スズキナオ:
楠見清さんっていう、美術手帖の編集長をしてた方の本です。表紙を見てもわかるんですけど、
スズキナオ:
町の中のなんも書いてない看板とか、色あせちゃったやつとかね。これは地図なのに、町名とか全部消えて、なんもなくなってる
スズキナオ:
こういうのを収集して、ジャンル別に分類した本です。
石川:
情報がなくなっちゃった看板。
パリッコ:
無言板って名付けたんですね。いや~、いい。
スズキナオ:
昔からトマソン(※)って呼ばれるものがありますけど、トマソンの中にも無用看板っていうのがあったらしいんですね。この本ではそれに近いものを「無言板」って呼んでいて、何も言ってないもの/伝えたかったのかもしれないのにその意味をなしてないものを愛でる1冊なんです。延々、見てるだけでただ楽しい、そんな本。
※赤瀬川原平が提唱した、街のなぜそこにあるのかわからないものを表す言葉。正しくは「不動産に付着して美しく保存されている無用の長物」。
タイトルが秀逸
パリッコ:
見てるだけで楽しいけど、文字は何が書いてあるんですか?
スズキナオ:
それが、けっこうテキストぎっしりなんです。特にこの著者がこだわってるのが、ひとつひとつに対する名付け。作品名みたいなのをつけてるんです。
全部についてて、例えば…この看板、左右が風で割れちゃってるんですけど、「空の侵食」っていうタイトルになってて、空に食べられてるみたいに見えてくる。
石川:
はいはいはい。
パリッコ:
たしかに!
名付けることによって、なんかただの風で割れた看板がそういうふうに見えてくるっていう。
スズキナオ:
そうなんですよ、ちょっと作品に見えてくる。さっきも見せたこれなんかも
スズキナオ:
「地名のない町」っていうタイトルになってて。いきなり、美術作品になった感がするんです。
パリッコ:
「地名のない町」って言われると、なんか部屋に飾りたくなりますね。
スズキナオ:
ね。買いたくなる。 そこがこの、楠見さんのセンスが出ていて素晴らしいんです。
でも、そこまでじっくり鑑賞しなくても、パラパラ写真見てるだけでおもしろいんです。
石川:
いいなー。数はかなりあるんですか。
スズキナオ:
すごい数あります。けっこう膨大。連載時の2年分にくわえて、書き下ろしっていうか、新作もたくさん入れて1冊になったみたいですね。
パリッコ:
これも完全にデイリーポータルZと通じるものがありますよね。こういうものの存在に気づいて集めちゃうっていう。
スズキナオ:
これもいいですよ。急に立っている黒い板。
パリッコ:
モノリスだ。
スズキナオ:
まさにモノリスです。ロードサイドモノリス。
あと、たまにビルの上に真っ白い看板があるじゃないですか。広告出す人がいなくて、ただ真っ白なやつ。
石川:
ありますね。
スズキナオ:
そういった真っ白い看板もたくさん載っています。ああいうの見てちょっと面白いなと思う気持ちって、なんなんですかね。
パリッコ:
なんなんだろう。でも、いちど面白いと思うと、もう絶対に集めずにはいられなくなる。
スズキナオ:
街歩き好きの人にはもうみんな読んでほしい…というかもう持ってるかも、って感じの一冊ですね、これは。
「切り取られた空」
パリッコ:
いま僕、ぜひ見てほしいものが一つ思い浮かんだんですけど、町の地区掲示板みたいなのよくあるじゃないですか。
石川:
うん。ありますね。
パリッコ:
地元の街にある掲示板が、板が抜けちゃって枠だけになってて、 向こうに枠で切り取られた綺麗な空が見えるんです。いつも通るたびになんか気になってたんですよね。
石川:
めちゃめちゃコンセプチュアルじゃないですか!
スズキナオ:
え、それちょっと写真見せてください。
パリッコ:
これ。
パリッコ:
まさに無言板だなっていう感じです。
スズキナオ:
いやーこれはいい!これもまさにこの本でいう無言板ですね。本の中にもちょっと似たものがありました。
スズキナオ:
タイトルは「切り取られた空」です。
パリッコ:
そうそう、まさに切り取られた空!
スズキナオ:
街の中で見つけたこういうものがいっぱい収められた本なんで、ちょっと考え事し過ぎて疲れた時とかに、見てると頭の中が空っぽになるような効果があります。そんな一冊です。
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