本気のジムで即席ボクサー養成
やってきたのはこちらのボクシングジム。
都内でも有数の老舗ジム。ライター西村さんが世界恐慌の前の年だ!と驚いていました。驚きポイントそこか。
極東ボクシングジムです。ボクシングの聖地。後楽園ホールから近い、江戸川橋に位置する老舗ボクシングジム。こちらでサンドバッグを叩かせてもらいます。
プロボクサーと言っても、もう20年以上前の話ですけどね。
実は、大学生と社会人なりたての頃、こちらのジムに所属してプロボクサーをやっていたことがありまして、今回は無理言ってこの撮影をやらせてもらいました。
練習はちゃんとやっていましたが、1年に1、2回ぐらいしか試合しないヘナ猪口ボクサーでしたよ。
ボクシングジムは、見学や体験練習などかなりオープンに行っています。ボクシングをやってみたい、練習してみたいと思ったら近くのジムに行けば、大体どこのジムでもフレンドリーにいつでも迎えてくれます。
試合宣伝ポスター用に撮影した写真。懐かしいねえ。6戦して2勝4敗1KOの戦績でした。
しかし、いくらフレンドリーに迎えてくれるとはいえ、いきなり自由にサンドバッグを叩かせてくれるというのはまずありません。サンドバッグを正しく叩くのは結構難しいし、怪我の心配もあります。
今回は他の練習生が少ない早い時間に短時間で撮影させてもらいました。ありがとうございます。
通常、肌着、ジーンズでは練習出来ません
では、まず着替えて軽く体をほぐすところから始めます。サンドバッグを叩いてもらう3人には、動きやすい格好(運動着)と動きやすい室内用靴(室内用運動靴)を用意するようにお願いしておきました。
肌着とジーンズ?
連絡ミスで若干一名運動着とは違う感じの方がいますが、それほど激しく動くわけではないので今回はよしとします。基本、ジムでの練習では通常の運動着が必要です。
西村さんが「よく素っ裸で町を歩いてしまう夢をみるんですが、肌着でスポーツしたときの気持ちに似てました」と言っていた。
それから、ボクシングの練習で、サンドバッグについてはメガネ着用でも問題ありません。実践と同じように殴り合うスパーリングの場合はメガネ不可です。コンタクトは、ソフトであっても外しておいた方が安全です。
今回はサンドバッグのみなのでメガネ三銃士でも問題無し。
肩周りの関節はまあまあ動く。
ボクシングだからと言って特別な柔軟運動なんてものは無いので、普通に各部間接を怪我しない程度にほぐしておきます。
座ってキーボードに向かい続ける事が多い為か、股関節は全員硬め。
と、ここで3人に最近どんな運動をしたか聞いてみました。返ってきた答えが「さっき上がった階段」。
地下鉄の階段を上るのに辛そうな西村さん。ちょっとした登山でしょうか。
まあ、いいでしょう。今回はやっている人風に見せるだけなので、あまり動く必要はありません。いや、少しは動くか。大丈夫か。
初めてのグローブ
柔軟が終わったところで早速グローブをつけてもらいます。
試合用8オンスグローブや薄い練習用のパンチンググローブなどをそれぞれ装着。
グローブは通常サンドバッグ打ち、ミット打ち(相手の手にはめたミットを叩く練習)、スパーリングの時などに使用します。
多くの場合、ジムに幾つか共用で使えるグローブが備えられているので、ジムに入会したら即用意しなくてはいけないということはありません。
ひとまず軍手があれば大丈夫。右は練習用の簡易バンテージを巻いている。試合用はもっと薄くて長い物を巻きます。
ただし、グローブをはめて何かを叩く際には手にバンテージという布を巻いておく必要があります。これは手にかかる衝撃を和らげるなど様々な目的があります。巻き方にはコツがあるので、最初は軍手で構いません。
ただ、これを巻いているだけでボクシングをやっている感じにはなります。
前へならえから腕を下げて手を上げる
グローブをはめたところで早速サンドバッグと行きたいところですが、まずはパンチを打つ構えをザックリ覚えます。
力を入れず自然に。
簡単にボクシングの構えを作るやり方としては、まず両腕を肩幅で突出し前へならへ。そのまま下げて肘が体からボール1個分ほど開けたところで止めて手を上げて握る。
軽くゆったりと構えましょう。
肘はそのままで手だけを内側へ少し寄せ、1歩前へ出て体を45度に傾け少し腰を落し、前を向けば大体フォーム完成です。とりあえず、こんな感じで構えが出来ていればボクシングをやったことがある人風に見えます。
ただし、動かなければ。
肘が開くと子供のケンカ風になります。
構える時の注意点は、肘が開きすぎたり閉じすぎていたりしないこと。背中が反り返ったり、変に猫背になったりしないこと。力を抜いて先ほどの手順で構えていきます。
閉じすぎているとオカマ風になる。力が入り過ぎるとやったことある人風に見えなくなります。
構えが出来たらパンチの打ち方。パンチにはストレート、フック、アッパーと何種類かあります。やったことがある人風に見せるならば、とりあえず左右のストレートをそれらしく出せれば大丈夫。
真っ直ぐ押し出すように。拳を砲丸と思って押し投げる感覚。
パンチを打つ時は、手を後ろに下げたり肘を開いたりせず、そのままの位置から押し出すようにまっすぐ打ちます。拳を砲丸投げの球と思って、押し出して前へ投げる感じです。その時に、腰から回転して手を出している方の肩が前へ出れば理想的です。
それから、パンチを打つ時は、打っている手とは反対側の手をあごの位置から下げないこと。何回か打っているとだんだんと下がってきます。これを下げないようにしておけば、やっていた人風度合いが上がります。
左右を連続で打てばワンツーパンチです。
いっそのこと目ぐらいの高さまで上げておいても構いません。肘を開かない、逆の手を下げない、力を入れない。ここがポイントです。
フォームをザックリ覚えたら次は実際にサンドバッグを叩きます。ここまで約30分。見た目のみを作りあげます。
無理に叩かない
それではサンドバッグを叩いていきます。
昔は本当に砂が入っていたそうですが、今の物は布や水が入っています。
一口にサンドバッグと言っても、そのサイズや材質は様々。小さい物は叩くと大きく揺れやすく、それに合わせて動いてよけたり叩いたりすることになります。
一方的に叩かれるのをサンドバッグ状態なんて言いますが、サンドバッグは叩けば揺れるし、正面に立ち続けていればぶつかります。なかなか一方的には叩かせてくれません。
表面がビニール製より革製の方が柔らかく叩きやすいかもしれません。
水の入ったウォーターバッグは、叩いた感触が人間に近いと言われます。重くそれほど揺れないのと、表面が柔らかく感じるので、初めて叩く時にはいいかもしれません。このジムにはウォーターバッグは無いので、比較的揺れの少ない一番大きい物を使いました。
手首が曲がらないように打ち抜く。
サンドバッグの叩き方の基本は、拳の前面で手首を曲げずに打ち抜くこと。手首が曲がっていると、捻挫したり、酷い場合は骨折することもあります。
軽く叩いている分には大丈夫です。今回は極軽く叩きます。
そもそも、ボクシングでは拳の前面以外。手のひら側などで叩くと反則となるので、しっかり拳を当てる必要があります。その点を踏まえて、先ほどの鏡の前でのパンチの動きをサンドバックに向かってやってもらいます。
西村さんは一番筋が良かった。
叩くときは、通常サンドバッグの表面よりも拳1、2個分奥を狙うような感じで叩きます。これによりしっかり打ち抜く感覚を磨き、試合の際には有効打となります。
石川さんもそれなりに形になっている。
しかし、今回はあくまでもやったことある人風に見せるのが目的。しかも初サンドバッグ。あえて、サンドバッグの表面を狙ってパンチを打ってもらいます。
藤原さんはもう少し体が回っているといい感じになりそう。
「無理に叩かない」これがボクシングをやったことがある人風にサンドバッグを叩くコツの1つです。
同じ距離を保って回る
もう一つ、やったことがある人風にサンドバッグを叩くコツが「同じ距離を保って回る」です。
対戦相手との間合いを測っている風。
あまり打たず一か所で止まっていると練習しているように見えないので、左右にサンドバッグの周囲を回ります。この時、サンドバッグに時々触るような感じで一定の距離を保ちます。
西村さんはダンスのようだと言っていました。似ているかもしれない。
足を交差させることなく、進みたい方向側の足から横に出して回っていきます。動いている最中パンチは出しません。両足がついてから出します。
叩いている時以外はサンドバックとの距離を保って左右に回る。2つ目のコツです。
時々よける動作をする
最後にもう一つ。やったことがある人風にサンドバッグを叩くコツが、「時々よけている動きを入れる」です。
ジム入門したころはこの動きをひたすらやらされた。
上げた手の位置と足の位置はそのままで、頭を左右どちらかに下げます。ガードを固めたまま相手のパンチよける動きです。
サンドバッグは対戦相手にみたてて叩いています。相手が人間であれば当然反撃されます。相手のパンチをよけつつ打つ事を想定しながらサンドバッグをたたくのです。
ちょっと違う感じはありますが、概ねよしとします。
この動きを時々まぜることで、ただ単にサンドバッグを叩いている人じゃないな感を出せ、やったことがある人風になります。
「時々よけている動きを入れる」。3つめのコツです。
実際に叩いてみよう
ここまで合計で約1時間。最後に集大成として実際に各人にサンドバッグを叩いてもらいました。結果がこちら。
まずライター西村さん。
かなりいい感じに出来ています。何回かやってもう少しスピードが出たら経験者かと思われるでしょう。
つづいて編集部石川さん。
打ち方は悪くありません。もう少し距離をとればよりよく見えます。
最後が編集部藤原さん。
距離感などはいいです。何回かやってもう少しスピード感が出れば大丈夫です。
皆さん1時間の簡単な説明と動きの練習だけにしてはよくできています。ボクシングをやったことある人に見えるかと聞かれると現時点では多少厳しいですが、「無理に叩かない」「同じ距離を保って回る」「時々よけている動きを入れる」は、見せるコツというだけでなく、サンドバッグを叩く基本事項でもあります。
この要領で1週間ほど毎日練習して、精度とスピードが上がってくれば本当に見えてくるはずです。接待ボクシング練習に行ける程度に。
色々ボクシングジム体験
さて、せっかくなので他の練習道具も体験してもらいます。
空振る石川さん。かなり難しい。
こちらはパンチングボール。よく見るダダダダと連続で叩くやり方もありますが、動くボールを1発、1発的確にとらえて叩くやり方もあります。
家に欲しいなと西村さん。いや、邪魔だと思いますよ。
こちらは別のタイプのパンチングボール。叩くと激しく動くので、その動きをしっかりとらえて更に叩いたり、よけたりします。
そっと乗せてあげました。5kgぐらい重さがあるので結構圧迫されます。
メディシンボールです。腹に落として腹筋を強くするなど様々なトレーニングに使用します。
軽快に飛ぶ石川さん。久しぶりの本格的な運動だそうです。
ロープスキップ。縄跳びです。リズムと持久力を鍛える。普通のものよりちょっと重い縄もあります。手首が鍛えられます。
リングは割とフカフカしています。この場所に移転してくる前のジムでは畳の上にマットを貼っていたので硬かった。
リングに上がってもらいました。後楽園ホールの試合用リングもそうですが、リングは薄いウレタンのような物が入っていて割とフカフカしています。
リング上では実際の試合のように動きながらシャドーボクシングをしたり、トレーナーにミット打ちをしてもらったり、実際に打ち合ってスパーリングをしたりします。
リング上でファイティングポーズ。お疲れ様でした!
こうして、1時間ちょっとの撮影は終了。みなさんお疲れ様でした!
ボクシングジムへ行ってみよう!
ライター西村さんは今回の撮影で「からだ動かすのが難しいのはよくわかりました。つくづく思ったのですが、スポーツってダンスだなーって思いました。ぼんやりした筋肉痛になりました。これぐらいの運動はしなきゃだめなんでしょうね。」と感じたそうです。程よい運動はやった方がいいと思います。
編集部藤原さんは「終わったあと仕事に戻ったのですが、体がぽかぽかして非常に昼寝したかったです。」と言っていました。普段動かないので血行が良くなったのかもしれません。
ボクシングジムに行く人は強くなるとか、上手くなるという目的の人だけではありません。かつて
ライターの榎並さんが17kgの減量に成功したようにダイエット目的としていく人がいます。サンドバッグを叩いてストレス発散という人もいます。
入門したとしても、スパーリング(殴り合い)を必ずやらないといけないという訳ではないし、練習も各自の運動能力に合わせて自由です。ボクシングジムは通常のスポーツジムと比べてかなり非日常の世界です。そんな非日常の世界に少しでも興味があれば見学にいってみるといいです。楽しいですよ。
9年ぶりぐらいにサンドバッグ叩いた。楽しいね。