


これからの二日間は、ダムに浮かぶ水上家屋が拠点となる。
音楽を爆音で流して歌いたいだけ歌い、冷たいビールやメコンウイスキーを飲みたいだけ飲み、釣りたいだけ釣りをして、寝たい時に寝る。
平日に朝から晩まで演じているサラリーマンとしての皮を脱ぎ去って、子供のようにはしゃげる時間が始まるのだ。





いつも通りの答えなのだが、日本とはあまりに違う感覚。



普段は仲間と網で魚を捕るか湖で泳いで過ごし、疲れたらハンモックで寝るという生活を送っているらしい。いいなあ。
彼は会うなり「日本はどんなところだ?女の子はカワイイのか?写真を見せてくれ!」とガンガン話しかけてくる人懐こい性格で、同い年ということもあって僕ととても気が合った。
癒しの釣りはPOYたちと世間話をしながら、なんとなく始まった。







すると、異常に視力の良いPOYが「あれを見ろ!」と声を上げた。
水牛の群れならもう見飽きたよ…。そう思いながらも指さす方向へ目を向けると、減水して干上がった岸辺に刺し網のようなものが打ち上がっている。
さらに注視すると、その網には二羽の鳥が絡まって暴れていた。
僕は以前、日本で刺し網を使って魚類調査の仕事をしていた。その経験から水鳥が刺し網の被害に遭うことはよく知っていた。こういったケースでは、水鳥が暴れれば暴れるほど身体に糸が食い込み、がんじがらめになっていくものなのだ。
すぐに助けねば。釣りを中断し、船のエンジンを回した。
船を岸に突き刺し、二人で現場に飛び降りると、漁師のPOYが見事な手さばきで一羽目を救出。
網に絡んでからそんなに時間が経ってなかったのだろうか。無事に解放できたことにホッとする。残すはもう一羽。モゾモゾと動いているので、こいつも助かる見込みはある。



その瞬間、一体何があったのか「ギャァァァァァ!!」と悲鳴をあげ、手をバタバタ振りはじめるPOY。
その異常な焦りっぷりに、コブラにでも噛まれたのかと思ったが、そういうわけでもないらしい。何か言わんとしているが、パニックに陥って早口になったタイ語なんて聞き取れるわけがない。
落ち着きそうもないPOYを横目に、それなら自分が助けてやらねばと鳥に手を伸ばす。
しかし寸前で大きな違和感を覚えた。鳥はモゾモゾ動いているが、その体内から「パキパキ」と骨が折れるような音が響いている。
「あれ、もうこいつ死んで…えっ!?」
鳥の絶命を悟った瞬間、その肉を突き破って巨大な生物が飛び出してきた。
目の前で繰り広げられる光景に、身体は鳥肌を立てることすら忘れ、POYとともにギャーギャー叫び続けた。



映画の小道具かと思うほどの完成度と気持ちの悪い近未来ロボットのような動き。
だが、このモンスターとの出会いも一期一会。
そのおぞましさより、そこに同居する「生物としてのおもしろさ、かっこよさ」が僕に冷静さを取り戻させてくれた。
呼吸を整え、夢中でシャッターを切る。
……ここからは接写で撮影した写真が混じるので、ムカデが苦手な方は見ない方がいいかもしれない。
逆にこういうのが大好きな人たちにはぜひ見てもらいたいし、この記事で友達を驚かせて欲しいとも思う。
これでギャーギャー言ってくれる人がいれば本望です。



……こんなの、殺虫剤があっても戦える気がしない。





しかし、いざ実物を見てみるとその存在感や色鮮やかさ、大きさのインパクトなど、一枚の写真だけでは伝わらない情報があったことに気付く。”百聞は一見に如かず”を身をもって体感した。













