大仏も建立しよう
暇つぶしでアマビエのゲームを作り、これが多くのプレイヤーの暇つぶしとなる。趣味の自作ゲームは、作り手と受け手の暇つぶしの連鎖だ。
そして、ゲーム「アマビエビ」よりもさらなる暇つぶし要素を持つ「ほりげー」が実はすでに存在する。「ビッグブッダ」だ。大仏建立の早さを競うという、大仏建立RTAゲームである。
数年前に作ったゲームであるが、疫病の流行る今こそバーチャルに大仏を建立して世に安寧をもたらそうではないか。
新型コロナウイルスが広がる中、何か社会に貢献したい。しかし、医療従事者でもなければ大した貯金もない私が社会に貢献できることは「外出せず家の中でじっとしている」ぐらいしかない。そこで、除災をもたらすといわれる妖怪「アマビエ」のゲームを作った。遊んでください。
※当記事は『デイリーポータルZをはげます会』の会員のみなさんにテストプレイの協力をしていただきました!
音が出るので注意してください。
アマビエとは江戸時代に出現したという半人半魚の妖怪であり、豊作や疫病を予言するといわれる。また、アマビエが「私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ。」と言ったことから、アマビエの姿を絵に描くことで除災になるとも伝えられる。
新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で広がる中、日本では事態の収束を願い、アマビエの絵を描くツイートが増えている。もちろん、科学的根拠はまったくないが、それは分かっている。身も蓋もない言い方をすると、単純に外出自粛が続いて他にやることがないという背景もあると思う。こういうノリはインターネットの好きな部分だ。
私もアマビエの絵を描いて社会に貢献したい。いや、もっといいことを考えた。アマビエのゲームを作るのだ。ゲームによってデジタル的にアマビエの姿を人々に見せることができるため、除災効果が期待される。もっと実用的な効果としては、このゲームが多くの人の暇つぶしとなり、家にこもるのを加速させ、外出自粛による感染防止が期待される。
前置きが長くなったが、アマビエのゲームを作ったので遊んでください。ページ冒頭にあります。
作ったのは、アマビエとアマエビを区別するゲームだ。たくさんの「アマエビ」が表示されている中、一個だけ「アマビエ」が表示される。そんな中でアマビエを2.6秒以内に選ぶというものだ。
アマビエのゲームはとても簡単なもので、ミニゲームと言ったほうがいいかもしれない。それでも、イラスト、音楽、プログラミングといった様々な要素が組み合わさっている。せっかくなので、このゲームの製作過程について書いておきたい。
もともと私は「ほりげー」とよばれるミニゲームをいくつか作っている。今回もいつもの「ほりげー」と同じ作り方で作っていく。
まずは設計図である。といっても、ゲームの仕様をざっくりとイラストで描いたものである。どうせ自分しか読まないのでフォーマットもなにもない。ただのメモだ。
つぎはイラストである。イラストは仮のイラストを使用して最後に差し替えるのでもよいが、ゲーム製作のモチベーションを高めるにはできるだけ早い段階から本物のイラストがあったほうがいい。
仕様書にも書いたが、今回必要なイラストは
の4つである。背景にはあまりこだわりがないのでフリー素材を使うことにする。アマビエとアマエビのイラストは重要なので力を入れたい。しかし私は絵が下手なので絵の上手い妻に描いてもらう。
紙に色鉛筆で描いてもらった絵をスキャナで取り込み、背景削除ソフトで背景を消す。ペンタブは持っていないので必然的にアナログの温かみの感じられるイラストになる。
イラストができたら次はプログラミングである。ゲームはプログラムで動いている。それを作るのがプログラミングである。今回はWebブラウザで遊べるゲームなので、cocos2d-JSとよばれるゲーム開発環境でプログラムを作る。簡単なゲームをさくっと作るのに向いている。
(実際のところcocos2d-JSはcocos2d-xに統合されているので、cocos2d-xをインストールした上でcocos2d-JSの機能を使います。)
そこまで有名じゃないかもしれないが、昔から使っており個人的になじみ深い。ここにサンプルプログラムの動かし方が解説されているので誰でも簡単に自作ゲームの沼に入ることができます。
仕様書の1つ1つの画面は、プログラムの中ではSceneと呼ばれるもので表現する。今回は、4つの画面を用意しているので、4つのSceneをプログラム上で作っていく。
画面を作ったら、あとは黙々と中身を作りこんでいく。代表的な機能を挙げると
こんな感じ。酒を飲みながらこれらをうりゃ~っと作っていく。だいたい2時間ぐらいでできた。
ひととおり作り終えたら、何回も遊んでバグがないかをチェックする。また、ゲームの難易度を考慮し、パラメータを調整する。
ここまで来たらあとはBGMや音声を作るだけだ。まずは音声。今回は「アマビエ」を押すと「ビエ」という音声が流れ、「アマエビ」を押すと「エビ」という音声が流れる。こういうのはiPhoneの録音機能で録音し、波形編集ソフトでいじるのが早い。
あとは一番大事なBGM。自作ゲームではBGMにはフリー音源が使われることが多いが、私は基本的に自作するようにしている。BGMはゲームの雰囲気を大きく変える重要な役割だからだ。
お風呂に入り、「アマビエっぽい曲、浮かべ~!」と思っていると、浮かんだ。浮かんだ曲のメロディやコード進行を風呂から上がってからギターやシンセサイザーで確認する。
これをもとに作曲ソフトでドラム・ベース・ピアノなどを入力していく。
1時間ちょっとでオケ(ボーカル無しの曲)ができた。ここにボーカルを入れる。しかし私は歌うのが下手なので、歌の上手い友人に歌ってもらう。私のゲームは基本的に周囲の協力なしでは成り立たない。
スタジオほりは準備万端である。しかし、新型コロナウイルス撲滅を願うゲームの録音のために外出してもらっては本末転倒なので、友人には自身のスマホで録音してLINEで送ってもらうことにした。ちょっといいマイクは出番がなかった。
スマホで録音してもらった音源を作曲ソフトで取り込んで、音程や音量や音響効果をいじったら出来上がり。完成~。
せっかくなので、作った曲「アマビエビ」を聞いてください。(ゲーム中に流れるものと同じです。)
そしてBGMをゲームに取り込めば、ゲーム「アマビエビ」の完成である。
当サイトのライターやデイリーポータルZをはげます会のメンバーたちにゲーム「アマビエビ」を遊んでもらい、オンラインで感想を貰った。
気を使ってくれたのかポジティブな意見が多いですが、よけいな深読みはせずポジティブにとらえていきます。
また、デイリーポータルZをはげます会のメンバーからは、「途中から曲の歌詞がチラついて集中力が切れました笑」「絵が大変かわいいです」などの感想をもらった。はげましてくれてありがとうございます。
せっかくなので、改善すべき点も聞いてみたところ、次のようなものが得られた。
これを受け、再度プログラミングを行う。顧客の要望に迅速に適応していく。
できた。これで新「アマビエビ」の完成である。
暇つぶしでアマビエのゲームを作り、これが多くのプレイヤーの暇つぶしとなる。趣味の自作ゲームは、作り手と受け手の暇つぶしの連鎖だ。
そして、ゲーム「アマビエビ」よりもさらなる暇つぶし要素を持つ「ほりげー」が実はすでに存在する。「ビッグブッダ」だ。大仏建立の早さを競うという、大仏建立RTAゲームである。
数年前に作ったゲームであるが、疫病の流行る今こそバーチャルに大仏を建立して世に安寧をもたらそうではないか。
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