。批判を恐れずに言うと、五平餅はごはんなのだ。
五平餅は名前こそ餅だが、それは食べる時に餅のようには伸びない。なぜならごはんだから。
五平餅はごはんを(うるち米を)粒が残る程度につぶしたものを木の棒に練りつけて、味噌を塗りながら焼いたものなのである。
味はおおかたの想像どおり、香ばしくて素朴。スイーツなんていうしゃれた言葉ができる前から売られている元祖おやつである。
栄で五平餅を食べていると、通りかかったおじさんが「おお、なんだかええにおいしとるな」とだけ告げて歩き去って行った。僕が缶チューハイでも飲んでいたらけっして声をかけてはこなかっただろう。五平餅を食べている人には声をかけたくなる平和な空気を感じるのかもしれない。
五平もちの五平 栄店
愛知県名古屋市中区栄3丁目7−24