同じ文明堂でも、味も商品も違う
この情報、缶詰のプリンを探していた折に読者の方から教えていただいた。
文明堂は文明堂でも「日本橋文明堂」で以前缶詰プリンの扱いがあったという(現在は残念ながら缶詰ではない)。「銀座文明堂」や「新宿文明堂」では売っていないという情報だった。
え? 文明堂って、ぜんぶ同じじゃないの? と、びっくりだ。子どもの頃からちょっと豪華なおやつとして慣れ親しんだ文明堂。それが、地名によって違うってどういうことだろう。
色々と調べてみて(というか、大まかな事情は各店のホームページやウィキペディアに書いてあったのだった)、なんとのれん分によって分社化した文明堂が、8種類の会社としてそれぞれ別のチェーンとして運営されているというのだ。
それぞれにほぼ独立した製造ラインを持っているらしい。商品内容も味も違うらしいのだ。文明堂神戸店のホームページによると
文明堂は全国に7法人を設立し、各地域に密着した生産・販売システムを基本としたグループ会社として相互協力体制をとっている。
とのこと。
店がのれん分けして発展していくというのは良くあることだと思うが、それぞれがさらにチェーン展開していくってすごいぞ。
大変なことになっていた
8種類の文明堂は、以下の通り。(各社ホームページ、問い合わせ調べ 2009.7現在)
なんだかややこしくて、表を作っているうちに混乱してきてしまった。なので、気持ちを落ち着けるために表の色あいをカステラっぽくしてみましたよ。
新宿文明堂は、横浜市にもある
店舗は直営店を記入したが、販売店や商品の取り扱い店まで含めると、各チェーンでもっともっとたくさんある。
ヒゲをなぜながら「興味深いのう」と思ったのは、特に東京・神奈川・埼玉で別チェーンの文明堂が拮抗していることだ。
横浜文明堂というチェーンがありながら、一方で新宿文明堂が横浜市内にも出店している。
さらに、株式会社名が「文明堂銀座店」や「文明堂日本橋店」となっているのがまたややこしい。「文明堂銀座店」に「駒込店」や「勝どき店」がある。
実際は屋号で「銀座文明堂○○店」「日本橋文明堂○○店」と呼ぶようなのだが、裏に事情があって興味深い。
お菓子を売らない文明堂
さらに、ひとり別の道をゆく文明堂もあった。麻布文明堂だ。
こちらはなんと、運営会社の名前を「株式会社麻布文明堂」と残して、実際のお店はおしゃれな雑貨屋さんへと変化をとげていたのだ。
麻布文明堂だけは現在の文明堂グループにも属していないようだ。文明堂にも色々な道があるのだ。
(上の方にある、各店の買物袋の写真の右上に写っているのはこちらの店で買ったカニの形のタワシでした。)
味も本当に違うのか
興味深すぎて文明堂の事情の説明が長くなってしまった。詳しくはウィキペディアや各チェーンのホームページに詳しいので、興味のある方はぜひ見てみてください。そしていつか私と文明堂について熱く語り合おうじゃないですか。
さあ、ここからが今日の本丸だ。本当に味や商品に違いはあるのだろうか。
今回は銀座、日本橋、新宿、横浜の各チェーンでかすてら巻きと三笠山を買い集めた。
商品も独自とはいえ、この2商品はどこも取り扱っていた。やっぱり、チェーンは違えどどこも文明堂なのだ。
包装にも早速違いが
カステラ巻き、値段はどこもひとつ105円だった(新宿文明堂は店舗の関係か5つパックしかなかった。5つで525円、ひとつあたりはやはり105円)。
買い集めて回っているときから、その包装の違いに「おお、やはり違うチェーンなのだ!」とわくわくさせられた。並べてみよう。
おや、新宿と横浜は同じじゃないか。この2店は紙袋で包んだあと入れてくれるビニールバックも同じ柄であった。
他のチェーンよりもつながりが深いのだろうか。
と、思って裏をひっくり返すと。
新宿の方は製造者が「(株)文明堂新宿店」であり、横浜の方は「文明堂製菓(株)」であった。原材料も微妙に違う。
うおおお。なんだこれ、2時間サスペンスみたいじゃないか。
アリバイとしてあなたが買ってきたこのカステラ巻き、あなたは新宿御苑の文明堂で買ったっていってましたよね? でもこれ、新宿文明堂の商品じゃないわ。よく見てご覧なさい。これは、横浜文明堂の商品よ!
ババーン! である。
カステラ巻きは、ふわふわとどっしりの2種がある
食べてみた。
「ややっ」
と言った。確かに「ややっ」と私は言った。かなり味が違うのだ。「ややっ」なんて実際口に出して言ったのは初めてかもしれない。
おおまかに言うと、横浜と日本橋は生地のきめが細かくふわっとしている。対して、新宿と銀座はきめが粗く、どっしりしていた。
さらに全体的に味や甘さの核が中央のカステラにあるのに対し、日本橋のみ外の皮のホットケーキのような風味が強い。
確かにこれは「ややっ」といわずにはいられない違いだった。
店舗イメージとお菓子のイメージに差、銀座
意外だな、と思ったのが銀座文明堂のカステラ巻きだ。店のイメージとお菓子のイメージが、ちょっと違う。
今回、商品を買うにあたって銀座の一等地にある本店にも行ってみたのだが、ここがまたえらくオシャレだったのだ。
洋菓子などが置いてあり、おしゃれすぎてカステラ巻きも三笠山も扱っていなかった(あとで大森の駅ビルにある店舗で買った)。どうやら一般の店舗とは違うコンセプトショップのような扱いらしい。
それが、お菓子を食べてみたらどうだ。大きめできめが粗くどっしりしていて甘いじょっぱい。ものすごく庶民にフレンドリーな味わい。
気取ってるくせに中身はくだけてるって、ちょっと嬉しい。
三笠山(どら焼き)は各店で157円
では三笠山はどうだろう。こちらもやはり値段はどこも157円。
ちなみに銀座文明堂で「銀三笠」、新宿文明堂で「小金三笠」と上位品があったり、季節のフレーバーを出したりもしていたが、どこもキチッと定番として三笠山は扱われていた。
上位品もかなり気になりますが、今日は基本の三笠山をいただきます。まずは静かにその様子を眺めてみましょう。
いいですね。……いいですね!
ドラえもんの好物として描かれるイメージか、どら焼きがたくさんあるってすごくいいことのような気がする(ドラえもんが大げさに喜んでくれそうな気がするのだ)。
それぞれに見た目が思った以上に違う。つるっとして、フチがきっちり閉じて絵に書いたどら焼きのような横浜。ふつふつ気泡の後があって見た目にも軽い日本橋。
味も相当違うんじゃないか。
あんこは試食が難しい
と、勇んで食べ始めたのだが。
カステラ巻きのように、分かりやすく味の違いを感じないのだ。おそらく、あんこのせいだと思う。
ものすごく甘いあんこ、というわけではない。優しい味なのだが、烏龍茶をたくさん飲みながら食べても、量を食べることで、あんこの甘さが脳にぎゅんぎゅん伝わってきて、何がなんだか分からなくなってしまった。
思い出の味は、新宿と日本橋に
文字にするほど特徴的な味の違いを感じることはできなかったが、ひとつ気づいたことがある。
私にとっての「文明堂の三笠山」は日本橋文明堂の三笠山だった、ということだ。パッケージもそうだし、表面の気泡の感じも覚えがある。
不思議なことに、カステラ巻きの方は新宿店の方に覚えがあった。
調べてみると、母の実家の近所に日本橋文明堂が、父の実家の近所に新宿文明堂の店舗があった。どうやら、それぞれの祖父母が最寄の店から手配していたらしい。
私は、日本橋と新宿のハーフだったのだ。
いや、ハーフって言葉の使い方は違うか。何しろ、これを読んで自分が親しんだ文明堂はどこのだったんだろ? と思って面白がってくれる方がいたらすごく嬉しいです。
カステラも食べねばなるまい
今回、食べ比べということで買い集めるのに量の多いカステラは対象外にした。
が、最初のページでもご紹介した横浜文明堂の伊勢崎町一丁目店に併設された喫茶室「ル・カフェ」でカステラにアイスを挟んだ「カステラアイスクリン」を食べたとき、「あ、こりゃカステラも食べ比べるべきだわ」と思ったのだ。
ここまでのぎっりしザラメは初めて見た。
カステラのザラメというのは日がたつと生地になじんでしっとりし、ザラメの影は見えなくなる。店舗併設ということで出来たてだからこそのこのザラメ感かもしれないが、それにしてもみっしりすぎないか。
他の文明堂のカステラはどうなんだろう。ザラメの具合からして違いがありそうだ。味にも個性があるんだろうな。
長崎、神戸、浜松と回れなかった文明堂巡りとあわせ、カステラの食べ比べにもまた使命を感じております。