大阪うどん……それは、魅惑の「だし」の世界。
大阪では、おつゆのことを「だし」と呼ぶそう。うどんのメインはだし、つまり熱いスープ。麺はスープに合うように、やわらか、もちもち。
腰が強く、醤油をかけて食べる、讃岐うどんとは、まったく違う発想で作っているのです。
それ……知ってました? 私は調べるまで、ぜんぜん知らなかったですよ。
大阪の人に「つまり、大阪のうどんはスープがメインなんだよ!」と力説されたこともなかったし。
そんなわけで、観光客なりに、大阪の町のうどんを食べ歩いてみました。
まずは、立ち食い
さて、まずは新梅田地下街の「潮屋」へ。
地下街の中の小さなおみせ。
ここに来たのは2回目。以前、朝早くやっている店を探してさまよっていたら、見つけたお店です。
今回行った時は、平日昼だったので、サラリーマンの方々が行列していました。近くにオフィスのある人たちなんでしょうか。人気なんですね。地元の人が行列してるのって、信用出来ますね。
並んでいても、立ち食いで、みんな「シュッ」と食べていくので、回転は早い早い。すぐ中に入れました。
かけうどん、なんと200円!
天かす、かけ放題っていうのも、嬉しいところです。関東はそういう店、少ないですから。
天かす無料!! やったー!
かけつけ一杯。
味は……やさしい味。すきとおったおダシ、かつおぶし、こんぶの味。麺は自家製麺らしく、少々歯ごたえがありました。
ただ、すぐお腹がすくだろうなあ、という量です。なのでサラリーマンの方々は、おにぎりや丼とのセットメニューにしていました。
うーん、やっぱりうどんは「スープ扱い」なんだなあ。
関西の方が、うどん×おにぎり、というダブル炭水化物セットにするのが謎でしたが、そうだよ、うどんをスープと考えたら普通だよ。スープなんだよ。
きつねうどん発祥のお店
次に、心斎橋の「うさみ亭マツバヤ」へ。
町のうどん屋さん、という感じ。
マツバヤはきつねうどん発祥のお店。
華やかな場所から少しはずれた所にあって、観光客的には「え、ここ?」という意外な位置にありました。ガイドブックにも載っている有名店なんだけれど。
きつねうどんは、初代がすし屋さんで働いていた時期があって、いなりずしをアレンジして、考案されたのだとか。
さっそく、きつねうどん580円をオーダー。
ご飯を一緒に煮込む「おじやうどん」も人気らしいのですが、今回は食べられませんでした……。胃袋が足りない。
かちんうどんって何だろう??
珍しかったのでオーダーしたサイダー。神戸の地サイダーらしいですよ。
おおおお、見た目からしてステキ。
うふふ。絶妙なおダシ。
いなりずしがルーツにあるせいか……あ、おあげが、あ、甘い。予想外に甘い。確かにこれはいなり寿司の甘さ。
でも、おいしく食べられる。昆布とカツオブシの味の汁と相性がよくて、うむ、これ、飲み干せるな、と思ったら、気がついたら飲み干していました。
これが大阪うどんの魔力か!
完食。
麺は……もちもちしてたかな。あんまり印象にありません。すいません。
でも大阪で超有名なお店! と言っても、観光客がたくさん来るわけではなく、地元密着型のお店として機能している感じでした。味が突飛ではなく。日常で、おいしい味。でも関東にはない味。
タコヤキや串あげみたいなインパクトはないので、本当に大阪うどんが食べたい人が、来るんだろうな……。
実はこの近所に、私が憧れている雑誌『ミーツリージョナル』編集部があるとかないとかいう話を、ネット情報で知っていたので、ソワソワしてしまいました。そう、関西の食を知り尽くす『ミーツ』さんが食べに来るような味なんです。たぶん。
ほかにも、町のうどんたち
明けて土曜日。
コリアンタウン、鶴橋観光に行きました。
ゴボウのキムチをつまみにマッコリを一杯やって(もう若い娘じゃないから昼からこんな感じでもいいんだよ!)いいわあ鶴橋、とフラフラ移動中、あった、あったよ、ここにもうどんが。しかも駅の改札のど真ん前。若い男の子たちが、一列になって、美味しそうに食べてるじゃないですか。
のれんがイカスー。みんな一列になって食べてる。
こんな価格帯。
かけ220円か! よし買おう、と食券を購入。
目の前でお姉さんが、麺を、ビニール袋からビリビリっと取り出して、ゆがいていました。……ま、メインは麺よりもスープだから、いいか。
こんな感じのお店でも、天かすは無料。
フリー天かす! 大阪最高!
あのう、関東人として疑問なんですけど、こういう店の「たぬき」うどんって、どんなものが出てくるの? 天かすが無料のものよりゴージャスなの?
とか悩んでたら、出て来ました。それなりに美味しいんですよ、これが。
フツーにうまい!
このお店、名前をメモするのを忘れ、「鶴橋 駅前 うどん」で検索しまくるも、該当する店が見つからず。……すいません。でもおいしかった!
そして、夜。天神橋筋商店街を歩いていたので、「大一そば」というお店で110円のうどんを、テイクアウト。
いやなんか、110円のものを店内で食べるのが、ちょっと恥ずかしくて。でもそれって、余計な考えだったかしら、店内で食べれば良かったかしら。
コスパのよい店。
すごいねだんだ。
近所の駐車場にしゃがみこんで食べました。甘めのスープ、ちゃんと大阪うどん、うーん普通に美味しい! 驚異のコスパ! お金のない学生さんとかには、嬉しい値段だよなあ!
あー大阪のうどんはいいなあー。
近所に欲しい、こんな店。そしたら昼ご飯、ヘビーローテーションするのに。
うどんをすすっていると、ふと、頭の中にダウンタウンの「エキセントリック少年ボウイ」の曲が浮かびました。
「ああ、うどんしか、食べる気がしない」という歌詞は……。
関東人の私は「消化よくてサッと食べられるものしか受けつけない」という意味にとってたけど、本来は「(大阪では)どこでも食べられる、あついおダシを胃に入れて、落ち着きたい」という意味だったのかなあ、と。
このあと、道に迷って「裏天満」という、バルが密集するエリアに入り込み、その屋台街のような賑わいを見て、「なんてキラキラしてるの、ここ日本なの!?」「なんで安くて美味しいの!?」「ていうか美味しいのが当たり前なの!?」「大阪すごくない!?」「いや東京が変なのか!?」と思ったのですが、それはまた別の話。ああまた行きたい、裏天満。誰か案内して。
おなじみの景色。
ふつうのうどん屋さん(多分)。
とにかくスープがうまい。昆布やウルメなど、4種の素材からとった、こだわりダシらしい。やさしいけど、インパクトのあるスープです。
しかし、なんで串カツで有名な街なのに、地味なうどん屋さんに入ったんだっけ? 胃がやられてたんだっけ……? 忘れてしまいました。
そして、かけうどん、値段は驚異の170円!!!!
安!
安いのに、妙にうまい。
ちなみに前回来た時は、お客さんは地元のおっちゃんだけだったのですが、テレビの企画で、男性アイドルタレントさんが来店&新メニュー開発をしたらしく、若いお嬢さんが来ては、400円のオリジナルメニューをオーダーして、写メを撮っていました。
うどん170円のお店が、「聖地巡礼」の場所になるとは。世の中、何が起こるかわからない。
大阪でいちばんの名店へ
最後は、大阪でいちばんの名店だという、道頓堀の「今井」へ。
店構えはこうだけど、実はビル。何フロアも客席がある、大きなお店。
お客さんは、「デパート帰り」「妙齢の親子」「妙齢のカップル」が多かったような。そうですね、銀座のレストランの客層みたいな感じでした。
メニューを見てみると……。
「鱧すきうどん鍋 8100円」「うどん寄せ鍋 4320円」とか高級メニューもあって、単にうどん屋さんというより、うどん割烹なのね。
もちろんお手頃メニューもあります。私は名物のきつねうどん735円をオーダー。
おあげで麺が見えない。
麺……もちもち。
お揚げさんは、甘め。大阪は甘めなのがデフォルトなのかな? それともダシが繊細だから、アゲの甘さが目立つのかな?
麺はもちもち。つゆは、「マツバヤ」と同じく、上品なスープ。公式サイトによると「北海道産の天然昆布と、九州産のさば節と、うるめ節を使用、しっかりとしたコクと旨味を持ちながら、上品な薄味に仕上げた自慢のおだし」だそう。
美味しい。
美味しい。でも……。
これが「最高峰の大阪うどん」なのだそうだけれど……。
わ……わかりにくい。
讃岐うどんのように、「コシあります! 小麦にこだわってるぜ! 小麦の刺身みたいでしょう? おりゃー!」っていう感じだと、わかりやすい味だけど、「やさしく繊細なおダシ」というコンセプトは、伝わりにくい……かな。
大阪には、他にも強烈に美味しいものがたくさんあるから、「伝わりにくい大阪うどん」は、今まで、あんまり日本中には、知られてこなかったんでしょうね。うーむ。
そして今、東京で大阪うどんを渇望中
東京で、大阪うどんが食べられるお店というのは……関東には激烈に少ないのではないでしょうか。どうなんでしょう。
はー、「おたべや」のうどん食べたい。
そう思いながら、富士そばの「かけうどん」を食べてます。
今まで疑問に思ってなかったけれども、富士そば、確かに、つゆが真っ黒だなあ、まっくろけ……。いや、真っ黒なのも美味しいけども、黄金色のつゆもたまには食べたいなあ。
ああ大阪うどん、それは身近にないと渇望してしまうもの……。